第58話
飛び跳ねて叩きつけ、時計の様にぐるりと回って薙ぎ払い。
たまに槍だとか弓矢が飛んできたりするが、上がった耐久力のおかげだろう、さほどダメージを受けることもない。
暫く暴れていると、途中から一撃では死なないゴブリンが出てきたので、飛びながら『巨大化スカルクラッシュ』をメインに叩き込んでいると、ゴブリンの数が減っていることに気づいた。
伸ばしたカリバーを振り回すときに、手に伝わる衝撃が随分と収まってきたからだ。
――――――――――――――
種族 ゴブリンキングダム
名前 マイケル
LV 500
HP 10000 MP 0/75383
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……MPが切れて召喚すらまともにできなくなったようだ。
倒した数からしてMP切れからは程遠いと思ったのだが、途中から硬くなった辺り、もしかしたらレベルを多少上げて召喚するようにしていたのかもしれない。
臣下のいなくなった王国を、はたして誰が一体国だと認めようか。
こうなればもう後は叩くだけなので、道を塞ぐゴブリンをなぎ倒しつつ詰め寄り
「『スカルクラッシュ』!」
一発全力で叩き込んでやれば、哀れにもクリスタルは砕け散ってしまった。
同時に周りで生き残っていたゴブリンたちも同時消滅、しかし私が倒していないからだろう、残念ながら魔石を落とすことがなかった。
『レベルが上昇しました』
1000以上あるレベル差、ここに来るまで、そしてここで倒したゴブリンたちの分も合わせてようやく1レベル。
ダンジョン崩壊に立ち会って理解したが、今の私のレベルがあろうと、Fランク以上のダンジョンが崩壊したときにはまともに太刀打ちできないだろう。
なんたって推奨上限が10レベルのダンジョンですら、1000レベルの化け物が生まれるのだ。Fランクなら押して図るべし、だ。
生活が安定したことで、正直腑抜けていたところがあると思う。
今回最初に殴り飛ばされたのだって、もっと慎重に周囲を見回していれば食らうことはなかったし、より上位のダンジョンならあの時点で死んでいた。
今回は希望の実集めついでに訪れたが、もっとレベルを上げるためにも、より上のダンジョンへ向かわなくては。
ドロップした魔石は『ゴブリンキングダム』そっくりの淡青色、シャンデリアの光を反射して輝いている。
相変わらずほかのドロップは無し。
そういえばこの前の騎士戦後、参照のできないスキルと共に運が1上昇していて少し期待していたのだが、所詮は1ということだろう。
ぐいと背伸びをして、とれたて新鮮な希望の実を口に放り込む。
ふぃー、疲れた。
◇
「魔石……なにそれ?」
「あ? 猫だよ猫、ダンジョンに入り込んでたのをほかの探索者が拾ってきたんだ」
協会へ足を運ぶと、ウニが黒い物体を撫でていた。 拾ってきた本人も家だと飼えないということで、協会で預かることになったらしい。
腹を見せてうにゃうにゃと、ウニに撫でられて情けない姿を見せている。
どれ、一つ私も撫でてみるかと手を差し出せば、鋭い爪が手のひらを襲う。
にゃふーっと満足げな鼻息、どうやら私が気に食わないらしく一撃浴びせてきたようだ。
まあレベル差でダメージなんて全くないので、無視してそのまま撫でる。くふふ、お前ごときが私に勝てると思うなよ。
柔らかくて暖かい。良いな動物、動物飼いたいかも。
「めっちゃ嫌がってるんだけど」
「うん」
「あんまり嫌がらせするなよ……」
ポケットから魔石を取り出し、ごろんと机に転がす。
ウニも心得ていて、それに手を……
『あっ』
横からひょいとそれを咥え上げ、猫が飲み込んでしまった。
こ、このやろう。
「吐け」
『ミ゛ィィィィっ!』
「こらこら振るな振るな、お前も吐き出せって」
「吐け、痛っ」
脇の下から掬い上げわっさわっさと揺さぶっていると、その爪が頬を薄く切る。
触っても血は出ていないがひりひりと痛むし、跡にはなっていそうだ。
代金は後で弁償するとウニは言うが、ぞんざいに置いた私にも問題がある。
今回は互いに悪かったということで弁償もなし、それより魔石なんて飲み込んだ猫の調子が心配だ。 本人はいたってマイペースに毛づくろいしていて、全く苦しんだり痛がるそぶりを見せない。
魔石なんぞ絶対に体に悪いのに、本当に飲み込んで大丈夫だったのだろうか。
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