第47話『A'z』
《綴side》
終わった。
気持ちの悪い拷問が終わった。
「綴くん、お疲れ。はい、コーヒー。」
「…どうも。」
温い缶コーヒーを喉に流し込む。
「それにしても…綴くんの気持ち、ちゃんと聞けてよかった。」
「…今更言っても俺はここしか居場所ないじゃないですか。」
「はは!そうだね。でも、これ以上君の大切な人には一切影響はない。」
「…ならいいんですけど。」
「君は優しいね。いや、生意気だ。」
「は?生意気?どこが?」
「今後2人に何もしないなら協力しますって…生意気な小僧だよほんと。」
「先輩はおばさんですもんね…」
「…つ〜づ〜る〜く〜ん?」
「痛い痛い」
背中をバンバンと叩かれる。
本物の痛み。
「病院、乗せてやるから行ってきなさい。」
「……」
「命令ですよ?"マスター"?」
「それ本当にキツイので今後やめてください吐き気がします。」
「え〜?可愛くできてたと思うんだけどなぁ?」
「……」
「シカトかい!…もー、ほらいくよ!」
腹に投げつけられたヘルメットを少しダメージを負いつつキャッチする。
この人は俺の上司…的な人。
虹奈 蘭舞 (ニジナ ランブ)。20歳女性。
電子世界にいた時の姿はピンク髪に髪を一つにまとめた少女。
【能力制御AZ-NEO PROGRAM-control-イコール・メモリアントギガ・ネオ・ライト】システムの指揮官的存在。(先輩はネオと呼んでいるが。)
先輩は俺がお堅い警察に引き取られようとしているところに現れ、俺を引き抜いた。まぁ確かに【警察官】ではあるが普通とは違う。
【OZ警察所属能力管理課】という部署に俺はいる。
OZ警察にある「能力管理課」であまり表には顔を出さず裏で動くような場所。
潜入や情報収集が得意な人が多く所属していて虹奈 蘭舞(先輩)が結成したチーム。
メンバーは全員蘭舞によるスカウトで集まった人達だ。
今はそこで仕事をしている。
高校生の身で警察官になるのは不可能だが、どうやらここは特別らしい。それに、俺は保護される身として丁度いいそうだ。
「ほら、着いたよ。行ってきな。」
「…ありがとうございます。」
あれから一日が経ち、水戸や春樹、他の全員が目を覚ましたとの事。
電子世界で記憶を引っ張り出したことにより力は普段通り扱えるそう。でもこちら側の記憶は全て消去しているらしい。
「あ、綴!水戸!綴きたよ!」
そう、今回のお話を知っているのは俺1人。
「綴…!!お見舞いに来てくれたんだな。ありがとう。」
「うん。"先週ぶり"だね。」
誰も知らない、この国の裏で動いている事件のことも。そして…
「綴は大丈夫?」
「"僕"は大丈夫だよ。」
俺の本当の気持ちも。
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