4-9(月)振替休日デース


 本日は学園祭で使った日曜日分の振り替え休日。

 昨日までの緊張のせいか疲れのせいか私は朝からリンダに隙を見せてしまっていた。



 「ああぁんっ、駄目っ! そ、そんなとこぉっ!!」


 「良いでは無いか、良いでは無いかデース!」



 完全に油断していた。


 そしてリンダがお兄ちゃんに引かれているのだと実感もした。


 あの時リンダはああ言っていたけど、最初の好きは本気の好きだったと思う。

 これは女の勘だけど、リンダはお兄ちゃんの事が好きになり始めている。

 

 でもまだ自分の気持ちが整理つかなくて迷ってもいると思う。



 「ん~、由紀恵いつもより反応薄いデース。もしかして胸だけでは足りませんデースか?」


 「へっ? な、何言ってるのよ! そんな事ある訳無いじゃ無いの!!」



 マッサージを受けながらそんな事を考えていた私にリンダは胸を揉む手をお腹にずらす。



 「由紀恵デース」


 「ちょ、リンダぁ!? うそっ、駄目それだけはダメぇっ!!」



 慌てる私にリンダはぱっと手を放して服の中から手を引き抜く。

 そして起き上がりベッドから立ち上がる。



 「今日のマッサージはここまでデース!」


 「へっ? リ、リンダ??」


 「もしかして足らなかったデースか、由紀恵?」




 かぁあああぁぁぁっ!




 ただでさえ恥ずかしいのに私は更に顔が真っ赤になってしまった。



 「そんな訳無いでしょ!! リンダっ!!」



 思わず枕を掴んでリンダに投げつけるけどリンダは器用に部屋の扉から出て行って私の枕攻撃を避ける。



 ぼふっ!



 扉に枕がぶつかるけどその時には既にリンダは廊下に退避済みだった。



 「もう、リンダのバカぁ!」



 私の空しい罵倒が響くのだった。



 * * * * *


 

 「おそよう。母さん仕事に行ったよ?」


 だいぶ遅くなってリビングに降りてくるとお兄ちゃんとリンダがテレビを見ていた。

 平日の午前にやっているワイドショーには特に話題が無いのか可愛い犬の事について特集をやっていた。



 「おそよう、お兄ちゃん。何か軽く食べるものまだあるかな?」

 

 「パンは有るから後は冷蔵庫に母さんが小鉢のサラダにラップしたのが入ってる」


 私は頷きながら軽い食事を済ませる。

 その間リンダもお兄ちゃんも何も話さずにずっとテレビを見ていた。



 「由紀恵、暇あるデースか?」


 リンダがポツリとそう言って来る。

 丁度食事を終えコーヒーを飲み終わった時だった。


 「ん? あるけど何?」


 「ちょっと由紀恵と話したいデース」


 なんだろう、改まって?

 首をかしげているとリンダはちらっとお兄ちゃんを見てからリンダの部屋に来るように言う。



 まさか、リンダお兄ちゃんについて相談!? 



 内心の動揺を見せない様に食器を水に浸してリンダと一緒に二階に上がる。

 お兄ちゃんは相変わらずテレビを見ているのでそのままにしておく。


 私たちはリンダの部屋に向かうのだった。



 * * *



 「どーぞデース」


 クッションを座布団代わりに出されて小さなテーブルをはさんで私とリンダは座った。


 「改まって何?」


 「由紀恵、友也の事好きデースか?」


 ストレートに聞いてくる所は流石に外人。

 ちょっと驚いたけど私の回答は変わらない。


 「勿論好きよ」


 「それは兄妹としてではなく一人の女性としてデースか?」


 何時になくまじめなリンダ。

 その青い瞳は真剣に私を映している。


 一旦私は瞳を閉じてからリンダに正面と向き合い、そしてはっきりと言う。



 「Yes。たとえお兄ちゃんと将来結婚できなくても私はお兄ちゃんが好き。この気持ちだけは誰にも負けないつもり。だからお兄ちゃんを地元の大学に入学させ私もその後を追って同じ大学に行くのが今の夢。その先は分からないけど、多分お兄ちゃんを好きって気持ちは変わらないと思う」



 私のその宣言に今までのふざけた感じを全く見せないで真剣そのものの表情でリンダはふっと笑う。



 「わかりましたデース。禁断の愛。本気だったデース。でもそれってとても素敵な物デース」



 リンダはそう言って窓の外を見る。


 

 「私はずっと日本にあこがれていたデース。漫画やアニメのような事は本当は無いと思っていたデース。でも日本に来てそれは本当にあると言う事を気付かされたデース。それは夢のような時間だったデース」


 「リンダ?」


 「私は友也も由紀恵も大好きデース。本当の兄妹の様に私に接してくれたデース。兄妹のいない私にはそれってとっても素敵なものだったデース。そして私友也の事好きになったデース」


 リンダはそう言って私を見る。

 その表情はとても切なく、そして真剣だった。



 「誰かを本当に好きになるの初めてデース。でも私はそれを友也に伝えないデース。この一週間で私はパースに帰らなければデース」



 「リンダ、あんた‥‥‥」


 それはリンダの本気の告白。

 リンダはやっぱりお兄ちゃんの事が本気で好きだったんだ。



 ずきっ!



 胸が痛む。

 リンダはその事を私に真っ先に告白した。

 そしてお兄ちゃんに思いを伝えないと言った。



 「だから残りの一週間は今まで通り楽しくしたいデース。でも私、由紀恵の事応援するデース」


 「リ、リンダぁ?」



 リンダは言いながら私の近くにまで来る。

 そして手をワキワキさせながらのしかかるかのように。



 「友也おっぱい星人でーす。私の胸見てる時顔ゆるいデース。だから由紀恵ももっと魅力的になるデース!」


 「いや、お兄ちゃんがおっぱい星人なはそうだけど、リ、リンダぁ!?」



 「時間が少ないから由紀恵の胸を大きくするのに今まで以上にマッサージするデース!!」



 そう言って私に飛び掛かるリンダ。



 「由紀恵可愛いデース! だから今日はとことんマッサージするデース!!」


 「ちょっ! まじやめてっ! 駄目っ!! うわっ! なんで服脱がすのよ!? いや、ら、らめぇぇええええええぇぇぇぇっ!!!!」



 



 真面目な雰囲気一転してリンダは服を引っぺがし私に豊胸マッサージをするのだった。

  

 

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