第82話冬馬君は再びの男子会をする

 翌日、いつも通り綾と電車で会ったのだが……。


「綾?」


「な、なにかな!?」


「いや、目が合わないのだが……」


「そ、そんなことないのです……」


「いや……まあ、いいけど」


「ご、ごめんなさい……」


 ……うーむ、挙動不審になっているな……。

 やっぱ……俺が原因か。

 ちょっと性急すぎたかな?


 その後、電車を降りても綾はそのままだった。

 うーん……綾の気持ちは大事にしたいしな、一応確認しとくか。


「綾、明後日やめとくか?」


「え……?」


「無理しなくて良いからな。綾を困らせることは俺の本意じゃない」


「あっ、でも……明後日冬馬君の家行ったら……な、なにかするの……?」


 ゴハッ!?う、上目遣いは反則だろ!?

 グォォォ!!!おさまれ!俺の中のナニカよ!


「その……なんだ、何もしない自信はないが……綾が嫌がることはしないと約束する」


「と、冬馬君……えっと、あの……明後日行かせていただきます……」


「お、おう」


 アレ?これはオッケーってこと?

 うん?ダメだ……経験値がなさすぎる……。

 これは、また相談をしなくてはな。


 結局、その後は会話もせずに学校の教室まで行くのだった……。

 ただ不思議と気まずいことはなく、少しむず痒い感じであったと思う。




 その後、午前中の授業を挟んだことで、変な空気は解消された。


「文化祭の準備もそろそろ始まるね〜」


「そうだな……バイトも年末までは少ないし、準備に専念するかね」


「去年はどうしてたの?」


「……覚えてない。一応最低限の手伝いはしたが、文化祭自体にも出てないしな」


「えぇー!?そうだったんだ……でも、そうだよね」


「だから今回は楽しみだ。綾という、可愛い彼女がいるからな」


「ふえっ?……わ、私もです……カッコいい彼氏さんです……」


「綾……俺と文化祭デートをしてくれませんか?」


「は、はぃ……喜んで……」


「おい?俺いるからな?砂糖ドバドバはほどほどにな?」


「あれ?真兄いたの?」


「はぅ……わ、忘れてました……」


「……うん、俺お腹いっぱいだわ。やれやれ、俺の春はいつくるのかね?」


「いや……とりあえず、タバコをやめればいいんじゃない?」


「それな!最近みんな嫌がるからなぁ……まあ、いいか。まだ焦るような歳でもないし」


 ……ここで、黒野はどうしたの?とか聞けないしな。




 その後放課後を迎えると、綾は森川と黒野と帰っていった。


「さて、俺も帰るとするか」


 学校の出口に向かうと、皆が揃っていた。


「アキ、智也、剛真……ハハ……懐かしい感じだな」


「冬馬が最後ですね。確かに……2年ぶりですね」


「ガハハ!懐かしいな!」


「相変わらず、うるせー奴……だが、感慨深いものがあるな」


「だな……よし、じゃあ行くとするか」


 全員で帰りながら、空白の時間を埋めるように、それぞれの話をするのだった。





「お邪魔します」


「失礼いたす!」


「邪魔するぜー」


「おう、いらっしゃい。さて、アキと智也は上に行っててくれ。剛真を挨拶させるから」


 俺は剛真を連れ、和室に入る。


「……御無沙汰しております、冬馬の母上殿。貴方の優しさに俺は救われました。ガタイも大きく見た目もこんな俺を、貴方は皆と変わらずに接してきれたこと、今でも感謝しております。冬馬は相変わらず、筋の通った良い漢です。これからも仲良くさせて頂きたいと思います。母上殿にも、またご挨拶に伺います」


「……そういや、そうだったな。うちの母さんは怖がらなかったな」


「ああ、そうだ。大体友達の家に行くと、その家族は怖がってしまった。だが、ここは居心地が良かった。惜しい方を亡くしたものだ……」


「ありがとな、剛真……さて、行くか」


 お茶菓子を用意して、俺の部屋に入った。


 そして……恋愛相談の始まりである。


「さて、恋愛初心者の諸君。この俺に相談があるのかな?」


「ぐっ!?」


「ウムゥ……」


「こればかりは仕方がないですね……」


「冬馬、今日はそういう会でもあるんだろ?」


「まあ、そうだな。まずは、智也。飛鳥とはどうなったんだ?」


「こ、告白をして付き合うことに……ですが、デートしても変わらないというか……」


「あぁー……付き合いが長いとそういう弊害があるかもな。よし、俺が伝授を授ける。いいか……」


 智也はアキの話を一生懸命に聞いている。


「さて、俺は剛真か。一応先輩ではあるし。森川とはどうなったんだ?」


「うむ……あの後、勇気を出してデートに誘ったのだ……」


「おっ!?えらいぞ!それでこそ漢だ!どこに行くんだ?」


「それが……どうしたら良いのだ?俺はファッションも知らんし、若者の遊びも知らん……」


「……なるほど……お前がかっこよく見える方がいいよな。それでいてデートになって会話にも困らない……ボーリングならいけるんじゃないか?」


「むっ?確かにハイスコアは250だし、デートっぽくもある……冬馬!感謝する!」


「近い!近いから!男のドアップとかいらんわ!」


「ガハハ!すまんな!だがスッキリしたぞ!」


「なら良かったよ」


 その後も四人で会話し、男子高校生らしい話をするのだった……。

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