文化祭
翌日の月曜日。
おれは登校してから、授業を受けずに職員室の奥にある応接室のソファに座っていた。
隣には美香と田村もいる。
学年主任からこの間の事故のことを当事者のおれを含めて、詳しい話を聞きたいということだった。
まぁ当然だよな。入院してるくらいだし。
原因はなんなのか、どうして事故が起きたのかなど詳しい話をしてほしいと言われた。
しかし、その中で勝手に階段から落ちたのはおれのせいだと言ったのだが、美香と田村は私達が揉めたのが原因だと言い、お互いに引かなかった。
これには先生も困り果てて、最終的に同じことを二度と起こさないようにと厳重注意を受けることとなった。
「失礼します」
頭を下げてから、職員室を出る。
「なんか緊張したな……」
「そうだね、ごめん、私達のせいで……」
田村は俯かせている頭をさらに下げて、謝ってきた。思えば、こいつはずっと元気がない。こっちが少し心配になるくらいだ。
「いや、本当にさ、気にすんなって。もうこの件は終わりにしてさ。それにデジカメが無事で何よりじゃないか。取材には必要なものなんだろ?」
「うん……そうだけど……」
「優しいね、海斗……」
おれ達の会話を聞いていた美香がそう言ってくる。
「いや、別に普通だろ、こんなの……」
真っ直ぐ褒められるとどうにも照れ臭くて、おれは二人から目線を逸らす。
「なんか理由がわかったかも……」
すると、田村がボソッとそう言った。
「ん、何の?」
「ううん、なんでもない」
「そ、そうか……」
すごい気になるけど、まぁ無理強いもできないし、仕方ないか……
♦︎
「というわけで実行委員を男女それぞれ一名ずつ決めたいと思う」
今日の授業が終わり、ホームルームにて担任からそう説明があった。
ああ……すっかり忘れてたけど、そろそろ文化祭の時期か。
十月も半ばに入り、文化祭の時期になった。
去年は何してたんだっけ……
ああ、確か屋上でコーヒーすすりながら、携帯いじって一日過ごしてたんだっけ。
確か缶コーヒー五、六本飲んで翌日、腹が痛くなったという思い出がある。
今年はそうならないようにコーヒーは控えめにしよう。
「誰か実行委員に立候補してくれる者はいないか?」
おれが悲しい思い出に浸っていると、担任がそう言うが、誰一人として手を挙げるものをいなかった。
まぁそりゃそうだろうな。
実行委員になれば、放課後には文化祭の準備やらで忙しい動くことになるし、進んで手を挙げるやつはいないだろう。
「まぁいきなり言われてもみんな困るだろうから、一日よく考えて明日また立候補を募ろうと思う。もしいなければ、あみだくじとかジャンケンで決めることになるから、みんなよく考えて、覚悟しておくようにな」
担任のその言葉と共にホームルームは終了した。
そしていつも通り、おれはカバンを掴むと足早に教室から出ていく。
もちろん、教室の外には美香がいた。
そうして、おれ達は学校から出て行くのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます