28.AGENT-エージェント- yuyuさん作

宛先:************keima@***.***

件名:Re:レビューの進捗はどんな感じだぁ?


 啓馬へ。

 頼まれていた小説のレビューが終わった。遅くなって悪い、ここ最近立て込んでて……いや、言い訳は要らないな。

 今後も……というか、残りの2作品も同じような方法での回答になるから、よかったらフォローとか修正頼む。たぶん作者の人も謝罪より欲しいのは回答だろうけど、謝罪文も頼んだ。


 念のため、タイトルをもう一度書く。今回レビューするのは【AGENT-エージェント-】 yuyuさん作だ。


 あらすじを簡単に紹介するとスパイ+異能もの、漢字の誤用がたまに見かける以外、文章はするする進むもののゴア寄りの描写が多くハードな展開が目立つ。ただまぁ、一番引っ掛かったのは『場面展開』が『ここじゃなくてここからの方が良いんじゃないか』と思ったとこが多かった点かな。


 例えば主人公の水野が逃走するシーン。ハッキリ書いてしまうと逃走するシーンからじゃなくてUSBを盗むシーンからスタートする方が良かった。

 「目的の赤いUSBを手に入れた」って文字で説明してしまうんじゃなくて【赤いUSBメモリを懐に仕舞うシーン→「何者だ!」→逃走】の流れの方がわざわざ説明してしまっている違和感も消えるし、自然な流れで「主人公はUSBが目的で、それを盗んで追い駆けられている」というのが読者には分かると思う。


 それと4話の終わりで主人公に殺されて隊員の男視点。たぶん上司の冷酷さを描写するために選んだろうとは思うけど多視点的なやり方は、最初の方だと俺的にはオススメ出来ない。最初の視点は1人に絞って「読んでる最中の読者を残す」って方法を選んだ方がいい。それかライバル枠や相棒視点。


 全く関係ないモブの話は展開が止まって見えるし、最初からそれをやってしまうと「前を走れ」と言われて急に「横を見ろ」言われるようなものだと思う。一番文字数が多いだけに、「ここに気合を入れるなら最初の戦闘シーンの流れをもう少し増やした方がいいんじゃ……」とも少し考えた。

 区切りが「戦って失敗した、一度基地に帰ろう」で逃げるんじゃなくて「戦い終わったら急にまた人が来た」で少し無理矢理にも思えた。そしてそこから人間的に出来たモブを殺すシーン。

 善良なモブ殺しは普通なら衝撃を与えるシーンではあるものの、挟むタイミングが悪いと「先が気になるのに!」と読者にジレンマを与えてしまう……と、俺なら考えてしまうかな。


 漫画と違って視界での処理スピードに時間を掛けがちな小説で「展開を止める」というのは中々にリスキーだ。あまりお勧めできる方法じゃないと考えてるので、今回は取り上げさせて貰った。

 念のため書くが、この手法そのものが悪いって訳じゃない。あくまで「モブ殺しは最初にやるなら1話目でやった方がいい」「主人公視点のまま最初の流れは急に変えない方がいい」「出来たら連続した戦闘より区切りを置いた方がいいかも」って提案だ。


 表現そのもので特に悪目立ちする部分はないと思う。ただ、漢字の意味を一度調べ直したり、小説でよく見かける表現でも書く前に「これどういう意味だっけ?」と少しでも疑問に思ったものは検索することをお勧めする。俺もよくやっちゃうからな。そんで「間違ってる」と思ったら合ってたりするし……そういう焦りや修正も減らした方が作家の気持ち的には楽だと思う。


 レビューは以上になる。少しでも参考になれば幸いだ。それと、回答が遅くなってしまって申し訳なかった。


【静井 拓也】


「ふーむ、相変わらず手厳しい」

 啓馬は受け取ったメールを読み上げると、それをコピー、ペーストしてレビューの投稿文を書き始めた。


「設定そのものは王道、USBの中身とか少しでもチラ見せがあったらもっとワクワクしたかも……後は異能の能力話とか、最初に世界観の説明を済ましてたら俺的には入り込みやすかったかも……うん、こんなとこかな」

 パソコンを叩く音をした後、何度か画面を覗き込んではその目を細め、上から下へ、時折マウスのホイールを回しながらも読んでいく。

「後は謝罪文を添えて……」


「よし、投稿!」

 カチリとマウスのクリック音がすると白い背景に青い文字で「投稿完了」の文字が浮かび上がった。椅子に凭れ掛かりながらも伸びをした。時刻は9時近く。テレビではゴールデンウイークの話で盛り上がっている。

「土産でも持っていってやるかぁ……」

 誰に聞かせる訳でもないが、そう呟くと啓馬は一人、部屋の中で疲れを顔に浮かべながらも笑った。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る