第55話冬馬君は男子会をする
さて……体育祭まで、後1週間となった。
応援団の練習も進み、個人的には完璧に覚えたと思う。
そんなある日、俺は放課後に友達に相談することにした。
……非常に不本意ではあるがな。
ちなみに、綾は黒野と森川と遊びに行くようだ。
なので、俺もアキともう1人を連れて、ついでに遊ぶことにした。
「よう、冬馬。全く、女の子の誘いを断ったのいつ振りだ?」
「全く、いきなりですか……まあ、いいですけどね」
「すまないな、智也」
「おい、俺には?」
「お前にはない。たまには、女の子じゃなくていいだろう」
「お前、わかってる?それ、盛大なブーメランだからな?」
「あぁ?何が?」
「お前だって、綾ちゃんとばっかいるだろ!?」
「俺は良いんだよ!彼女だから!お前のは違うだろ!」
「全員、俺の彼女だ!同じだ!」
「ちげえよ!ハァ……相談するのやめとくか……?」
「やれやれ、懐かしいやりとりですね。昔は、面倒だと思ってましたが……今は、悪くないですね」
その後2人を連れて、俺の家まで行く。
地元は一緒なので、帰り道みたいなものだ。
「お邪魔します」
「邪魔するぜー」
「あいよ、いらっしゃい」
「冬馬の家は……2年ぶりくらいか。では、いいかな?」
「ああ、こっちだ」
「この間したけど、俺も挨拶しとくかね」
和室に入り、母さんの仏壇前に皆で座る。
「冬馬のお母さん、こんにちは。智也です、お久しぶりですね。覚えていますか?いつも僕達が騒いでいても、優しく見守っていてくれましたね。冬馬は相変わらず、意固地で律儀な男です。また、これから来ることもあるので、よろしくお願いします」
「どうも、この間ぶりです。俺が冬馬の面倒を見てやるんで安心してください」
「……智也、ありがとな。一応、アキも」
挨拶後は、俺の部屋に移動し、本題に入る。
「で、どうした?剛真はいないのか」
「あいつは、相談しても無駄な気がしてな」
「ふむ……どうしたのです?」
「なあ、いつ……彼女に手を出したらいいんだ?」
「ほう……?」
「はい?」
「いや、キスはしたんだが……そっからどうしたらいいかわからん」
「なるほど……それは、俺が適任だが……何故、智也まで?」
「そうですね。僕はそういう経験ないですよ?」
「いや、お前には別のことを……まだ、飛鳥に告ってないのか?」
こいつはずっと、飛鳥が好きだからな。
いわゆる、幼馴染ってやつだし。
「うっ!?……そうですね。それこそ、いつ言っていいやら……」
「俺はとっくに言ったものだと思っていた。ずっと2人でいたのは知っていたからな。だから、俺に来た時びっくりしたんだ」
「……飛鳥は、貴方が好きですから……今でも」
「ハハハ!」
「おいおい!聞いたか!?」
「ああ、アキ。面白いな」
「な、何かですか!?」
「頭は良いくせに、そういうところは相変わらずだな」
「飛鳥はな……お前が好きだと思うぞ?」
「は?な、なにを……!」
「俺は当て馬だよ。それくらいは、俺にもわかるさ。気を引きたいんだよ。というわけで、さっさと告れ。でないと、綾が本気にして不安がる。アワアワする綾は可愛いが、不安にさせるのは本意じゃない」
「何を根拠に……?」
「もし俺のことが好きなら、俺が関わるなと言ったところでやめるようなやつか?」
「……それは、僕も思っていました。なるほど……」
智也は思考の海に沈んだようだ。
こうなると、しばらくは帰ってこない。
「よし、これで良い。いつまでも、綾を不安にさせたくない。今回は俺に非があるから、手助けするために我慢したけどな」
「クク……相変わらずだな。ラブコメの主人公とかには向かないタイプだよな。ここは、引っ張るところだろうに」
「まあ、そうかもな。だが、そんなん知るか。俺は俺の道を行くまでだ」
「で、お前の悩みか……どこまでいきたい?」
「そりゃ……最後まで……だが、それはどうなんだ?まだ、二ヶ月なんだよ」
ただ綾が可愛すぎて、最近は色々とヤバイのである。
「律儀な男だな。皆、大体三ヶ月って言うのを守ってるのか。ていうか、まだキスしかしてないんだろ?」
「……し、舌は……」
「なるほど……じゃあ、次はオッパイか……」
「な、なんだと!?」
「いや、流れて的にな?しっかりと、段階を踏んだ方がいい。いきなり本番では失敗する可能性が高い。拒絶はされないと思うが、怖がったりしてしまうだろう。だから、少しずつ距離を詰めるんだ。これから、こういうことしますよと。それで、反応を見ろ。決して焦るな。本能を抑えつけろ。無理矢理だけはやめろ。お前ならできるはずだ。綾ちゃんのことが大切ならできるはずだ」
「アキ……ああ!やってやる!頼りになるぜ!」
「ふふふ、ようやく気づいたか。いいか?女の子にとって初めては、とても怖くて痛いものだ。どんなに相手が好きでも、心構えもいるし、いざするとなってもダメな子はいる。拒絶されても、残念という顔を出すな。本能を抑え、気にしなくていいと言ってあげるんだ」
「……なるほど、そうだよな。男と女じゃ違うよな。アキ!お前に相談して良かった!ありがとな!」
「おうよ……お前とこういう話ができるようになるとは……楽しいな。俺には男友達がいないからな。智也や剛真とは、お前を通じて仲良くなった。お前がいない間は、関わることもなかったしな」
「改めて、すまなかった」
「いいさ。お前はめんどくさがりつつも、俺を拒絶しなかった。お前は俺に嫉妬したり、陰口を言わない。俺そのものを見てくれる。俺が中学の時に、周りや先輩から人の彼女を寝とったと噂流れたろ?あの時、お前が言ってくれたんだよな。アキは女好きだが、そこまで腐った男ではないって……皆が信じたのに……俺がどれだけ嬉しかったか……」
「それは当然だ。親友を悪く言われて怒らないはずがなかろう」
「うっ、うぅ……!全く!良い話ですね……」
「おい、聞いてたのか?」
「ええ、途中からですが」
「俺らしくなかったか……でも、たまには男同士もいいもんだな」
「まあ、否定はしない」
「ええ、右に同じく」
この日は結局、3人で馬鹿みたいな会話をして盛り上がるのだった……。
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