174話 出会う

 その姿を知識に例えるなら、まさしく天使そのものだろう。


 整っているが能面のような顔、背中には四枚の翼があり宙に浮いている。


「ヒャハハ! 腐っても聖騎士ですねぇ! きちんと女神の使徒になれましたか!」


「マオウ……コロス」


「貴様……自分の部下を……」


「ひひっ! 役立たずなのですから、これくらいは役に立ってもらわないと……おっと、いけません。それでは、ひとまず下がるとしましょう」


「待て!」


「アレス様!」


 奴を追おうとした俺を、オルガが引っ張る——その次の瞬間、俺の目の前を光が通り過ぎる!


「なっ!?」


「コロス!」


 どうやら、こいつが光のレーザーを放ったようだ。


「では——また会いましょう!」


「……逃げられたか」


「アレス様、どうしますか?」


「こいつの相手は俺がする」


「では、僕は護衛に専念いたします」


 目だけ合わせ、それぞれ行動を開始する。


「シネ!」


「闇よ!」


 光のレーザーを、闇の衣で相殺する!


「ガァァ!」


「シィッ!」


 光の剣と、魔刀が打ち合う!


「……これの相手をするのは、他の奴にはきついな」


 そのスピード、パワー、光魔法に、光の剣……。

 カグラやオルガでも、手こずるだろう。


「マオウゥゥ!!」


「その腕が邪魔だ!」


 俺の刀が、奴の腕を斬りとるが……。


「何!? ……再生するのか」


「コロスコロス……コロスゥゥ——!!」


「厄介だな……いや、その為に鍛えたんだ」


 こいつは、俺が相手をするのが一番良い。

 もう——誰も失いたくないから。

 その為には——俺自身が強くなるしかない!


「こい——もう、誰にも俺の大事な人を傷つけさせはしない」


「ガァァ!!」


 刀を下段に構え、敵を待ち……。


「シネェェ!」


「お前がな——黒炎刃」


「ヒヒッ!? はへぇ? ……ァァァァァ!」


 俺の居合によって胴体を真っ二つにされた奴は……再生することはない。

 何故なら、再生より早く……黒炎が、その身体を侵食しているからだ。

 そして、そのまま——消滅する。


「ふぅ……流石に、闇魔法と炎魔法の両方を使うのはしんどいか」


 だがこの刀と、この力があれば……。


「アレス様!」


「アレス!」


「主人殿!」


 敵を倒したのか、三人が駆け寄ってくる。


 そうだ、この力があれば……この大事な人たちを守れる。


 今世で出会った、俺の掛け替えのない存在の人達。


 その時、崖の上から……何者かの声が聞こえてくる。


 ……まさか、その声は……。


「魔王! いたわね!」


「お、おい!? まだ戦うなって言われたろ!?」


「うるさい! 私は——あいつを許さない!」


「……結衣?」


 視線を見上げた先には……前世の大事な人がいた。

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