第132話打ち上げ

 そして、全ての片付けが終わった。


 元通りにした教室にて、俺たちはその時を待っていた。


『優勝者は……メイド喫茶の二年C組です!』


「「「オォォォ!!!」」」


「すごいねっ!」


「まあ、綾のおかげだろ」


「そんなことないよっ! 冬馬君だよっ!」


「さて、お前たち。よく頑張ったな。これで、俺の懐も潤うぜ」


「おい?」


 また賭けてやがったか。


「ゴホン! ……優勝商品は、ボウリング3ゲーム無料券だそうだ」


「エエェ〜、しょぼくない?」


「でも、最低でも一人千円はするぜ?」


「三十人いるから最低でも三万かぁ〜」


「でも、それが目的じゃなかったし」


「確かに! 楽しかったもんなっ!」


 まあ、高校の文化祭だしな。

 それにしてはいい方だと思う。

 そういえば、小百合の奴も苦労したって言ってたな。

 豪華すぎてもいけないし、しょぼすぎてもいけないしって。


「というわけで、これがその券だ。後は自由に使うといい。さあ、文化祭実行委員。後は任せる」


 黒野と博が前に出る。


「皆さん、お疲れ様でした。皆の協力もあり、楽しい思い出を作ることが出来たと思います」


「俺もそう思います。そして、予定通りに打ち上げをしたいと思います。折角なので、ボーリングにします。もちろん、自由参加です。他のクラスと遊ぶ人もいるし、何かしらの事情がある人もいるでしょう」


「それにより、あいつは来なかったなどということは言わせないことを約束します」


「もし見つけた場合は、冬馬にしめてもらいます」


「おい?」


 いや、確かにそういった真似は好きじゃないが。


「ふふ、冬馬君なら適任だねっ」


「まあ、良いけど……まあ、考え方は人それぞれだからな。一人が好きとか、大人数は苦手とかあるし。そこは個人で良いと思う」


 ノリが悪いとか言うやつもいるけど、それはそいつの考え方だし。


「それでは、これにて解散とします。皆さん、ありがとうございました」


「もし打ち上げに参加する人は、三十分後に校門の前に集まってください」


 上手いな……教室残ってくださいとかだと、行かない人がわかってしまうからな。


 俺も教室に残り、綾とお喋りをする。




 そして、三十分が経過した。


「さて、俺らも行くとするか」


「うんっ」


 校門の前に行くと、ほぼ全員が集まっていた。


 そして、そのまま歩いて向かう。




 到着し、四人ずつに分かれることになった。


 というわけなので、作戦を決行する。


「綾、黒野を誘ってくれ」


 森川は剛真と帰ったそうだし。

 まあ、付き合いたてだしな。


「ふえっ?」


「まあ、良いから」


 綾には言わない方が良いだろう。

 顔に出るタイプだし、黒野は鋭いしな。


「う、うん」


 俺は博の方へ行く。


「博、一緒にやろうぜ。黒野は誘っておいた」


「と、冬馬……ありがとう」


「何、これくらい気にするな。ほら、行こうぜ」


 黒野と綾の元へ行く。


「これは、どういう組み合わせかしら?」


 自然体、自然体、自然体……。


「いや、森川がいないし。あと、明日の予定も立てられるし」


「確かにそうね。その方が楽よね」


 よし、不自然な流れではないはず。


 そのまま靴を借り、自分達のレーンにつく。


「博は上手いのか?」


「うーん、どうだろ? まあまあかな」


「吉野、騙されちゃダメよ。中野はそう言いながらストライクを取る男よ」


「同じクラスになって思ったけど、二人って仲良いよね?」


 おっ、いいぞ。

 自然な形で質問になってる。


「 中学の部活が一緒だったんだっけ?」


「ええ、そうよ。陸上部でね。あと、三年の時一緒だったわ」


「グループは違ったけど、ふつうに話したりはしてたね」


「冬馬君、二人ってお似合いだよね?」


 まさか、俺の意図に気づいているのか?


「まあ、二人とも大人っぽいからな」


「な、何言ってるのよ。中野みたいな良い人は、私には勿体ないわ」


 これは照れているのか、それとも本気で言っているのか……わからん。


「いや、俺の方こそ勿体ないよ」


「ふふ、同じこと言ってる」


「全く……ほら! やりましょ!」


 ひとまずゲームを開始する。


「博、言っておくが——手加減はしないぞ?」


 俺だって綾の前でカッコつけたい。


「もちろんだよ——体育会系の負けず嫌いを舐めちゃいけない」


「はぁ……男って馬鹿ね」


「でも可愛いよねっ!」


「……否定はしないわ」


「ふんっ!」


 俺の放ったボールは、全てのピンを薙ぎ倒す。


「それっ!」


 博のも同じく薙ぎ倒す。


「やるな」


「冬馬こそ」


「えいっ!」


 綾の放ったボールは………虚空に消えた。

 いや、ただのガーターだった。


「あ、あれ?」


「前に教えたことが出来てない……」


 何故だ? 運動神経は悪くないのに。


「むぅ……おかしいです」


「いや、そんな何故だみたいな顔されても……どれ」


 綾の後ろに立って、投げ方をレクチャーする。


「ひゃ……」


「いや、赤くならないでくれ」


 人がせっかく意識しないようにしてるというのに。


「ご、ごめんにゃしゃぃ……」


 はて? どうしたというのだ?

 いつもより緊張している気がする。


「ほら、行くぞ」


「う、うんっ」


 レクチャーしつつ、投げると……。


「わあっ! スペアだよっ!」


 ハイタッチをする。

 どうやら、俺の気のせいだったようだな。


「おう、やったな」


「良いわよね……」


「うん?」


「冬馬見てると彼女欲しいって思うよね」


「中野は作らないの? 昔からモテるのに」


「まあね……ずっと片想いをしている子がいてね」


「へぇ……意外だわ」


「えっと……?」


「二人とも仲が良くて良いなって話よ」


「ふっ、黒野も彼氏でも作ったらどうだ?」


「それも良いかもね」


 そう言い、黒野は微笑んだ。


 どうやら、その気がないわけではないようだ。


 後は、明日のデート次第ってところか。

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