第32話2回目のデート

 今日は8月8日。


 綾との2回目のデート日である。


 今日は、綾の住む町で遊ぶことになった。


 今日は、俺が夕飯当番の日なので、14時から18時まで遊ぶことになった。


 ちなみに、俺はきちんとした格好をして、バイクで向かっている。


 髪や格好を整えるのは面倒だが、綾のためなら苦にならない。


 それに、綾は俺のために頑張って可愛くあろうとしている。


 ならば、俺もそれに応えなくては男がすたるというものだ。


 何より、綾に恥をかかせるわけにはいかない。


 俺は周りのことは気にしないが、「え!?あんなのが彼氏なの!?」とか綾が言われたら、困るかもしれないしな。


 もちろん、綾はそんなこと一言も言わないがな。







「冬馬君!こんにちは!」


「おう、綾。今日も、髪型も服装も可愛いな」


 今日の綾は、薄い白のロングスカートに、白のV字Tシャツに水色のパーカーを着ている。

 髪型も普段は後ろの方に下ろしているが、今日は右側だけシュシュでくくり、前の方に持っていきている。


「ほんと!?良かったぁー……嬉しいな。あのね!昨日、雑誌を見ててね!これなら、冬馬君好きかな?とか、可愛いって言ってくれるかな?って考えてたの!」


 ゴハッ!!マ、マズイ……!!

 被害は甚大である……!俺の精神が……!

 なんだ、この可愛い女の子は……!

 しかも、自然と萌え袖になってやがる……!


「そ、そうか。うん、そうだな」


 ダメだ!上手く言葉が出てこない!

 俺の方がタジタジになっている!!


「冬馬君?どうかしたの?」


 下から覗き込むな……!

 上目遣いしないでくれ……!


「いや、大丈夫だ。俺は至って冷静だ」


「そ、そう?なら、いいんだけど……もしかして、具合悪いとか?私、今日を楽しみにしてたけど……それなら……」


「待て、違うから。すまん、心配かけた。とりあえず、行こうか」


「うーん……うん、わかった!でも、無理しないでね?」


「ああ、それは大丈夫だ」


 何という優しい女の子だ……惚れ直してしまうな。

 俺はただ……その、なんだ、男としての本能が疼いただけなのに……。

 いかんな……綾が気を使わなくていいように、俺の精神を鍛えなくては!






 と、思った俺だが……早くも、ギブアップ寸前である。


「は、初めてだね……男の子と、2人でプリクラ撮るの……」


「……そうか、俺も初めて……というか、プリクラが初めてか」


 ていうか、まだこういうのあったんだな……。

 さて、何故ギブアップ寸前かというと……。

 今、腕を組んでいる……つまり、柔らかいモノが密着しているということだ。

 ……ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ……!

 俺の中の男よ!静まれい!!


「エヘヘ、こうやって腕組んで……か、彼氏と撮るの夢だったんだー」


「……なら、良かったよ。ただ、俺はよくわからないぞ?」


「冬馬君は、そのままでもいいよー。カッコいいもん。それに、これは私のワガママだもん。一緒に撮ってくれるだけで嬉しいよ?」


 すると、機械が動き出す。

 冬馬!!彼女の些細なワガママに付き合わずして、彼氏を名乗れると思っているのか!!

 よし!恥は捨てろ!!


 俺は綾に合わせ、必死にポーズをとる!

 ピースしたり、笑ってみたり、色々とやってみる!


「え!?冬馬君!?」


「シャッター押すの早すぎないか!?」


 そしてあっという間に終わり、俺は一息つく。

 ……フゥ、なんとか乗り切ったか。

 さすがに、落書きはお任せすることにした。


「エヘヘ……撮れた」


「俺、変な顔してるな……綾は、こんなに可愛いのに」


「え!?そ、そんなことないよ!冬馬君もかっこいいよ!」


「そうか?うーん、どういう顔していいかわからん」


 その後、デパートでウインドウショッピングをすることになった。


「あ、あの……手を……繋ぎたいなって……」


「ああ、いいよ。ほら」


「うん!」


 2人で手を繋ぎながら、デパート内を散策する。

 ただそれだけのことで、何故こんなにも楽しいのだろうか?

 なんとも言えない、不思議な感覚だな……。


「洋服見てもいいかな?あ、でも男の人には退屈かな?」


「いや、大丈夫だ。妹で慣れてるからな。それに、綾と一緒なら退屈なことなどない」


「冬馬君……その、私もです……」


 とある店に入り、試着をすることになったのだが……。

 言葉では言いつつも、若干の不安を抱えていたが、杞憂だったようだ。

 だって、めちゃくちゃ可愛いから、ずっと見ていられる。


「これ、どうかな?」


「可愛い」


「え?いや、その、嬉しいんだけど……」


「すまん、頭がそれで埋め尽くされた。似合っているぞ。長くて綺麗な脚してるから、ホットパンツもよく似合う」


「綺麗……エヘヘ、嬉しい……その、冬馬君は……どういうのが好きかな?」


「綾が好きだな」


「えぇ!?ち、違くて、いや、違わなくて……はぅ……」


「まあ、綾が着てればなんでも好きだが、そういうことではないよな。うーん……意外とシンプルが好きかもな。夏だったら、ミニスカートにV字Tシャツとか。ワンピースだけとか。ちなみに、今の格好も好きだよ」


「そ、そうなんだ……シンプル……うん、帰ったら研究しなきゃ……」


「おーい、帰ってこーい」


「はぇ!?き、聞いてたかな……?」


「いや、聞こえなかったよ」


 いや、聞こえていたけどな。

 ここは、これが正解だろう。

 それにしても、俺のために……可愛いなぁ。





 その後、カフェに行ってお喋りをする。

 そして帰る時間が近づくと、綾がこんなことを言う。


「次、いつ会えるかな……?」


 帰したくない。

 ……いやいや!違うから!

 くそー、可愛いヤツめ……!

 俺を、何度殺す気だ……!


「明日は1日バイトだしな……明後日なら平気だと思う」


「あ、あの、その、えっと……」


 綾の顔が、どんどん紅く染まっていく。

 今にも、湯気が出そうなほどに。


「どうした?何でも言ってくれ。きちんと聞くから」


「冬馬君……うん!あのね!わ、私と一緒にプールに行って欲しいの!」


 ……どうやら、付き合い始めてからの、最大のピンチを迎えたようだ。


 俺は、もう、ダメかもしれない……。




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