第26話決戦は金曜日~後編~

 ~清水綾視点~


 今日は、いよいよ花火デート当日。


 私はお母さんに頼んで、浴衣を着せてもらっています。


「お母さん!早く早く!遅刻しちゃうよー!」


「何言ってるの?まだ、全然早いじゃない……よし、これでいいかしらね」


「出来た!?鏡、鏡!!」


 鏡で自分を見て確認をします。


「へ、変じゃないかな?水色って私に似合うかな?」


「大丈夫よ、よく似合ってるわ」


「髪型平気かな?確か、シニョンスタイルって言うんだよね?」


「はいはい、平気よ。可愛い、自慢の娘よ」


「吉野君、どう思うかな?」


「それは本人から聞きなさい」


「……そうだね、お母さん。私、もう行きたい!」


「ちょっと!?まだ、時間には早いわよ!?」


「だって、待てないもん!それに、待ってる間もデートだもん!」


「まあ、わからないでもないわね……じゃあ、車出すわね」


 お母さんに、待ち合わせの駅まで送ってもらいます。


「お母さん!ありがとう!」


「はいはい……しっかりやるのよ?」


「うん!」


 私は逸る気持ちを抑えきれず、改札口に向かいます。


 うぅー……すっごい見られている……私はまわりの人達に見られています……。


 いつもなら嫌だけど、今は良いの……だって、今は幸せな気持ちだから……。


 吉野君、似合ってるって言ってくれるかな?


 吉野君、浴衣で来るって言ってたけど、カッコいいんだろうな……。


 そんなことを考えていたら、あっという間に時間は過ぎていきました。


 すると、吉野君がこちらに歩いてきました。


 ……浴衣姿、凄いかっこいい……吉野君は姿勢良く、ゆっくりと歩いてきます。


 ……うぅー、余裕あるなぁ……私ばっかり、ドキドキしてるのかな……?


 ……しかも、30分前に来てたことがばれてしまいました……恥ずかしい……。





 その後、2人で電車に乗ったのだけど……。


 ど、どうしよう!?壁ドン状態です!!


 わ、私が潰されないように、守ってくれています!


 私臭くないかな!?お風呂入ってきたけど……熱い……。


 そ、それに……吉野君、じっと見つめてくる……。


 や、やっぱり変かな!?気合い入りすぎかな!?


 ……感想もくれないし……この色と髪、嫌いだったかな?


 ……よし!電車降りたら、勇気を出して聞いてみよう!


 電車を降りる時、吉野君は紳士でした。


 自分が先に降りて、私に手を差し伸べてくれました。


 手と手が触れた時、心臓が……どうにかなりそうでした……。


 その後、勇気を出して聞いてみました。


 そしたら!褒めてくれました!似合ってるって……嬉しい……!!


 ニヤニヤするのを抑えるのに必死です!


 その後、沈黙が続いたけど、特に気まずくもありません。


 むしろ、落ち着けるくらいに……ドキドキはずっとしてるけど……。


 何気ないことだけど、歩くスピードも、私に合わせてくれてる……。


 もうっ!ドキドキしっぱなし!!





 遊園地に着くと、吉野君が案内してくれました。


 ひと気のない場所で、穴場的なところがあるって。


 ……なんで、ひと気のない場所……?


 あれかな?吉野君、人混み嫌いって言ってたからかな?


 でも、これはチャンスです!


 花火見終わったら、吉野君に告白します!!




 着いてからすぐに、花火が打ち上げられ、夜空を染め上げました……。


 ……綺麗……こんなに綺麗だったかな……?


 やっぱり、吉野君と見てるから……?




 そして花火が終わり、いよいよ告白しようとしました。


 私は覚悟を決めて、言葉を発しましたが……吉野君に遮られてしまいます。


 そして、なんだろ?と思った次の瞬間、信じられない言葉が、吉野君の口から……。


 好き……?誰が……?吉野君が、私を……?


 気がつけば、私は涙を流していました……。


 どうしよう……すぐに返事したいのに、止まらないよぉ………。










 ▽▽▽▽▽▽


 ~冬馬視点~



 告白したのはいいのだが……泣かれてしまったな。


 こういう時って、どうすればいいんだ?


 ……だが、放っておくわけにはいかないな。


 俺はゆっくりと歩いて、清水に近づいていく……。


「清水、言葉にしなくていい。ただ、断るなら首を横に振るか……受け入れてくれるなら、頷いてくれ」


 清水は、これでもかというほど頷いた。


 ……そうか……生きた心地がしなかったな。


 清水からの好意は感じていたが、それとこれとは話が別だからな……。


 俺は我慢しきれずに、清水を抱き寄せる。


 清水は、俺の腕の中で泣き続ける……。






 そして、時間が流れる……。


「グスッ……もう、大丈夫……ありがとう……」


「そうか……」


 俺は名残惜しいが、清水を離す。


「エヘヘ……こんなに嬉しいことあるんだね……えっと、吉野君……私も、貴方が好きです……その……彼女にしてください……」


 可愛いな!!


「可愛いな……」


「え……?か、可愛い!?」


 あ!口に出てしまった!

 ……まあ、いいか……実際、可愛いし。


「ああ、可愛い。俺の彼女は、可愛くて素敵な女の子だ」


「ふぇ!?え!?……あぅぅ……」


 耳まで真っ赤になってしまったな……可愛いな。

 ……いかんな、止まらんな。

 これは、己の自制心と戦わなくてはいけないな……。


「……とりあえず、座るか?」


「う、うん……」


 場所を移動して、ベンチに座る。


「…………」


「…………」


「「あの……」」


「…………」


「…………」


「清水……」


「はい……」


「これから、よろしくな。一応、言っておくが……俺の愛は重たいぞ?逃げるなら、今のうちだぞ?」


「え!?に、逃げません!!どんとこいです!」


「ハハ!そうか!どんとこいか……ククク」


「わ、笑われた……!そ、その、よろしくお願いします……」


 こうして、俺と清水は恋人になった。


 果たして俺は、彼女の可愛さに自制心がもつだろうか?


 ……頑張ろう……大事にしたいからな。

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