第14話 憧れの人と新たなライバル?

 今日は『演劇部』の初日、部員達の顔合わせの日である。


 『演劇部』の部室及び稽古場は今は空き教室となっている教室を使用している。

 そんな中、私や順子は緊張した面持ちで教室の床に三角座りをしながら顧問の山口先生のお話を聞いている。


 少し離れて五十鈴君や高山君もいる。


 でも何だろう? 彼の表情に少しだけ違和感があった。


 たしか『前の世界』の時の彼は初日に凄く緊張した表情をしていて顔色も悪かったなのに、今日の彼はいつもと変わらない表情をしている。それどころか他の誰よりも落ち着いている様にも思える。


 『二度目』の私ですら少し緊張しているのに……


 


「それでは部長の立花さん、後の説明をよろしくね?」


「はい!!」


 私達の前に立ち、今から今後の演劇部の活動について説明をしようとしている部長さんは女の子である。


 名前は『立花香織たちばなかおり』さん、六年生。


 髪型は綺麗な黒色のロングヘアー、肌は白くて瞳は大きく鼻も高くて身長も高く、とてもスリムで美人な人……


 実は私が初めて憧れた先輩でもある。まぁ、私がいくら頑張っても立花部長みたいにはなれないけど、憧れるのは自由だから……


 あっ、今気づいたけど立花部長の下の名前って『かおり』だったんだよね?

 『つねちゃん』と同じ名前だったんだぁ……


 『つねちゃん』というのは私や五十鈴君が幼稚園の頃の先生で名前は『常谷香織つねたにかおり』といって、とても美人で優しくて凄く人気のあった私の憧れの先生……


 『香織』っていう名前の人は美人が多いのかな? というか、私の憧れの人は『香織』っていう名前の人ばかりだったんだ……


 私も『浩美』じゃなくて『香織』だったら二人みたいに美人に生まれてきたのかなぁ……


 私がそんな事を思っている間に立花部長の説明が始まる。



「四年生の皆さん、演劇部にようこそ。部長の六年の立花香織たちばなかおりです。どうぞよろしくお願いします。副部長はまだ決まっていないのでこれから話し合って決めようと思っています。一応、今年の副部長は五年生から決めようと思ってるんだけど、もし四年生でもやる気があれば副部長になってもらっても構わないと私は思っていますよ。ねっ? 山口先生?」


 立花部長の問いかけに山口先生は笑顔で頷いている。


「 「 「え――――――っ!!??」 」 」


 教室中がどよめいた。


 四年生から副部長......


 四年生全員がお互いの顔を見合っている。みんなの『ムリムリ、絶対イヤ』という吹き出しが見えるような空気になっていた。


私はこの光景を一度経験しているので驚くことは無かったけど、順子がとても不安そうな顔で私を見てくるのでとりあえず私も不安そうな顔を作り順子の方を見ていた。


 そんな様子を立花部長は少し微笑みながら私達の様子を見ている。


 ざわついた演劇部の教室が少し落ち着いた時に立花部長が再び話し出す。


「皆さん、演劇部の一番大きな行事は秋の文化祭での演劇発表なんだけど、まずその前に七月の七夕祭りにも演劇部は発表する予定なので、これから約三ヶ月それを目標に頑張っていくのでよろしくね。そして顧問の山口先生とも相談したんだけど今年は演劇部全員に脚本を書いてもらって一番良かった作品を演劇にしようと思っているのでみんな頑張ってみて!!」


 更に教室中がどよめいた。

 そして周りから色々な質問や意見が飛び交ている。


「四、五年生も脚本を書くんですか!?」

「入部したばかりなのにそんなの無理ですよ!!」

「読まれるのが恥ずかしい」など......


 それでも立花部長は部員の意見は気にせずに続けて話し出す。


「これは私の考えだけど、今回六年生は演技に集中してもらって、逆に四、五年生に脚本を頑張ってもらおっかなって思っているの。それで、一番良かった脚本を書いてくれた人に『副部長』になってもらうってのはどうかしら!?」


「 「 「えーっ!!??」 」 」

 

 更に更に教室中がざわめいた。


 私だけがこの流れを知っているので驚いてはいなかったので、ソッと五十鈴君の方を見て見ると、彼もまた私と同じで表情を変えていなかった。


 アレ? 五十鈴君、本当にどうしたの?

 今の立花部長の話を聞いていたよね? 何で驚いた表情をしないの?

 

 それにこのまま行けばあなたが……


 そう思っている私の後ろから何やらブツブツ言っている声がしてきた。


「ぼ..、僕が書いた脚本が……ブツブツ……もし選ばれたら……僕が副部長に……ブツブツ……」


声の主は同じ四年生男子の田中誠たなかまこと君。

以前、森重もりしげと一緒になって私をからかっていた子だ。


そういえば、この田中も演劇部だったよね。これは『前の世界』と同じなんだなぁ……はぁ……何だかガッカリの私がいた。


 すると私の正面に座っている五年生女子の佐藤恵さとうめぐみさんが、みんなに聞こえる様な大きな声でこう言っている。


「四年生が書いた脚本が採用されちゃったらさぁ……私、上級生としてちょっと恥ずかしいかも」


 佐藤さんがそう言うと横に座っている同じく五年生男子の福田博ふくだひろしさんが佐藤さんにむかってこう言い返す。


「別に四年生が書いた脚本が採用されてもいいじゃん。その方が俺は副部長にならなくて済むんだしさぁ……ハッハッハッハ!!」


 教室の中は彼等二人以外の声も聞こえる様な雰囲気になっている。

 蚊の鳴くような声、嫌でも聞こえる声などがいたるところで入り混じっていた。


 そんな中、私はずっと彼のことを見ていた。


 冷静な表情をしている彼だけど、顔は少し下を向いている。でも突然、顔を上げたかと思うと顔色がドンドン赤くなっているのが離れて座っている私にも分かった。


 私は彼が向けている視線の先を見てみるとそこには立花部長が彼に対してニコッと微笑んでいる様子が見えた。

 

 えっ?


 私は慌てて彼の方を見直すと、彼は更に顔を真っ赤にしながら再び下を向いていた。


 立花部長と五十鈴君って前から知り合いだったっけ……?

 それとも……


 私は『新たなライバル』が出現したのではないかと少し不安になるのだった。





――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。


遂に『演劇部』始動です!!

そして新たなキャラクターも登場していきます。


その中でも憧れの立花香織部長は浩美にとって今後、『要注意人物』になるのでしょうか?

どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆

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