#10 手癖との向き合い方
手癖という重力にいつも苦しめられている。小説の原稿用紙には、書いているものを別の場所へと引っ張っていってしまう重力場のようなものが展開されている。書きたいものが別にあり、そこへ向かって筆を進めていたとしても、強い重力に引きずられていつもと同じ場所へと落ちていく。
もちろん手癖に従うことは大事だ。自分の得意な分野だからこそ書きたくなるのだろう。重力を利用して大きな位置エネルギーを得ることだって出来る。しかし小説を書く活動を続けていくためには重力を抜け出して新しい天体に向かって飛び立っていくことも必要なのだと思う。何も見つけることが出来なければそのまま深宇宙をさまようことになってしまうので危険なことでもあるが。
スイングバイという宇宙航法がある。天体の重力を利用して自分の速度を上げることをこう呼。これになぞらえるなら、手癖という重力から逃れながらかつ利用するという器用さを手に入れることが出来れば、もっと自由に小説を書くことが出来るのかもしれない。
2020年12月27日
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