命を助けたのは学校一の美少女で、彼女は何故かおれにだけデレてます。
あすか
一章
彼女がデレたのは
あれは全て偶然の出来事だった。
一週間前の学校終わりに全てが変わった。
あの日、おれはいつものように一人で家に向かって帰っていた。
クラスで仲の良い人間なんておらず、中学一年から、今現在の高校ニ年まで、おれはずっとぼっちだ。
最初は友達がほしいと思っていたが、やがてその感覚は麻痺してきて、他人と馴れ合うのは面倒だと思うようになってきた。
上辺だけで判断し、相手のことを思い、本音すら話せず、表面だけの付き合いをしていく。
果たして、それが友達と言えるのだろうか。
もちろん、本音で話せる人間もいるだろうが、おれのことを理解してくれる人間なんて現れるのだろうかと思ってしまう。
まぁ有り体に言えば、おれは面倒くさい人間だからだ。
長いぼっち生活で物事の本質を見抜いてしまう。故に周りに理解されない。そう思っている。
そんなおれが何故なのだろうか。
「お待たせ!帰ろっか!」
学校一の美少女とこうして二人きりで下校することになっているのは。
よし、整理しよう。
あれは一週間前。
信号が切り替わり、横断歩道を歩いていた時のことだ。
おれの前に一人の女の子が歩いていた。
同じ制服。だから同じ学校というのはわかる。
しかし、わかるのはその程度だった。
まぁ後ろから見ているから当然といえば、当然なのだが。
その女の子は携帯を見ながら、歩いていた。いわゆる歩きスマホってやつ。
まじで歩きスマホとかやめてほしい。
ニュースとかでろくな目に会わないはわかりきっているのに、どうしてやってしまうんだろうか。
ああいうのは痛い目に合わないとわからないものなんだよな。
おれは心の中で悪態をつきながら、歩いていた。その時だった。
スピードと信号を明らかに無視した車が、女の子に向かって一直線に突っ込んできた。
いやいや、まじかよ!
痛い目に合えとは思ったけど、こんな重傷なのは願ってねぇぞ!
いや、あのスピードで跳ねられたら命だってやばい……!
おれは考える間もなく、走り出した。
陸上の選手並みのスピードがおれに備わってれば……と、つい思ってしまう。
まだ女の子は携帯に夢中で、車には気付いていない。
「え……」
そして、もうすぐそこに車が迫ってきていた時に女の子はようやく気づいた。
「……!」
あと一秒遅かったらおれも跳ねられていただろう。間一髪のところで間に合ったおれは女の子の勢いよく抱きしめるようにしながら、地面に転がっていった。
「はぁはぁ……」
いや、まじで危なかった……
死ぬかと思ったわ……
ってか、なんなんだよ、あの車……
おれは激しく鼓動を打つ心臓の辺りに手をつきながら、思った。
ちなみに後に暴走していた車の運転手は少し離れたところのガードレールに激突して、重傷を負い、その後逮捕された。
突然の発作で意識が錯乱していたとのことだった。
「……」
一方、自分のおかれていた立場をようやく理解した女の子は俯きながら、地面に手をつきながら、小刻みに震えていた。
もし、あのままだったら、確実に命が危なかった。そう感じ取っているのだろう。
「あ、あの、大丈夫……?」
なので、少しでも安心させられたらとおれは声をかけた。
「……」
女の子はゆっくりと顔を上げ、そして小さく頷いた。
しかし、顔を見た瞬間、おれは目を見開いてしまう。
かわ……いい……な、しかもめちゃくちゃ。
色白で目はパッチリしてて、髪は黒くてセミロング、おまけに服の上からでもスタイルの良さが分かる、はっきり言って美少女だ。
こんな子におれは咄嗟とはいえ、抱きしめる形になったわけか。
先ほどのことを思い出し、今度は顔が熱くなるのがわかる。
「……」
おれが顔を赤くしているうちに、女の子はゆっくりと立ち上がると、そのまま近くに飛んでしまっていたカバンを拾いあげ、そのまま歩いていってしまう。
え、嘘だろ……?
おれはそう思ってしまった。
こっちは命の恩人なんだぞ?
恩人になりたいとか、そんなつもりで助けたわけじゃないけど、一言くらいあってもいいんじゃないか?というか、あるべきだろ。
それが礼儀ってもんだと思う。
おれは先ほどまでの顔の火照りもすっかりどこかへ消え去り、今度は心の中で怒りの炎を灯していた。
そして、何か言ってやろうと立ち上がる。
「いって!」
しかし、立ち上がった瞬間、足首に激痛が走る。
もしかして、くじいた……?
アドレナリンが出てたから気づかなかったのか……
くそ、まじで最悪だよ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます