100~1000字くらいのエッセイ鮮魚コーナー

丸井零

2020年12月

#1 小さな冒険者、そしてラスボス

 小学生にとって登下校は冒険だ。通学路は草むらであり、洞窟であり、火山であり、海洋だった。当時流行っていた『ピクミン2』という冒険ゲームに出てくる敵に、ひまわりの花に擬態して近づいた獲物を襲うやつがいた。中々の強敵で、見つかるとくぐもった咆哮と共に主人公の仲間であるピクミンを食べられてしまう。

 そんな敵が通学路に現れたのだ。いつも通っている曲がり角の先、一軒家の前にひまわりの鉢があった。

──近づいたら喰われる

 私と、一緒に居た友人はそこで立ち往生した。ヤツに見つからないように通らなければ。回り道という選択肢は浮かばなかった。恐る恐る、一歩ずつ時間をかけて、ひまわりから目を逸らさずに通り抜けた。もう大丈夫だという距離になった瞬間、2人で笑いながら駆けだした。帰りが遅いと祖母に叱られた。

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