3-9(木)仕上げデース


 「友也、私を選ぶデース! さあこれにサインデース!!」


 「いや、リンダちゃん何を言っているのか分からないよ?」



 朝からリンダに胸のマッサージされてぐったりしながらリビングへ行くとリンダがお兄ちゃんに顔を近づけていて迫っていた!?



 「ちょっとぉっ! リンダ朝から何やってるのよ!? お、お兄ちゃぁんっ!!」



 私は慌ててリンダを引っ張ってお兄ちゃんから引き離す。


 「OH-! 由紀恵も後でかまってあげますからちょっと待つデース! 今友也と契りを交わすデース!!」



 ちょっとマテ、何の契りだ、おいっ!?


 

 よくよく見ればリンダは手になんか紙と朱肉を持っている。

 そしてその書類を見て私は大いに驚く。



 「リ、リンダ! これって婚姻届けじゃないの!? あんた一体何考えているの!!!?」



 するとリンダはきょとんとして私を見る。

 そしてその書類をかかげてあたしにも言う。


 「由紀恵が先でも良いデース! 紫乃に聞きましたデース。これにサインとハンコ押せば家族になれるデース!!」



 「いや違うから、家族は家族でも意味が違い過ぎるからぁッ!!」



 朝から私の悲鳴が上がるのだった。



 * * * * *



 「ふぇぇええぇぇぇ~ん、由紀恵ちゃんゆるひてぇ~!!」



 私は登校中に紫乃と合流してすぐにこの子のほっぺたをムニムニと引っ張る。


 「何言ってるのよ! リンダに変な事ばかり吹き込んで!! リンダもリンダよ、意味わからないなら確認しなさいよ!!」


 「OH-! まさかケコーンだとは思いませんでしたデース! 日本語と漢字難しいデース!!」


 「いや、スマホのアプリで画像取り込みの自動翻訳あるでしょうに!! あんた何時もそれ使っているでしょうに!!」



 私が突っ込みを入れると視線を外し音にならない口笛吹いていやがる。

 こいつ、確信犯だ!!



 「リンダちゃんが絶対に高橋先輩に勝つ方法無いかって聞いてくるから婚姻届けに友ちゃんとリンダちゃんの名前とハンコ押したの見せれば間違いなく勝てるって言っただけだよぉ~」


 「だからってなんで私までリンダと婚姻届けなのよ!?」


 「由紀恵も私の可愛い妹デース! 二人とも私の家族デース!」



 ふんすと鼻息荒くリンダは言うけどなんでそうなる!?


 

 私は朝から頭痛がしてきたが、頭を軽く振りいよいよ明日から始まる文化祭の最後の準備が有る事を思い出すのだった。



 * * * * *



 「はい、それでは皆さんご挨拶を!」


 『お帰りなさいませ、旦那様、お嬢様!』



 今日は授業は午前中までで午後からは文化祭の最後の仕上げの為大忙しになった。


 既に機材や衣装は運び終わり部屋もメイド喫茶に模様替えが終わった。

 そして最後の練習とばかりにみんなで一通りの挨拶から始まって役割分担、商品のチェック等々を佐々木さんの指導の下でやっていた。



 「大丈夫のようですね。では皆さん明日から頑張ってご主人様とお嬢様たちをお迎えしましょう!」


 佐々木さんのもの凄いやる気で準備は完了した。



 「ふっふっふっふっデース! これで何時でも友也を迎え入れられるデース! そしてみんなで家族になるデース!!」



 なぜか闘志に燃えるリンダ。



 私はそんなリンダを見て大きくため息をつく。

 だって勝負とか言っているのは最終日の伝説の木の下での告白でOKをもらう事のはず。



 どう考えてもお兄ちゃんの事だから逃げると思うのだけど‥‥‥




 私はその校庭に生えているその伝説の木を見るのだった。



























 いや、伝説って言ってもあの木って春先桜が満開だった木よね?

 桜だよね??

 

 まあ今は緑が生い茂った普通の木なんだけどね。 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る