訪問
翌日の放課後。
おれは田村と共に新聞部の部室を訪れていた。
部室に入ると、中は他の教室と同じくらいの広さでパソコンが三台、横並びであった。
何かの記事を書いているのか、パソコンのキーボードを叩いている男子が一人、もう一人は女子で机の上に写真を何枚も置いて、それを熱心に見比べている。
そして、奥の方にある机の前にもう一人、イスに座っている人物がいた。
「海斗、あの人が部長の
部長だと言われたその人物はこれから記事を作るのか、机の上に置いてあるレイアウトの前で腕を組んでいた。
少しぼさっとした髪の毛にメガネをかけ、制服もところどころ緩んでいる。
というか、今、おれのこと、下の名前で呼んだよね?
別にいいんだけどさ……
ちょっとびっくりした。
「挨拶とかした方がいいか……?」
「いや、今は集中してるからやめといた方がいいと思う。普段はすっごく優しいんだけど、新聞部のこととか記事のことになると、すぐ熱くなって怒ることもあるの。まぁ大声を出すとかじゃなくて、冷静に責めてくるんだけどね。まぁ、ここに呼んだのは部長なんだけどさ……」
言って、田村は苦笑いした。
「とりあえず、私達の制作現場はこんな感じ。今週中には文化祭の出し物を各クラス、学年で決めて、来週から制作が始まるはずだから、私達の出番も来週ってわけ。で、海斗には写真を撮ってほしくて。まぁ撮れる分だけ何枚でもって感じね」
「わかった。まぁ頼まれた以上、頑張るよ」
「よろしくね。じゃあ、今日はこれで解散にしましょう。また明日ね」
「ああ、またな」
そう言って、おれは部室から出て行った。
♦︎
下駄箱で靴に履き替え、学校を出る。
「あ、きた……」
「え?」
その声に驚き、おれは慌てて横を振り向く。
そこには校門の壁にもたれている美香がいた。
「あれ、先に帰っても大丈夫って言ったのに……」
「うん、そうなんだけどね、一人で帰ってもつまんないからさ……待ってた」
「あ、ああ、そう……なんだ。じゃ、じゃあ帰るか……」
「うん……」
照れたように俯く美香。
その表情がやけに可愛くて、おれはまともに直視できなかった。
その表情は反則ですぞ……
「新聞部の手伝いってさ、いつからやるの?」
帰り道の途中、美香はそんなことを聞いてきた。
「え……?あー、うん。来週からって言われたけど……」
「へぇ、そっか……」
そうして、美香は再び黙り込んでしまう。
なんだろ……
気になるのかな……
一緒に帰る時間が減るから?
いや、文化祭の準備が始まれば、お互い居残る時間も増えるだろうし、一緒に帰る機会も減るのは分かっているはずだ。
じゃあ、何を気にしているんだろう……
それがわからないな……
でも、まぁ別に美香に迷惑をかけるようなことをするわけでもないし、あまり気にする必要もないか。
それにしても文化祭か……
今年は去年とは違うものになりそうだな。
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