第81話冬馬君は平和な時間を過ごす

 その後剛真達とは別れ、俺は綾の家に来ていた。


 誠也とは、最近遊んであげられてなかったからだ。


「わぁー!お兄さん!」


「よう、誠也。久しぶりだな」


「ごめんね、冬馬君。誠也が、どうしても遊びたいって」


「いや、良いさ。誠也、そういう時は遠慮なく言うと良い」


「え?で、でも……お母さんが、あんまり邪魔しちゃいけないって……お姉ちゃんとお兄さんのこと……色々できないからって……よくわかんないけど」


 ……玲奈さーん!!何言ってんのー!?いや、助かるけれども!!


「も、もう〜……お母さんってば……」


「ハハハ……そうだな。誠也、事前に連絡をくれれば問題はない。そうすれば、そういうモードでくるから。遊びたくなったら、綾に言うといい」


「ホント!?やったぁ!」


「むぅ……私の冬馬君が……でも、誠也ならいいかな」


 そしてリビングにて、まずはお茶を飲んでいると……。


「ねえねえ!お兄さん!」


「ん?どうした?」


「お兄さんは、お姉ちゃんのどこが好きになったの!?」


「ちょー!?せ、誠也!?」


「うん……?数えきれんな。笑った顔、微笑んだ顔、膨れた顔、照れた顔、拗ねた顔。良い匂いがするし……こっから先は誠也には早いな。あとは、その優しい心に惹かれたんだろうな」


「はぅ……!べた褒めされてるよぉ……」


「それって、どうすればそうなるの!?」


「ん?どういう意味だ?」


「うんとねー、今日女の子に告白されたんだー」


「おっ?ませてるな。まだ、9歳だというのに」


 まあ、女の子の方は思春期も早いからな。


「えぇ!?誠也!?どういうこと!?まだ早いわよ!?」


「綾、落ち着け。で、返事はしたのか?」


「うーん、まだ……よくわかんなくて。付き合うって、友達とは何が違うの?」


「難しい質問だな……友達と一緒に遊んでいたら楽しいか?」


「うん!楽しい!」


「好きな子といるとな……楽しい上に、ドキドキするんだよ。心臓の鼓動が早くなる。その人のことが頭から離れなくなったり、今は何をしてるかなとか考えてしまうんだ」


「そ、そうなんだ……と、冬馬君も……嬉しい……」


「ドキドキ……うーん……でも、その子のこと考えてるよ?あと、可愛い子だなと思う……」


「意識はしてるってことだな。まあ、わからなくていい。ただ、返事だけはしっかりしなさい。女の子が勇気を出して言ったんだ、それに応えてあげるのが男というものだ」


「でも、なんて言えばいいの?」


「思ったことを言えばいい。まだわからないこと、でも意識はしてることとか。大事なのは、誠意を持って応えることだ。もちろん、可哀想だから付き合うとかはダメだぞ?」


「そっかぁ〜……うん!ありがとう!お兄さん!」


「まあ、理解するにはまだまだ早いわな……」


 ……最近の小学生はませてるなぁ。

 俺なんか、何も考えてなかったぞ……。

 偉そうなこと言ってるわりに……。



 その後ゲームをしたり、誠也の話を聞いたりして時間は過ぎていく。

 どうやら友達も出来てきたようなので、俺も一安心だ。

 今ならわかる、それがいかに大事なことか。

 ……うん、帰ったら奴らに連絡しよう。

 そんでもって、久々に集まるとしよう。


「お兄さん!今日はありがとう!」


「どういたしまして。また来るから、したいことを考えておけ」


「え?いいの!?うー!アレもしたい、これもしたい……うー」


「ククク……可愛い奴だな。いいよ、付き合うから順番を考えておきな」


「わぁーい!考えておきます!じゃあ、失礼します!お母さんが、お見送りはお姉ちゃんだけにさせてあげなさいって言ってたから!」


 そう言うと、誠也は自分の部屋へ帰って行った……。

 いや……玲奈さん……なんという手回しの良さ。

 さすがは弁護士といったところか……よくわからんけど。


「も、もう〜……」


「フッ、できた弟だな。綾、またな」


「うん、今日はありがとね」


 そう言うと、綾が自然と目を瞑る。

 うん、いつ見ても見飽きない顔だな。

 流石に場所が場所なので、軽めのキスをする。


「あっ……」


「ん?どうした?」


「ううん!なんでもないの!」


「いや、しかし……」


「ホントになんでもないの!」


「そ、そうか……うん、じゃあな」


「うん!バイバイ!」


 俺は綾の家を後にし、家路を急ぐ。

 今日は、家族揃って食べる日だからな。

 遅れたら、麻里奈にどやされてしまう。


「お兄!お帰り!」


「おう、ただいま。親父は?」


「もう、帰ってるぞー」


「親父もただいま。お仕事お疲れ様」


「お父さん!お疲れ様!」


「ク、クゥー!母さん!今日も子供達は良い子だ!お父さんは、その言葉さえあれば頑張れる!」


「大袈裟だなぁ、お父さんってば」


「ククク、親父はチョロいな」


 ……まあ、親父には感謝しかないがな。

 こうして普通に過ごせるのも、親父のおかげだ。

 照れ臭くて言えないがな……。


 その後、夕食の話題として誠也の話をした。


「おっ?最近の子はすごいな……」


「だよな、俺もびっくりしたよ」


「えー?そうかなぁ?女の子なら普通だよ〜」


「なにぃ!?いたのか!?いや……まさか、今もいるのか!?お父さんは許さんぞー!!」


「麻里奈……すぐに連れてこい。まずは、俺を倒してからだ……!」


「もう!今はいないから!私は一般論として言っただけ!」


「ホッ……お父さん、明日会社行けなくなるかと思ったよ」


「フッ、親父安心しろ。俺もだ」


「うぅー……私、こんなんで彼氏なんかできるのかなぁ?出来ても紹介できないよぉ〜」


 その後も、楽しい家族団欒の時間を過ごすのだった。


 その日の寝る前に、俺は男連中に連絡をする。


 それぞれから返事が来て、空いている日が書かれている。


「おっ、たまたま明日全員空いてるのか……綾も明日は用事あるって言ってたし、ちょうど良いかもな」


 それぞれに送信し、了承の返事を確認して、ベットに横になる。




「いやー……綾とイチャイチャしたいが、中々難しいな……そりゃ、色々したいとは思うが止まらない自信がないし……学校の勉強やバイト、友達との付き合いも大事だしな……時間が足りない……そういえば……明後日は親父と麻里奈は遅いって言ってたな……よし、綾に連絡してみよう」


 ……どう送る……?

 何もしないから家に来ないか?

 ……いや、逆に変だな。

 何かするけど、家に来ないか?

 ……いや、どないやねん!


「困ったなぁ……進展はしたいが、無理矢理は御免だし……何もしないのもキツイし……でも進展しないことにはどうにも進まんし……八方塞がりだな」


 結局俺は『明後日、俺の家に来ないか?』というストレートなメールを送った。


 すぐに返事が来て『行きます!頑張ります!』と書いてあった。


「これは……オッケーってこと?いや、早計だったらマズイ。その時の様子を見ながら探ってみよう」


 俺はすぐには寝れずに、悶々としたままベットの上をゴロゴロするのだった……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る