賽の目ヒガンの純愛

ミニマル

プロローグ

 ヒガンは花畑の前に立っていた。ヒガンバナの真っ赤な花畑に。


 ヒガンは長い間眠っていた。気が遠くなる程。


 ヒガンは目の前の花畑に完全に魅せられていた。無理もない。


 ヒガンは花畑の一部に手を伸ばす。余りに美しいがために自分のものにしようとしたのだろう。


 「だめだよ、ここのヒガンバナを勝手にとっちゃ。」


 青年の声が鳴り響く。その声はヒガンにとって、とても魅せられる声だった。


 「ここのヒガンバナは、死者の魂が宿っているんだ。無闇に取ると、呪われてしまうよ?」


 そう言って青年は、ヒガンの手を取る。後ろから抱き寄せるように引き留めると、


 「‥それに、君の手は綺麗だ。汚すもんじゃないよ。」


 青年はヒガンを離し、

 

 「さぁ、もういくといい。君にここはまだ早い。」


 ヒガンが振り返り、青年の顔を見ようとすると、青年は跡形もなく消えました。


 ヒガンは、目の前の花畑をじっと見つめます。


 ずっと、ずっと、見つめます。

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