第49話冬馬君は彼女の家でご飯を食べる

 さて、綾の家に到着したのだが……。


「あらあら!?こんなに素敵になって!綾、大変ね!」


「そうなの!加奈や愛子まで、良いかもとか言うの!」


「あら?やっぱり?モテモテになっちゃうわね……綾!お母さんが伝授を授けます!」


「うん!わ、私、頑張るよ!他の子に、ま、負けないんだからーー!!」


 何やら、2人は盛り上がっている……。

 俺は、綾以外に興味ないのだが……。

 こればかりは、言っても通じないということか。

 理解するまで攻めるとしよう。


「にいちゃん!!カッコいい!!スゲーー!!」


「ありがとな、誠也。とりあえず、俺とゲームするか?最近、遊んであげてないしな」


「え!?いいの!?やったーー!!」


「フッ……可愛い奴だ。で、何がいい?」


「んー……バイオハザー○がいい!お姉ちゃん、下手くそなんだ」


「あー……そういや、そうだったな……よし、いいだろう」


 2人で、ゲームに夢中になる。


「おっ!誠也、上手いな」


「ほんと!?へへ、やった……にいちゃんに褒められた」


「だが、まだまだだな……見てろよ……今!」


 四方から迫り来るゾンビを、巧みなコントローラー捌きで、殲滅する!


「スゲーー!!ノーダメージだ!」


「フッ、基本ソロプレイの俺を舐めちゃいかんぜよ」


「あー!ずるい!私も、冬馬君独り占めしたい!」


 ……なんつー可愛いことを……誠也とお母さんがいて良かった……。


「あら?でも、もう夕方よ?冬馬君は、帰らなきゃじゃない?」


「あっ……そっか」


「にいちゃん、もう帰るの?」


 ……可愛いのが、2人おる……!

 ……今日は、半休で親父がいるな……麻里奈は1人にならない。


「ちょっと、待ってな……あっ、もしもし。ああ、そうだ。綾の家で……あん?……出来た妹だこと……わかった、わかった。帰りにコンビニ行って、ハーゲンダッ○買ってきてやるよ……あいよ、じゃあ親父によろしく」


「冬馬君、どうしたの?」


「妹に電話したら『お兄の分のご飯ないからね、外で食べてきて』だとさ。どうやら、見越していたらしい」


「あらあら!じゃあ、一緒に食べましょうか!でも、材料を買いに行かないと……」


「お母さん!私と行こう!私、ご飯作る!!」


「え?綾が……?それは……いや、これも訓練が必要ね。良いお嫁さんになるには必要ね!じゃあ、行くわよ!」


「うん!冬馬君!誠也のことお願いね!行ってきます!」


 2人は返事も聞かずに、ドタバタと出かけていった……はい?


「にいちゃん、ごめんね。いつも、こんな感じなんだ」


「そうか……誠也、苦労してるんだな」


 中々、ハイテンション親娘のようだからな。


「へへ、僕は長男だからね。パパにも、お母さんとお姉ちゃんを頼むって言われたし」


 俺は、思わず頭を撫でてしまう。


「偉いな、誠也は。俺とは段違いだ。お前は良い男になるな。俺が保証する」


「ほんと!?僕も、にいちゃんみたいになれる!?」


「きっと、俺よりも良い男になれるさ。その気持ちを忘れなければな」


「うん!わかった!」







 その後、三十分くらいで、2人が帰ってきた。


「よーし、頑張るぞ!」


「あ、綾?お母さん手伝った方が……」


「冬馬君に!手料理を食べてもらうの!じゃないと!他の子に負けちゃう!」


「いや、だからな……」


「ダメだよ、にいちゃん。もう、止まらないよー」


「……まあ、これはこれで可愛いからいいか」


「ごめんなさいね、今日はまともな食事は出ないかもね……」




 誠也は、今のうちにお風呂に行った。


「そういえば……お名前を聞いていませんでしたね」


「あら?……そうね、お母さんじゃあれよね。玲奈って言うわ」


「では、今後は玲奈さんとお呼びして良いですか?」


「……いやだ、ドキってしちゃうわね」


「ちょっと!?お母さんまで!?」


「いやいや、冗談に決まってるだろ。綾、料理は集中してやった方がいいぞ?」


「う、うん……美味しくなかったら、ごめんなさい……き、嫌いにならない?」


「そのくらいでなるかよ。いいさ、どんなものでもどんとこい」


「と、冬馬君……よーし!頑張るぞー!」


「あらあら、良い男の子だこと」


 その後、玲奈さんと話していたのだが……。

……これは、見てられないな。

 俺は、キッチンにいる綾の背後に立つ。


「綾、失礼するぞ」


 綾の両手を、軽く握る。

 ……これ、後ろから抱きしめてるみたいだな。

 どうしよう……めちゃくちゃ良い匂いがする……。


「と、冬馬君!?こ、腰が……手、手が……」


「ほら、動かすぞ?とん、とん、とん……」


「う、うん……とん、とん、とん……」


「あらあら!初めての共同作業ね!写真撮らなきゃ!」


「ほら、出来た。綾は力が入りすぎだ。もう一回やるぞ?もっと力を抜いて……そうだ」


「で、出来た……綺麗に切れた!冬馬君、ありがとう!」


「おうよ。これでも、料理してるからな」


 ……よく耐えた、俺の下半身よ……。






 その日のメニューはカレーだった。

 え?カレーって失敗することあるの?


「頂きます……うん?普通に美味いぞ?」


「ほんと!?良かったぁー。今日はね!裏を見て作ったの!」


「綾……!成長したわね!冬馬君、ありがとうございます!」


「にいちゃん……!ありがとう!」


「えぇーー……そういうことか。まるで見ないで作ってたのか……」


 そりゃ、不味くもなるわな……。





 その後、食事とお茶を頂き、家に帰る時間になる。


「どうも、お邪魔しました」


「僕、お見送りするー!」


「誠也はダメよ。お風呂入ったんだから」


「私、お見送りするね!」




 玄関を出て、バイクのエンジンをかける。


「冬馬君、今日はありがとう。その……今までも」


「なんのことだか……俺は、俺のしたいようにしているだけだ」


「ふふ……いつものセリフだね。でも、不安だなぁ……」


「綾、こっちを見ろ」


 綾の顎に触れ、キスをする。


「え?あっ……んっ、ちょ、あっ……」


 ゆっくりと、唇を離す。


「わかったか?」


「ひゃい……わ、わかりましたぁ……す、凄かったぁ……」


「なら、いい。では、また明日な」


 急いでバイクに乗り、出発する。


 ………い、いかん!彼女の家の前で、なんつーことを!


 思わず、舌を入れてしまった……。


 ……付き合って、約二ヶ月か……もう少し、耐えてくれ……!


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