4-12(木)テスト嫌いデース!!


 期末テストは水曜日から明日の金曜日まで。

 既に水曜日のテストで出だしが悪かったリンダは焦っていた。



 「由紀恵デース!!」


 「うわっきゃぁっ! 何いきなり人の胸揉んでるのよ!?」



 ふにふに



 「駄目デース! 昨日覚えた所思い出せないデース!!」


 「だからと言って今更どうしようもないでしょうに! いい加減に人の胸揉んでないで学校行く準備しなさーい!!」


 朝から襲われた私はリンダの顔を押しのけて逃げ出す。

 全く、昨日の夜だってセカンドキス奪われて大変だったと言うのに‥‥‥



 しつこく泣きつくリンダを放置してリビングに行くとお兄ちゃんが朝食を取っていた。


 「もごもご、おはよ由紀恵。昨日の問題集助かったよ。今日は行けそうだ」


 「おはよう、お兄ちゃん。頑張って良い点とって推薦が取れれば一番いいんだけどね!」


 お兄ちゃんは乾いた笑いをして「努力します」とだけ言って食事に戻る。

 私も用意された食事をとり学校へ行く準備をする。



 「由紀恵ぇ~どうしようデース‥‥‥」


 「全く、登校中にいくつかポイント教えてあげるから早くご飯食べなさいって」



 しょぼくれるリンダに食事をさせ私たちは家を出るのだった。



 * * *



 「今日の英語は良いとして、他の科目は~」



 私は登校しながらもう一度ポイントをリンダに話ながら歩く。



 「おはよう~由紀恵ちゃん、リンダちゃん、友ちゃん~」


 紫乃が合流した。

 紫乃はにこにこしながら話始める。


 「由紀恵やんのお陰で赤点は免れられそうだよ~」


 「いや、ちゃんと教えたんだからせめて平均点狙ってよ」


 志が低いとかそう言う以前にその場しのぎで済ます気か!?

 私がため息ついているとリンダがまた私にしがみついてくる。



 「由紀恵~次教えて欲しいデース!」


 「さっきの覚えた? じゃあ次はお兄ちゃんが‥‥‥」


 「なあ、由紀恵さっきから聞いてると所々俺の話が出るんだがなんでだ?」


 「だってお兄ちゃんがらみで覚えた方が効率的じゃない!!」



 お兄ちゃんは未確認生物でも見るような目で私を見る。

 そしてリンダを見てため息をつく。



 「まあ覚え方は人それぞれだけど、リンダちゃんを巻き込むのはどうかと思う」


 「何言ってるの、これが一番確実に覚えられるんだから!」


 お兄ちゃんは苦笑してそれ以上何も言わなくなるのだった。



 * * * * *



 「お、終わったデース‥‥‥」


 「うーん、まあこんなモノかな? でも最後の問題、あれってかなり意地悪な問題だったわね。有名大学の入試試験の問題そのものだったもんね」


 「そんなのわかるの由紀恵ちゃん位だよ~ 何とか赤点は免れそう~」



 今日のテストが終わって私たちは帰る支度をしている。

 午前中で終わったので午後はまたみんなで私の家で最終試験日の勉強会をする事になっている。



 「それじゃぁ長澤さん、今日もよろしく!」


 「お昼ご飯食べたら行くね~」


 「お陰で補習しなくて済みそうだよ、明日のもお願いね長澤さん!」



 クラスの女の子たちはそう言って手を振って先に教室を出る。

 私は机に突っ伏してぐったりしているリンダを見る。



 「ほらほら、何時までもそうしていないで帰りましょ。早い所お昼食べておかないと皆来ちゃうよ?」


 「うぅ、テスト勉強嫌いデース!」



 リンダはそう叫びながらよろよろと起き上がり帰り支度をするのだった。



 * * *


 

 「由紀恵、お待たせ」


 「ああ、お兄ちゃん!」



 リンダと紫乃を連れて校舎の玄関の辺りで待っているとお兄ちゃんがやって来た。



 「由紀恵様! あの問題集すごいです!! ほとんど同じ問題が出てましたよ!!」


 「ねえ由紀恵ちゃん、今日私も長澤君の家行っていいかしら?」


 「‥‥‥あれは反則に近い。長澤君に見せてもらったけど何処で入手したのあの問題集?」



 お兄ちゃんに下僕その一や高橋静恵、泉かなめもくっついて来て私に問題集の事聞いてくる。



 「ああぁ、あの問題集は私が作りました。多分あの辺が出るだろうと言う所をチョイスして覚え易い様にポイントを絞りましたので」



 「そうなの? ほとんどテストと同じ問題だったわよ!?」


 「‥‥‥どうやって教師を買収したの? まさかつるペタが好きな教師に色似掛けで‥‥‥」



 「そんなことしてません! 私の操はお兄ちゃんに捧げるのですから!!」



 こいつらときたら。

 しかしこうなってくると‥‥‥



 「由紀恵ちゃーん! 私もお願いします!!」


 「ああ、やっぱりこうなるのよね‥‥‥」



 矢島紗江が涙目で私たちの所へ来る。

 そして私の肩をガシッとつかんでゆさゆさと揺さぶる。



 「明日の科目苦手なんです! 平均点どころか赤点になりかねない!! お願いです由紀恵ちゃん! 私にも勉強教えてください!!」



 こいつら上級生のはずなのに‥‥‥

 私はため息をついてから言う。



 「午後は私のクラスの子も来ます。時間が無いですからちゃっちゃと帰ってお昼食べて始めますよ!」


 私のその宣言にみんな大喜びする。




 「うう、JAPAN大好きですけどテストだけは大嫌いデース!!!!」





 珍しくリンダの叫び声がこだまするのだった。  

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る