第61話 告白……そして……
遂にこの日が来た……
ピンポーン ピンポーン
「よぉ、五十鈴!! 元気にしてるかぁぁ?」
「高山君、あんたバカね? 元気な訳無いじゃないの!!」
私は高山君と一緒に彼のお見舞いに来た。
ちなみに久子にも一応声はかえたけど『家族旅行』に行っているらしい……
「二人共、わざわざお見舞いに来てくれて有難う……」
彼は病気で辛いだろうに無理をして笑顔で私達を迎えてくれた。
「まぁ俺はお見舞いというよりも、お前に文句があって来たんだけどな!!」
高山君、やっぱり彼に文句を言うの? と私は少し呆れたけど顔は少し笑っていたので本気で文句を言う気では無いことは分かった。
「俺は元々、お前に無理やり『ミニバス部』に引っ張っられて嫌々入っただけなのに、バスケをやりたくてやっている訳でも無いのにさ……俺はレギュラーなんてなりたくも無かったんだ。それなのに最後の大会でレギュラーだなんて……考えただけでもお腹が痛くなってくるよ!! それもこれもお前が病気なんかになるからだ!!」
クスッ……
彼は高山君が怒れば怒る程、笑っている。
おそらく高山君が『本気』で怒っいない事が分かっているのかも……
しかし私もわざとらしく高山君の『演技』に乗っかる事にした。
「高山君、あんた贅沢過ぎる文句を言わないでよ!? 五十鈴君は五年生の時からとても頑張ってきてレギュラーの座を掴んだのに……それが病気のせいで『やる気の無い』人にレギュラーを譲ってしまう事になってしまったんだからさ。逆に高山君が五十鈴君の分まで死に物狂いで頑張りなさいよ!?」
こんな感じでどうかな……?
「高山、悪いな……石田の言う通り、俺の分まで頑張ってくれよ……」
すると高山君は少し頬を赤くしながら、
「だっ、誰も頑張らないなんて言ってないし……」
「それじゃ、最初から『俺、五十鈴の分も頑張るから』とか言いなさいよ!!」
私が更にそう言うと、高山君は顔を真っ赤にしながら、
「そっ、そんな恥ずかしいセリフ、言えるかよ!!」
高山君のセリフで場は一瞬にして和やかになった。
そして彼は私にも声をかけてきた。
「あと、石田も『女子ミニバスキャプテン』として頑張ってくれよ……」
「あっ、当たり前じゃない!! 五十鈴君に言われなくても頑張るわよ!! そ、それよりも早く元気になって私達の『最後の大会』を観に来てよ? 五十鈴君にも顔だけは……出して欲しいし……」
私も高山君と同様に頬を少し赤くしながらそう答えた。
「ハハ……ハハハ……、分かったよ……頑張って治すよ。そして何とか『大会』には顔を出して二人の応援をするから……」
彼は笑顔でそう答えた。
そして三十分も経たないうちに高山君は前に言っていた通、用事があるという事で先に帰ってしまった。
そして彼の部屋には彼と私の二人きり……
つ、遂に二人っきりになってしまった。
いよいよ、ここから……
「た、高山君、先に帰っちゃったね……?」
「あ、うん、そうだね……石田はまだ帰らなくて大丈夫なのか?」
おそらく彼は私にも早く帰って欲しいのだろうなと何となく感じたけど、私としてはそうはいかない。
「私にも早く帰ってほしいの?」
「そっ、そんな事は無いよっ!! ……痛っ!!……」
私から予想外の返しが来て驚いたのか彼は焦ったと同時に頭を押さえて痛そうにしている。だから私も慌てて、本題に入り出した。
「ゴメンゴメン、五十鈴君……体調悪いのに長居をしてしまって……私も、もうすぐ帰るから……でも、もう少しだけいさせてくれない? 今日は高山君が用事があって先に帰る事は知っていたし、先に帰るのを待っていたの……」
「へっ?……」
彼は私が何を言いたいのか、何をしたいのか理解できていない表情をしている。
「私、どうしても五十鈴君と二人きりになった時に話したいことがあったの……でも今までそういうチャンスが無かったというか……五十鈴君がこんな時に申し訳ないんだけど、なんとなく今日しか話せない様な気がして……」
ゴクッ……
彼は少し緊張しているのか唾を飲み込む音が聞こえる。
「実は私、聞いていたんだ……あの『七夕祭り』の始まる前に五十鈴君とつねちゃんが話をしているところ……私、ずっと聞いていたんだ……」
私の話を聞いている彼はなんとも言えない様な驚きの表情をしているけど無言で聞いている。
そしてようやく彼から出て来た言葉は、
「い、石田……お前……その事をみんなに……」
「心配しないで。誰にも言わないわ。それに言っても誰も信用しないわよ。まさか五十鈴君とつねちゃんが結婚の約束をしているだなんてさ……」
彼は私の言葉に少しホッとした表情を浮かべたけど、私の本音を思いっきり言った。
「でもこれだけは言わせて!? 絶対に無理だからっ!! 五十鈴君とつねちゃんが結婚なんてあり得ないから!! だってそうでしょ!? 余りにも二人の歳の差が有り過ぎるじゃない!!」
彼は私に『正論』を言われて少しムッとした表情に変わり言い返して来た。
「とっ、歳の差なんて関係無いだろ!? 好き同士が結婚して何が悪いんだよ!? 石田は、こっ、寿の事を思って言っているんだろうけどさ……」
遂に彼に私の気持ちを伝える時が来た。
「ひっ、久子は関係無いわ!! 久子が五十鈴君を好きだって事は分かっているわよ!! で、でも……そんなの関係ない……わ、私も前から五十鈴君の事が好きだったの!! 私の事をいつも気にかけて声をかけてくれる五十鈴君が大好きだったの!!」
「へっ?」
彼は驚いた表情をしながら絶句している。
「私は久子と友達だから……だから私は五十鈴君の事を諦めようと努力していたのに……だから久子と五十鈴君をくっつけて完全に諦めようとしていたのに……でもあの『七夕祭り』の時の二人の会話を聞いて、私……気が変わったの。あんな『おばさん』に五十鈴君を取られるくらいなら、久子に遠慮なんてしている場合じゃない!! 私は自分に正直になろうって……」
本当は中学生になったらあなたに告白するつもりだったのに……
「い、石田……」
「お願い、五十鈴君!! つねちゃんの事を忘れてとは言わないわ。直ぐに忘れられるはずないんだから……でもこれからは私の事も少しは見て欲しい!! そして私も五十鈴君の事が大好きだという事を覚えていて欲しい!! だから五十鈴君が私の想いを忘れない為にも……」
「えっ!!??」
私は彼に抱きついた。そして……
私から彼の唇に自分の唇を合わせた。
『前の世界』を含めても私にとって生まれて初めてのキス……それも私から強引に……大好きな彼と……
おそらく時間にして二、三秒かもしれないけど、私にとってはとても長い時間に感じた。
そして私はソッと唇を離すと突然の事で茫然としている彼と視線を合わさずにこう言った。
「じゃ、じゃあ……私も帰るね? 早く良くなって試合、絶対に観に来てね? そ、それじゃあ、お大事に……」
私は彼に背を向けた途端に恥ずかしさと好きな人とキスができた喜びが同時に起こり、逃げる様に彼の部屋から出て行くのだった。
―――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
遂に浩美は隆に想いを伝えることができた。
そして勢いで自分からキスまでしてしまう。
驚く隆、そして逃げる様に部屋を出て行く浩美……
果たしてこれからの二人をどんな運命が待ち構えているのか?
どうぞ次回もお楽しみに……
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