冬馬君の自制心は……
第27話冬馬君は彼女が可愛いが止まらない~前編~
さて、あの日から一夜明けて、翌日となった。
あの後は、夜も遅いので、清水のお母さんが遊園地まで迎えにきてくれた。
そして俺も乗せてもらい、有り難いことに家の近くまで送ってもらった。
……正直にいうと、助かった。
あのままだと、俺の自制心がもちそうになかった……。
清水の電話が鳴ったから良かったものの、結構危なかったな……。
まあ、名残惜しかったことは否定できない。
だが、一日経ったので、なんとか整理をつけた。
まずは、一方的に気持ちを押し付けない。
清水の気持ちを大事にする。
なるべく、男としての本能を抑制する。
男と女では色々と違うしな……。
とりあえずは、こんなところかな。
あとは、追々考えるとしよう。
……正直、自制心には少し自信がもてないがな……アイツ、可愛すぎだろ……。
そんな俺は今、バイクに乗り、清水の家に向かっている。
今日は、付き合ってからの初めてのデート日だ。
昨日家に帰って、「明日会えるか?」とメールしたら、清水からほぼ同時にメールがきて、「明日時間あるかな?無理ならいいの」と書いてあった。
なので、直接電話をした。
そしたら、何か言いたそうな空気を感じたので、聞いてみた。
すると、遠慮がちにバイクの後ろに乗りたいなと言われた。
俺はすぐに了承し、今に至るというわけだ。
「さて、着いたな……」
インターホンを鳴らそうとしたら、ドタドタドタ!!と音が聞こえた。
「キャー!お母さん!来ちゃったよー!?」
「ほら!だから言ったじゃない!」
「だって、服が決まんないよー!」
「もう、それでいいじゃない!」
「だって初デートだよ!?可愛いと思って欲しいもん!」
……丸聞こえなのだが?
そして、既にその発言が可愛いのだが?
既に、俺の胸が高まっているのだが?
すると、玄関扉が開く。
「冬馬さん!こんにちは!」
「おう、誠也。こんにちは」
「あのねー、お母さんが、とりあえず上がってもらってって。お姉ちゃん、準備できてなくて……ごめんなさい」
「いや、謝ることはない。女子とは、そういうものだ」
俺は妹がいるから、身に染みている……。
「やっぱり、冬馬さんはカッコいいね!」
「ありがとよ。では、お邪魔させてもらおうか」
バイクを降り、清水家に入る。
「あら、吉野君。いらっしゃい。ごめんなさいねー」
「いえいえ、うちにも妹がいますんで」
「あら?理解力のある彼氏を持って、綾は幸せ者ね!」
「どうでしょうね?あんな可愛い子が彼女の俺の方が、数倍幸せ者だと思いますよ」
「……これは、破壊力あるわね……あの子、心臓もつかしら?」
「ねえねえ!時間あるなら、僕のプレイ見て!に、にいちゃん!」
「にいちゃん?」
「だ、ダメですか?お姉ちゃんの彼氏になったって聞いたから……」
……この兄弟は可愛いな。
こんなの、断れるわけがない。
まあ、大事な子の家族は、俺にとっても大事なものだしな。
「いや、ダメじゃないさ。好きに呼ぶといい」
「ホント!?わーい!にいちゃんが出来たー!」
「あらあら、喜んじゃって……ありがとね、吉野君」
「いえ、気持ちはわかりますから」
俺が、真司さんにそう思うように……。
その後、誠也のプレイを見て、色々とアドバイスをする。
「こいつがねー、倒せなくて……アドバイスほしくて……でも、1人で倒したいんだ!」
「おお、偉いな。俺に頼ろうとしない、その気持ちが大事だ」
「へへ、褒められた……」
すると、部屋のドアが開き、清水が入ってくる。
「ご、ごめんなさい!待たせちゃって……!」
そこには、青のデニムにV字の白Tシャツ、上に黒いカーディガンを着た可愛い女の子がいた。
「気にしなくていい……それにしても、可愛いな」
「え?……っ!?」
清水は言葉にならないのか、口をパクパクしている。
「うん、よく似合っている。では、行くか」
「はぅ……あ、ありがとう……嬉しい……」
「あらあら、大変ね。気をつけてね」
「にいちゃん、またねー!」
「お邪魔しました。安全運転を心がけ、帰りもきちんと送り届けます」
「い、行ってきます!」
清水家を出て、バイクの前にくる。
「吉野君、このバイクはなんて言うの?」
「これは、カワサキの中型バイクだ。俺なんかには買えるわけがないんだが、真司さんが格安で譲ってくれたんだよ」
俺が譲ってもらったのは、400CCのカワサキのバイクだ。
基本ベースは黒で、ところどころ赤が混じっている。
「へぇー!これが、有名な!私でも、知ってるよ!」
「だろうな……ところで、相談なんだが……」
まずは、これからだろうな……。
「……名前で呼んでもいいか?」
「え?……え!?う、うん、いいよ……」
アワアワして、可愛い奴だな。
「じゃあ、綾。俺の名前は?」
「……冬馬君……です……」
真っ赤になって……可愛いな。
うん、ダメだな……こればかり出てくる。
「よし、これからはそれでいこう」
「は、はい……」
俺はバイクに跨り、メットを差し出す。
もちろん、グローブやプロテクターの準備も万端にしてある。
あまりスピードは出さないが、万が一のことがあるからな。
「ほら、綾。これを被るといい」
「ありがとう……と、冬馬君……」
照れ顔……これは……破壊力がエゲツないな……。
今すぐに抱きしめたいくらいだ。
「よし、準備できたな。では、後ろに乗ってくれ」
「う、うん!こういうの、憧れだったの!」
そういい、満面の笑顔を見せてくる。
「うん、笑顔も可愛いな」
「………」
いかん!口から出てきてしまう!
あまり、言い過ぎも良くないか……自重しよう……出来る限り。
「おーい、帰ってこーい」
「あ、あれ!?き、気のせいかな?ずっと可愛いって言われてる気が……」
「ああ、ずっと言ってるぞ。俺の彼女は可愛いとな」
「あぅぅ………」
「悪かった、控えるようにするよ」
「わ、悪くないよ!嬉しいもん!ただ……ちょっとドキドキしすぎるだけで……」
「大丈夫だ、俺もドキドキしている。ほら、乗りな」
「え!?と、冬馬君も……?そ、そうなんだ……エヘヘ。そ、それじゃあ失礼するね」
乗るのを確認し、エンジンをかける。
そして、ゆっくりと走り出す。
「よし、しっかり掴まってろよ?」
「うん!」
綾は、ぎゅっと俺にしがみつく。
……柔らかいものが!!ヤバイ!!なんだこれ!?
落ち着け!乱れるな!安全運転だ!
……俺の自制心は、早くも崩れ去ろうとしている……。
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