夜明けに捧ぐ僕らの恋

非対称

柔らかな世界



鳥のさえずりが聞こえる気がする。




なんだか、とても心地いい。






この微睡みの中で、ずっと過ごしていたい。







****


ハッと目を開ける。夢を見ていたのだろうか、どこかゆらゆらとした心地が今も続いている。ふわりと頬に柔らかな風を感じ、緑の匂いが鼻腔をくすぐる。


ぼうっとした頭でそこまで考えて、ようやく目が覚めた。

勢いよく体を起こし、思わず息を呑んだ。僕の周りには信じられない光景が広がっていたのだ。


見渡す限り続く草原。ところどころに花畑が広がり、遠くにぽつりと佇む巨木。周りには人っ子一人おらず、天国かと錯覚してしまうような景色がどこまでも続いている。


そして何よりも目を引くのは、空だ。


夜明け頃だろうか。紫やピンク、たくさんの色が混ざり合った、まるで水彩絵の具を塗り広げたような美しい空。


ここはどこだ?どうしてこんなところに?見たことも無い光景に思考がぐるぐると目まぐるしく回り出す。早く、うちに帰らなきゃ…


…?


疑問。何に疑問を抱いているかも気づかないほどに、ささやかな違和感。


そう、帰るんだ、僕はいつものように家で寝ていたはずだ…いや、違う?って、なんだ。


帰るって…どこへ、どこへ帰るんだ?





___僕は、





___僕は、誰、だ?

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