第82話 衝撃の再会
私は彼とつねちゃんの愛情をたっぷりともらいながらスクスクと成長していった。
『前世』と同じ『青葉第六小学校』『青葉第三中学校』に通い、そして念願の高校生になった。
私が通った高校は彼が通っていた母校の『青葉東高等学校』……
ここで彼は高校生活をし、マーコ先生と出会い、つねちゃんとのはざまで恋に悩んでいたんだと思うと少し吹き出しそうになってしまう。
何で私がその事を知っているのか、それは幼稚園を卒園してから頻繁にマーコ先生と会って彼の高校時代の話を聞いていたから。
マーコ先生も言っていたけど、私が心配していた通り、彼は高校で結構モテていたみたいだ。でも最終的にはちゃんと、つねちゃんと結婚したから本当に良かったけど……
ちなみに私は小中高と『演劇部』に所属した。
そう、私は石田浩美として叶える事ができなかった夢、『女優』を五十鈴広美として叶えようと努力したのだ。
そして、その甲斐あって私は高校三年生の秋の『演劇コンクール』で最優秀賞を受賞した直後にとある芸能事務所にスカウトされ、高校卒業と同時に上京する事になった。
くしくもその芸能事務所は岸本ひろみ、いえ、順子が所属している事務所だった。
実は彼から私が女優を目指して頑張っている事を聞かされていて、ずっと陰から私の演技を見ていたそうだ。
そして順子は私の演技に惚れたらしく、彼には『浩美が生き返ったみたい』と言っていたそうで自分の事のように喜んでくれて、そして事務所の社長さんに私の事をアピールしてくれたそうだ。
その後、私は順子主演の映画にて歳のあいた妹役としてデビューする事になる。
その時に順子は記者会見の場で日本中が驚く発表をした。
「皆さん、今日から私は本名の岸本順子で女優業を行います。なので、これからはここにいる新人女優の五十鈴広美が『ひろみ』の名を継ぐことになりますのでどうぞ宜しくお願い致します」
この発表にはさすがに私も驚いたし、それによって私にのしかかるプレッシャーも半端じゃ無かった。
でも、大女優になった順子が今でも私、石田浩美を思っていてくれた事の方が嬉しくて私はその期待に応える為に必死に演技をした。
そしてこの年、順子は『主演女優賞』私は新人ながら『助演女優賞』を受賞したのだ。
こうして私は女優としての階段を上り始める事になる。
あっという間に時は流れ今日は『令和二年三月二十二日』……
早いもので三十一歳になった私……
二十後半で一般男性と結婚して子供も二人いるママさん女優になっていた。
この日は私もだけど、お父さん……いえ、彼が一番恐れていた日だと思う。
そう、『前の世界』でつねちゃんが亡くなった日、そしてその二日後に、この世界に『タイムリープ』したのだった。
きっと今日が来るのを不安であった彼に電話をしたけど、彼は元気な声で私にこう言った。
「おーっ、広美、元気にしているか!? お父さんも元気だし、特にお母さんはめちゃくちゃ元気だから、こっちの事は心配しなくていいぞ!! 精一杯、ファンの皆さんの為に仕事頑張るんだぞ!? あっ、でもたまには孫の顔を見せに帰ってほしいという思いはあるけども……」
「フフフ……それを聞いて安心したよ。お母さんにもよろしく言っておいてね? 今のドラマ撮影が終わったら家族で実家に行くから楽しみに待っていてねお父さん……」五十鈴君……
特にお母さんはめちゃくちゃ元気かぁ……
その言葉を聞いて彼が凄くホッとしているのがうかがえた。
電話を切ると私もホッとしたのか嬉しくて自然と涙が流れてきた。
彼はつねちゃんの『前の世界の未来』をついに変えたんだ。
良かったね、五十鈴君……そして、つねちゃんもこれからもっともっと長生きしてね。
ピコンッ
私が感慨深くしていると久しぶりに順子からラインが来た。
ん、何だろう?
『広美ちゃん、今から会えないかしら? あなたに是非、会わせたい人がいるんだけど』
私に会わせたい人? 一体、誰だろう?
とりあえず今日はオフなので順子に会う事にした。
そして順子と待ち合わせをした場所は何故か東京の国立病院の前だった。
「き、岸本さん遅くなりました」
「ううん、私も今来たところよ。では早速行こうか?」
「え、病院に入るんですか?」
「ええ、そうよ。あなたに会わせたい人は今ここの病院で入院されている方なの。私が昔から……上京して間もない頃には凄く助けてくれた恩人で脚本家をされている方なの。あなたのお父さんとは昔から知り合いだけど、広美ちゃんとは接点が無いと思っていたからあなたには言わなかったんだけどねぇ……」
お父さんと昔からの知り合い?
そして脚本家……誰何だろう?
「実はね、数年前から今日の日に広美ちゃんに会わせてほしいってお願いされていたのよ……」
「えっ、数年前からですか?」
「うん、そうなの。私も何故、今日なのかは分からないんだけどねぇ。っていうか急ぎましょう!? あの人が首を長くして待っているから」
「は、はい……」
彼とも知り合いで脚本家……なんか昔、順子が恩人の脚本家がいるって話しをしていた事があったけど、もしかするとその人の事なのかもしれないわ。
……たしかケイティっていう名前で活動されていたって言っていたような……
でも私はその人と今まで関りなんて無かったはずだし……それとも私の演技を気に入ってくださったのかしら?
いずれにしても会ってみないと何も分からないのは確かだわ。
私は頭の中を色々と駆け巡らせながら順子に連れられて病室の前まで来た。
そして私は病室に貼られているネームプレートを見て愕然とした。
た、立花香織……!?
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