219話 セレナ

みんな頑張ってる……。


わたしも戦いたい。


でも、許可されたのは最初の大技だけ。


回復もあるし、まだまだ先は見えない。


魔力が無くなったら、わたしは役に立てない。


だから……我慢すること、それがわたしの仕事だ。






「ねえ! やばいんじゃない!?」


「結衣さん! 落ち着いてください!」


わたし達二人の役目は、後方にいて皆をフォローすること。

傷を癒したり、敵に隙を作るための牽制魔法を仕掛けたり。

または味方の隙をついて攻撃してくる敵の邪魔をしたり。

でも、それは……出来るだけ控えなくてはいけない。

魔法使いにとって、魔力総量の調節が最も大事なことだから。

間違っても、戦いの最中に無くしてはいけない。


「でも! 死んでからじゃ……!」


「それでもです。わたし達は、一番冷静でないといけないのです。魔力をなくしたわたし達はあまりに無力です。さらに敵を引きつけると足手まといになり兼ねませんから」


「あ、あなた! よくそんなに冷静に! 大事な仲間……ごめんなさい……手から血が流れるわね」


「えっ?」


ふと手を見ると……爪が食い込んで血が出ていた。

どうやら、わたしもまだまだみたいです。

これでは、コルン師匠に怒られちゃいますね。

魔法使いとは、常に冷静にあれと言われたのに……普段の姿はともかく。


「すごいのね、あなた達って。でも、そうよね……七年くらい一緒にいるんだっけ?」


「ええ、そのくらいになるかと思います」


「短く聞こえるけど、こんな世界じゃ……密度は高そうね」


「はい、そう思います。その……アレス様と結衣さんに負けないくらいには」


「えっ?……ああ、そういうことね。ふふ、私はお風呂に入ったことあるもん」


「ええっ!?」


「ち、小さい頃の話よ!? それと……ありがとう、私の中の和馬さんを許してくれて……あの人を消さないでくれて。あなた達にとっては、良い気分じゃないでしょうに」


「そんなことないですよ。和馬さん……その人の記憶があったからこそ、今のアレス様が形成されたんだと思います。それに、わたしも救われました」


「そう……私も救われたわ」


「じゃあ、一緒ですね?」


「ふふ、そういうことね」


この方をリラックスさせるのも、アレス様に任されたわたしの役目ですね。






その後、ヒルダさんの参戦、ゼトさんやライル様の参戦で状況が変わる。


「あとはあいつだけね。ここは私に任せて貴女は行きなさい。回復くらいなら私が出来るし、麻薬を取り除くのは私の方が得意だわ」


「で、でも……」


「護衛もいらないわ。ありがとね……貴女は、大事な人のところに行って。後悔してからじゃ遅いから」


「……はい! ありがとうございます!」


あの人は、一度大事な人を失ってる。


強い人……わたしには耐えられるかわからない。


アレス様の、本当の気持ちはどうなんだろう?


……この戦いが終わったら、聞いてみよう。


大好きなあの人に、後悔だけはさせないように。


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