静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら

冬馬君は静かに過ごしたい

プロローグ

 俺の名前は、吉野冬馬。


 桜田高校に通う、17歳の高校2年生だ。


 身長175センチ、体重65キロ。


 中肉中背で、容姿は至って平凡……自分ではそう思っている。


 黒の長髪を、無造作の状態にしている。


 特徴といえば、運動神経が良いくらいだ。


 普段は、野暮ったい眼鏡をかけている。


 そして自他共に認める、ぼっちである。


 ただし、生来的なものではない、とある事情からこうなったのだ。


 1年の時は上手くいき、ぼっちであることを確立した。


 虐められもしない、弄られもしない、もちろん人気者でもない。


 所謂、空気的存在だ。


 ああ、そんな奴もいたっけな……と言われる、絶妙なポジションだ。


 今の学校には、暗黙の了解としてカースト制というものがある。


 リア充グループ、非リア充グループ、普通グループ、などがあるらしい。


 その中にも天然リア充、努力型リア充、キョロ充などがあるらしいが、よくわからん。


 俺は、そのどれにも属していない。


 所謂、世間一般で言われる非リア充グループと同じような趣味は持っている。


 漫画、ゲーム、ラノベなどだ。


 俺自身は認めていないが、大多数の人がオタクと蔑むものだな。


 だが、俺はそこにも属していない。


 理由は簡単だ。


 誰かと共有する気がないからだ。


 俺個人としては、趣味とは1人で楽しむものだと思っている。


 カラオケ行けば、ある程度は相手に合わせないといけないし。

 好きに歌わせろや!いいじゃんか!男が、女性アニソン歌っても!


 ゲームだったらネタバレされたり、自分のオススメは〜とか言われる。

 ふざけんなよ!?殺すぞ!?オススメだと!?そんなのは、自分で決める!


 漫画やラノベでも、次はこいつが〜とか、この伏線が〜とか言われる。

 あぁ!?舐めてんのか!?埋めるぞ!?それを楽しみに生きてんだよ!



 フゥ……つい、暑くなってしまったな。


 まあ、そもそもリア充の定義からして疑問なのだがな……。

 リア充友達が沢山いれば、リア充?

 容姿の良い恋人がいたら、リア充?

 人気ある部活やってたら、リア充?

 お洒落なバイトしてたら、リア充?

 他の友達より金持ちなら、リア充?

 みんなより勉強できたら、リア充?


 容姿の良い恋人がいなかったら、非リア充?

 リア充の友達沢山いなかったら、非リア充?

 人気ある部活やってなかったら、非リア充?

 お洒落なバイトしてなかったら、非リア充?

 他の友達より金持ちじゃないと、非リア充?

 みんなより勉強できなかったら、非リア充?



 まあ、色々とあるだろう。

 だが、俺は言いたい。

 そんなの知るかーーー!!!

 人にどう思われるかじゃない!!

 自分がリア充だと思ったなら、それが真のリア充だ!!

 他人の価値観で決められた定義など、知ったことかーー!!


 フゥ……また、熱くなってしまった。

 矛盾しているように聞こえるかもしれないが、別にリア充を否定しているわけではない。

 ただ、そっちもリア充。こっちもリア充。それでよくないかと思うわけさ。

 人それぞれ好きなことや、得意なことは違うのだから……。

 何故趣味や得意なもので、差別される?


 ……まあ、何が言いたいかというと、幸せの形は人それぞれという事だ。

 彼氏彼女作ってイチャイチャしたい奴もいるだろう。

 部活に汗を流したい奴だっているだろう。

 漫画やゲームをするのが一番という奴もいるだろう。

 人それぞれでいいじゃないか。

 何故優劣をつけるのか、常々疑問に思う。


 長々と話してしまったが、大事なことなのだ。

 ここで、俺が幸せを感じるリア充生活を教えよう。


 まずは、1人でいること。

 誰にも邪魔をされずに、ゲームをする。

 静かな喫茶店などで、漫画やラノベを読むこと。

 1人カラオケで、アニソンや、ジャニー◯などを歌うこと。

 学校の休み時間に、携帯小説を読むこと。

 家に帰り、ポテチを食べながら、ネトゲをすること。

 まあ、まだまだあるが、とりあえずはこんな感じだな。


 ただ、勘違いをしないで欲しい。

 俺だって、彼女や友達が欲しくないわけではない。

 イチャイチャだって、健康な高校生男子ですから、できることならしたいさ。


 ……なんだ、こいつ?言ってること違くね?

 今、貴方はそう思ったかもしれない。

 だが、違くないのだ。

 今から、大事なことを言おう……。

 彼女や友達は欲しい……


 つまりだ……友達や彼女などがいると、時間をとられるわけだ。

 その分、自分の趣味の時間が減る……俺は、それが嫌なのだ。

 只でさえ、趣味のためにバイトしたり……。

 父親にゲームばっかりしてるからだと言われぬように、勉強もしているというのに……!

 これ以上の時間を割けるかーー!!


 フゥ……いかんいかん。

 つい、熱い想いが溢れ出てしまったな……。

 まあ、そんなわけなので、俺は好きでぼっちをしているのだ。




 だが、そんな俺は……今、最大のピンチを迎えている……!


 俺は今、学校の教室で自分の席に座り、携帯小説を見ている。


 そんな俺に、さっきから話しかける人がいる。


「あの……吉野君、聞いてるかな……?」


 彼女の名は、清水綾。


 身長は165センチほどで、スタイル抜群。


 お尻はぷりっと、胸もDはあるらしい。


 手足は長く、容姿端麗だ。


 鼻筋がとおり、くりっとした大きい眼。


 はちも小さく、顔も小さい。


 口元も整っており、片えくぼがある。


 傷みなど一切ない、綺麗なロングの黒髪。


 性格も明るく、優しくてみんなの人気者だ。


 なので、彼女は県内でも有名な美少女だ。


 告られたり、スカウトされた数は数えきれない。


 俺は今、その美少女に付きまとわれている……。


 俺は、周りの男子からの射殺すような視線を感じながら思う……。


 どうして、こうなった?


 ……いや、原因はわかっているんだ……。


 さて、どこから話せばいいだろうか……。


 あれは、この間の土曜日のことだった……。






















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