4-13(金)ありがとうデース!


 「お、終わったデース!!」



 リンダはそう大きな声を出した。


 まだ最後のテストが終わったばかりだと言うのにリンダの奴いきなり大声出して驚かさないでよ。


 みんながリンダに注目する中、先生が注意する。



 「アンダーソンさん、気持ちはわかりますがまだ最後のホームルームがあります。解答用紙を回収したら次はホームルームですからそれが終わるまで我慢してくださいね」


 

 途端にクラス中が笑いだす。

 流石にこれはリンダも赤くなって小さな声で「はいデース」とか言っている。



 「でもやっと終わったね~ 今回は由紀恵ちゃんのお陰で赤点にはならなくて済みそうだよ~」


 紫乃がホームルームまでの小休憩時間の間にやって来た。

 

 「いや、赤点とか言ってないでせっかく教えてやったんだからせめて平均点は行ってよ」


 私はため息をつきながら紫乃にそう言う。


 

 「でもこれでやっと気兼ねなく出来るね~」


 「まあ、そうなんだけどね‥‥‥」



 そう言いながら私はリンダをちらっと見る。

 リンダはクラスの女の子たちと何やら話しているみたい。


 と、チャイムが鳴って担任の先生が教室に入って来た。



 「はいはい、ホームルームを始めますよー。これで終わりだからみんな席に着く」



 担任の女教師はそう言いながらぱんぱんと手のひらを鳴らす。

 がやがやとみんなも席に着く。



 「はい、期末テスト皆さんお疲れさまでした。あと少しで夏休みになりますがみんな羽目を外し過ぎないように注意してね。さて、アンダーソンさん、前に来てください」


 「はい? 私デースか?」



 いきなり呼ばれたリンダはきょとんとして席を立ち教壇まで行く。

 


 「なんデースか?」


 「アンダーソンさんはうちの学校への留学が今日までだからね、みんなに最後の挨拶をしてもらおうと思ってね」



 そう言うとリンダは今更ながらに驚いたような顔をする。

 そしてゆっくりと教室のみんなを振り返る。



 少し間を置いてから笑顔になるリンダ。

 そして



 「皆さん、今日まで仲良くしてくれてありがとうデース! JAPAN来て私色々体験出来たデース! たくさんたくさん楽しい思い出できたデース!! パースに帰っても私みんなの事忘れないデース!!」



 一気にそこまで言うとクラスから一斉に拍手が鳴る。

 そしてみんなして席を立ち机の中に隠していた一輪の花をもってリンダの所まで行く。



 「リンダさん、今まで楽しかったよ!」


 「もう帰っちゃうんだ、残念だけど元気でね!」


 「向こうに行ってもSNSで連絡とろうね!!」



 わっとみんなで一斉に花をリンダに渡しながらそう言う。

 実はリンダ以外のみんなで話し合って準備していたのだった。



 最初は驚いていたリンダだったけどみんなに花を渡されいろいろ言われて初めて実感したような感じで笑顔なのに目の端に光るものが流れ始める。



 「みんな、ありがとうデース! 私ワタシ、絶対にみんなの事忘れないデース!!」



 「そうね、あれだけ色々と引っ掻き回してくれたんだからそう簡単に忘れられては困るわね」


 私はそう言って花と一緒に色紙をリンダに渡す。

 色紙にはみんなからのリンダへの一言が書かれていた。


 「由紀恵デース?」


 「みんなからのあなたへの贈る言葉よ。オーストラリアに戻っても頑張ってね!」



 「由紀恵デース!!!!」



 既に涙でぐちゃぐちゃになったリンダだったけど色紙を受け取ると私に抱き着いて来た。



 「忘れないデース! 絶対に忘れないデース!!」



 そうしてリンダはしばし私に抱き着いたまま泣くのだった。



 * * *



 リンダが泣き止むのをみんなして待ってから誰と無く拍手をする。



 「みんなデース‥‥‥」


 「さて、湿っぽいのはリンダに似合わないから、始めましょう! みんな準備は良いわね!?」



 おーっ! とかみんなから声が上がる。


 そして教室の机をみんなで端に移して最低限の数だけ残す。


 「本当はあまり良く無いのだけど今日だけの特別ですからね。みんなも最後はちゃんと掃除するんですよ?」


 女教師は笑いながら自分も廊下に隠していたクーラーボックスを持って来てジュースの大瓶を並べる。

 みんなもお菓子なんかを紙皿に乗せて準備をする。



 「これはデース?」



 「みんなからの送別会よ! お別れパーティーね!!」


 私のその言葉にまたリンダは笑いながら涙を流す。

 そしてクラス全員でリンダのお別れパーティーを始めるのだった。

 

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