第2話 私、生きてるの?

 私……もう死んだのかな?


 でも、死ぬって、こんなにも痛くないものなの?


 目を開けるのが怖い……

 

 私は天国と地獄、どちらに来たんだろう?

 ていうか、本当に天国や地獄ってあるのかしら?


 それに……お母さんは私の隣にいるのかな?

 一緒に『同じ所』に行けるのかな?


「浩美……」


 あっ! お母さんの声が聞こえた気がする。

 もしかして近くにいるのかな?


「浩美……」


 やっぱりお母さんの声がする。


 まだ少し怖いけど目を開けてみよう。


 えっ? 私、椅子に座っているの?

 天国にも椅子があるんだぁ……


 それにテーブルもある。


 ん?


 でもこのテーブルは見覚えがある様な……


 いえ、ちょっと待って!!


 周りの景色……うちのリビングに似ているじゃない。


 それに私の手足も小さくなっている様な……これって……



「浩美、どうかしたの?」


「えっ?」


 そして私の正面にはお母さんがいつもの様に笑顔で座っている。


 でも、お母さんの顔をよく見るとさっきまで一緒にいた飛行機の中の顔よりも少しだけ若返っている様な気がするんだけど……なんで……?


「お、お母さん……?」


「浩美、今日は卒園おめでとう。四月からは小学生になるわねぇ?」


「えっ!?」


 ど、どういう事なの!?

 一体、何が起こったの!?


 これが『死後の世界』?


 いえ、そんなはずは無いわ。

 私は気を失っていて今は夢を見ているのよ。


 きっとそうだわ……そうに違いない!! これは夢なのよ!!


「浩美、さっきからどうしたの? なんか、とても難しい顔をしているけど……あっ、もしかして小学生になるのを考えて今から緊張しているのかな? ウフフ……」


 ゆ、夢だとしたら私はどうすればいいの?

 この状況……お母さんの問いかけに普通に答えればいいの?


「ううん、別に緊張はしてないよ……」


「それじゃ何故さっきまで浩美は難しい顔をしてたのかな?」


「う、うーん……それはね……お母さんがとても若いなぁ……って思ったから……」


 こ…こんな返答でいいのかな?

 まぁ、夢なんだし別にいいか……


「フフフ、おかしな子ねぇ……お母さんの事を若いって言ってくれるのはとても嬉しいけど、別に難しい顔をしなくてもいいじゃない。フフフ……でもありがとね」


 ふぅ……

 なんとか誤魔化せたみたいだけど……


 この『夢』はいつまで続くのかな?

 できればこのままずっと『この夢』を見ていたいけど……


「あっ、そうだわ。浩美には言っていなかったけど、もう少しすればあなたに弟か妹ができるのよ」


「えっ、そうなの……?」


「あれ? 前から浩美は弟か妹が欲しいって言っていたからもっと喜ぶと思っていたのに……もしかして『一人っ子』の方が良かったのかな……?」


「そ、そんなこと無いよ。私、とっても嬉しいよ。それで、い、いつ生まれるの?」


 と、とりあえず『夢』であっても、ちゃんと小さい子のフリをしなくちゃ!!


「そうねぇ……十月くらいになるかなぁ……」


「ふーん、そうなんだぁ……それじゃぁまだ、七ヶ月くらい先だね……」


「えっ、浩美、そんな事が分かるの!? あなた、凄いわね? もしかしたら浩美は『天才』じゃないの??」


 しまった……そ、そうよね。


 幼稚園を卒園したばかりの子がパッと子供が生まれるのが七ヶ月後とか言えるはずが無いよね……お母さん、私のことを変に思わないかなぁ……


「昨日、テレビで女の人が出ていてね、それでね……その人が、生まれるのが十月って言っていたからお母さんもそれくらいになるのかなぁ……って思ったの……」


「ふーん、なるほど!! そういうことかぁ……テレビの人と同じことを言っただけなのね? そうなんだぁ……一瞬、浩美はもしかしたら『天才』かもって思ったけど、お母さんと同じで『普通の子』なんだねぇ……そっか、そっかぁ……」


 はぁ……なんとか誤魔化せたわ。

 小四の頃に『演劇』をやっていて良かった……


 でもお母さんは凄く残念そうな表情をしている。

 そんなに私が『天才』じゃなくて残念だったの?


 もし私が本当に『天才』だったらどうなっていたんだろう?

 お母さんのあの残念がりようは……


 考えただけで、凄く複雑な心境になってしまう。


 でもアレだよね。この『夢の中』ってとても楽しいなぁ……

 本当にこのままずっと『夢の中』にいたいなぁ……


 もしこのままでいれたなら私はこのまま小学生になって……

 そうしたら『あの子』にも会える……



「さぁ、浩美、そろそろ着替えましょうか? お母さん、お買い物に行きたしい……今夜は卒園祝いで御馳走たくさん作っちゃうからね!!」


「うわーい、やったー!!」


 こんな喜び方でいいのかな?

 変じゃないかな?


 『夢』は続いて欲しいけど、私はずっと『小さい子の演技』ができるかなぁ……

 それだけがちょっと心配だわ。



 【浩美の部屋】


 鏡にうつる私の姿……


 本当に小さい頃の私だわ。

 アルバムを見て以来の姿……


 いくら『夢』でも凄くリアルよね……


 もしこのまま『夢の中』で過ごせたら、私の病気はどうなのかな?

 やっぱり同じ時期に病気になるのかな?


 それとも何も病気にならずに過ごせるのかな?

 そうだといいのになぁ……


 そうだとしたら、私は何も躊躇することなく『あの子』に告白できるのに……


 あと数週間で『小学生』になる、いえ……やり直す私?


 やり直せるならやり直したい。

 そして『あの子』に私の想いを伝えたい……


 五十鈴隆君、あなたに早く会いたいなぁ……


 だからお願い!!


 神様、お願いです!!


 どうか『この夢』から私を目覚めさせないでください。





――――――――――――――――――

お読み頂きありがとうございました。


死んだと思った浩美が目を開けるとそこは幼稚園を卒園して自宅に戻っている場面であった。


これは夢なのか、死後の世界なのか、それとも……

夢ならばこのまま覚めないで欲しい。

できることなら『あの子』に想いを……


果たして浩美は『あの子』に再会する事ができるのか?

続きが気になる方、面白いと思ってくだされた方、よろしければフォロー&☆&♥️&コメントなど頂けると幸せです(*^^*)


次回もどうぞ宜しくお願い致しますm(__)m

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る