第47話清水さんは悩む~清水綾視点~

 今日から、いよいよ二学期が始まります。


 私は、昨日の夜からずっと楽しみにしていました。


 だって……冬馬君と一緒に学校行けるんだもん。


 ずっと夢だった……大好きな彼氏と一緒に、登下校することが……。




 冬馬君と電車で待ち合わせして、学校に行きます。


 周りからジロジロ見られたけど、前とは全然気持ちが違う。


 今は、幸せな気持ちでいっぱいです。


 冬馬君と手を繋いで、登校してるんだもん。





 学校の人たちも、ジロジロ見られたけど、冬馬君は動じていません。


 頼もしい限りです……す、素敵な彼氏です……。


 むしろ、私の方がドギマギしてしまいそう……。





 ……ただ、周りの人から言われてしまいました。


 清水さんには相応しくないとか。

 あんなのでいいの?とか。

 しまいには、俺の方がいいだろ?とか。


 私は、冬馬君がいいんだもん!

 冬馬君が、好きなんだもん!


 さらには、仲のいい加奈と愛子にも、あんなのがいいの?って……。


 勘のいい冬馬君のことだから、気づいてるかも……。


 やっぱり、黙ってた方がよかったのかな……?


 私がワガママ言ったから、冬馬君にも迷惑かけちゃう……。


 ど、どうしよう……冬馬君に、嫌われたくないよぉ……。





 でも、そんなある日……とても嬉しいことがありました!


 と、冬馬君が、私のこと大好きって……。


 あと、私に何回も告白してくる人に向かって、冬馬君が言ってくれた……。


 わ、私の中身が好きだって……!


 冬馬君は、きっと知らないんだろうな。


 私が、それがどれだけ嬉しいことなのか……。


 思わず、帰り道に大胆なことをしてしまうくらいに……。


 でも、冬馬君の貴重な照れ顔を見れたので、結果オーライなのです!


 冬馬君、口元に手をあてて、そっぽ向いちゃうんだもん……可愛いかったなぁ。


 ただ、帰った後恥ずかしさがこみ上げてきて、ベッドにうずくまってしまいました。





 そして、加奈や愛子も認めてくれ、学校の人達からも認知されてきました。


 私自身も念願が叶って、冬馬君とお昼を食べたり、登下校をしていました。


 私は、このまま上手くいくと思っていました。


 ……あの時までは……。





 ある日、愛子が教えてくれました。


「ねえねえ、綾。これ、知ってる?」


「え?……なに……?これ……?」


 そこには、冬馬君に対する罵詈雑言で溢れかえっていました。

 学校やめろ!や、清水さんと別れろ!や、死ね!などの言葉が……。


「あー、知らなかったかー。これ、学校の裏掲示板ってやつなんだけど。私も迷ったんだけどねー……ただ、そのうち嫌でも綾の耳に入るからさ……私が言った方がいいかなって……対策とかとれるじゃん?」


「ど、どうしよう!?と、冬馬君、知ってるのかな!?」


 こんなの聞いたら、冬馬君が傷ついちゃうよ!

 やっぱり、私が我慢すれば良かったんだ……ワガママ言っちゃったから………。


「どうかねー?そういうタイプじゃなさそうだし。てか、彼氏に言った方が良くない?で、綾に少しでもつり合うようにしてもらえばいいじゃん。アイツよく見たら、見た目はそんなに悪くないし」


「そんなこと言えないよ!だって、たださえ迷惑かけてるのに……」


 それに、冬馬君がちゃんとしようか?って言った時、私は断ってしまった。


 ……だって、そしたら冬馬君がモテちゃうもん。

 きっと、すぐにモテモテになっちゃうもん。

 私、ヤキモチ妬いちゃうもん。



 私は、悩みました……そんな時でした。


 冬馬君が、いきなり猛勉強を始めたのです。


 理由を聞いても、はぐらかされてしまいました。


 ただ、すぐにわかりました。


 だって、私と付き合って後悔していないって……。


 私が、どれだけ嬉しかったか……。


 だって、それを1番恐れていたから……。


 冬馬君に嫌われたくないもん……もう、こんなに好きなんだもん……。






 そして、無事にテストが終わりました。


 私は学校の中庭で、冬馬君に膝枕をしていました。


 私のために、冬馬君は頑張ってくれました。


 冬馬君は、きっとそんなこと言わないだろうけど……。


 私も、冬馬君のために何かしてあげたいな……。


 どうすれば、喜んでもらえるかな……?


 ……加奈から、色々聞いたけど……はしたないって思われたらヤダし……。





 そしてテスト明けの休日は、私の家庭の用事と、冬馬君の趣味の時間により、会えませんでした。


 少し寂しかったけど、きっと冬馬君はやりたいことを我慢して、一生懸命勉強したに違いないです。


 ……自惚れでないなら、私のために……。


 だから、そのくらいは我慢するのです!

 冬馬君は、とても良い彼氏さんです!

 私だって、良い彼女さんでいたいです!




 ただ……朝の登校まで断られた時は、少し凹みました……。


 私は若干意気消沈しながら、学校へ向かいます。


 すると駅の改札口で、加奈と愛子が待っていました。


 おかげで、冬馬君がいないことで何か言われるかと思いましたが、それもなかったです。


 その後学校に着き、順位表を見て、驚きました……。


「と、冬馬君、凄い……!5位……」


「何言ってんのかしら?綾、1位だからね?私は4位ね。まあ、いいでしょう」


「綾!こっち来て!」


 私は愛子に呼ばれ、その場を離れます。


「なに?どうしたの?」


「これ!見てみなって!」


 その裏掲示板には……やるじゃん!とか、5位か……とか、そういうことが書かれていました……もちろん、まだまだ悪口のが多いけれど……。


「アイツやるじゃん!」


「そうね。私達に頼む辺りも、中々出来た男ね。少し、羨ましいわね」


「え?なんのこと?」


「アイツさ、『俺はテスト発表日は一緒に行けないから、2人とも一緒に行ってあげてくれ』って。そうすれば、変な噂もたたないだろうって」


「私達に頭を下げてまでね……」


「そんな……どうして……?」


 その時でした。

 何やら、順位表の前が騒がしくなりました。


「なんだろ?」


「行ってみますか」


「そうね」


 3人で、騒ぎの場へ向かいました。


 ……そこで、私は固まってしまいます。


 だって、横顔がとてつもなくカッコいい人がいたから……。


 私がそんなことを思うのは、1人しかいません。


「と、冬馬君……?」


 振り向いた冬馬君を見て、私は思いました。


 ほら、こんなにカッコいい……。


 だから、断ったのに……。


 でも、私のためなのはわかっています……。


 ただ、違う悩みが出てきちゃいます……。


 もう!こんなのモテちゃうよー!


 私、ヤキモチ焼いちゃうよー!!

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