4-8(日)聞いてください友也デース


 「それではこれより投票を始めます! 会場の皆さんも投票箱にお願いします!」



 最後の参加者の自己紹介とアピールが終わっていよいよ投票が始まった。

 スタッフの人が会場の投票用紙を回収しながら審査員の方も点数の書き込みをしている様だ。



 「いよいよね。ちょっとリンダちゃんには驚かされたけど勝っても負けても恨みっこ無しよ?」


 「勿論デース! 正々堂々勝負デース!!」



 高橋静恵はそう言ってあの大きな胸を抱き上げるように腕を組む。

 リンダも負けじとあの大きな胸をぽよんと揺らしながらボンボンを振る。



 くそうぅ、そんなに大きいと年取ってから垂れるんだもん!

 私くらいの方が垂れなくて済むんだもん!!



 呪い殺すかのようにその凶器四つを見つめる私。



 「でもこれでいよいよ先輩に告白できる人が決まるんですね」


 「‥‥‥負けない」



 矢島紗江や泉かなめも胸を張ってこちらを見る。


 そう、これはお兄ちゃんへの告白をかけた勝負。

 そしてこの文化祭が終わる時あの「伝説の木」の下で告白をすれば二人は未来永劫結ばれるはず。


 負けられない、負けるわけにはいかないのよ!

 お兄ちゃんは渡せないもの!


 

 緊張の中私たちは結果が出るのを待つ。




 そして‥‥‥




 * * * * *



 「友也、聞いてくださいデース‥‥‥」


 「あ、あのねリンダちゃん?」




 私たちは草葉の陰からリンダとお兄ちゃんの様子を盗み見る。



 僅差だった。

 そしてインパクトで負けた。


 私や高橋静恵、泉かなめに矢島紗江がなんと同点だったのに最後の審査員の押しがリンダだった為今回のミス桜川東は留学生のリンダとなった。


 選ばれたリンダ自身も驚いていたようだけど約束は約束。

 私たちはハンカチをかみしめ涙ながらにお兄ちゃんへの告白権をリンダに譲渡するのだった。



 「友也、聞いてくださいデース‥‥‥」


 「リンダちゃんこう言う事はさ、その‥‥‥」



 ずいっ!



 リンダは少し頬を染めてお兄ちゃんの前に一歩出る。




 「私、友也好きデース!」




 どきっ!




 リンダ、やっぱりそうだったの!?


 いや、そんな気はしていた。

 なんだかんだ言ってリンダはお兄ちゃんだけには気を許していた。

 そしてやたらとお兄ちゃんとだけはスキンシップも多かった。


 こんな短期間だったけどリンダはちゃんとお兄ちゃんを見ていた。




 ずきっ!




 胸が痛む。


 分かってはいる。

 本当の兄妹では結婚は出来ない。

 いくら私がお兄ちゃんを好きでも‥‥‥



 でも‥‥‥




 「あ、あのさ、リンダちゃん?」



 「私友也好きデース。由紀恵もみんなも好きデース! だからここで告白するデース!! みんな好きだからずっとみんな一緒にいたいデース!!」





 「「「「はぁっ!?」」」」




 思わず私も高橋静恵も泉かなめも矢島紗江も声を上げる。



 がさっ!



 「リンダちゃんどう言う事なの~?」


 「友也、てめえこれだけの状況で!!」


 「長澤先輩、これ終わったら僕も先輩にお話が!」



 私たちの更に後ろの茂みから紫乃や下僕その一、そして吉野君まで出てきた。 

   


 「リンダちゃんこれは?」


 「あれ? みんなも来ていたデース! ちょうどよかったデース! 私友也も好きだけどみんなも好きデース!! みんなにここで告白しますデース!! これでみんなとずっと一緒にいられるデース!!!!」



 にこにこと屈託のない笑顔を見せるリンダ。



 リンダ、あんたってば‥‥‥



 「リンダちゃん、告白の意味わかってるの?」


 「‥‥‥LikeとLoveは違う」


 「なんか拍子抜けしちゃいましたね」



 まだ何か言いたい高橋静恵だったけど泉かなめも矢島紗江もなんかほっとした表情をしている。


 高橋静恵は大きくため息をついて言う。


 「まあ、勝ったのはリンダちゃんだからリンダちゃんのしたい人に告白すれば良いわよ。でもこれで長澤君の彼女になれる人はまた最初からよ? 良いわねリンダちゃん?」


 「OH-! それは興味深い話デース! いいデース、受けて立つデース!!」


 ニカっと笑い親指を立てるリンダ。



 こいつ本当に分かっているのだろうか?

 本当は‥‥‥



 「友也、由紀恵終わりましたデース。お腹すいたデース。みんなでご飯食べるデース!!」



 「それじゃぁ、帰り道のファミレスにでも行こうか?」


 「うん、お兄ちゃん、行こっ!」


 「あ~、私も行くぅ~」


 「そうね、もうこんな時間だものね。長澤君、行きましょ」


 「‥‥‥期間限定のスイーツもあるはず」


 「先輩、一緒に行きますよ!」


 「友也ぁ~、俺もぜってぇ行くからな! リンダちゃん~」


 「長澤先輩、僕も行きますよ!!」


 

 なんだかんだ言いながら私もほっとしていた。

 そしてみんなでわいわい言いながらファミレスに向かうのだった。




 「JAPANやっぱりさいこーデース!!」




 リンダは校門を出ながら学校に向かって投げキッスをするのだった。 


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