70話成長の証

 ゴブリン、ゴブリンジェネラル、オーク、オークメイジが大量に出現する。


 まずは、穴をあける必要がある。


 集大成ということは、セレナとの鍛錬も見せる時。


 さて、やってみるとしよう。


「セレナ! 俺に合わせろ!」


 魔力を高め、起動段階に入る。


「はいっ!」


「一!」


「二!」


「「 ファイアートルネード!!」」


 俺の炎と、セレナの風が混ざり合う。

 それが、魔物たちを飲み込んでいく。


「グギャー!?」


「グォォー!?」


 高位魔法使いのみが使用出来る合成魔法だ。

 魔力コントロールが難しいので、よっぽど息が合わないと不可能でもある。


「カグラ!」


「行きますっ!」


 止むと同時に、俺とカグラは敵陣に突撃をする。


 ……なのだが、俺はいらなかったかな?


 先手必勝でかました効果もあるだろうけど……。


「これは、相手が可哀想になってくるな」


「グギャ!」


「効かないのだっ! 邪魔だっ!」


 盾、または鎧にて、攻撃を弾く。

 そして大剣により一撃で、敵を粉砕する。


「コハァ!?」


「ゲゲゲ!?」


 時には盾で敵を押しつぶし、両手が塞がっていれば、頭突きをかます。

 俺が何をするわけでもなく、敵が減っていく。


「あはははっ! もっとかかってくるのだっ!」


 ……恐ろしい子だ。

 が、少し危うい感じもある。

 強すぎるが故か、高揚を抑えきれていない。

 これは、俺がどうにかしなくてはいけないか。


「セレナ! 俺達の周りの敵に魔法を!」


「はいっ! ……切り刻め! ウインドスラッシュ!」


 風の刃がいくつも出現し、敵の手足を斬りとばす!


「ゴバァァ!?」


「ァァァ!?」


 敵が転げ回っている今がチャンスだ。


「おい」


 刀の鞘でカグラの頭を叩く。


「痛っー!? な、何をするのですかっ!?」


「周りを見ろ」


「へっ? ……あ、あれ?」


 俺達の周りには魔物が溢れかえっていた。


「一人で突っ走るなと言ったよな?」


「ご、ごめんなさいなのだ……うぅー」


「頼りになる婚約者が、ここにいるんだが?」


「……自画自賛ですか?」


「間違ってるか?」


「いいえっ! えへへ、婚約者……」


「わかったなら、しっかりと周りを見ること。良いな?」


「はいっ!」


「クク……娘は、良き相手に巡り会えましたな」


 クロイス殿がいつの間にか、側に来ていた。


「ち、父上!?」


「これは、クロイス殿」


「様子を見て、私が説教をしようかと思いましたが……必要ありませんでしたな」


「あぅぅ……」


「カグラ、お前が諌められてどうする? その方が、お前の愛する人であり、掛け替えのない主君なのだろう? ブリューナグ家の者として、もっとしっかりせんか」


「は、はぃ……」


「クロイス殿、その辺で。良いんですよ、俺はそんなところも好きですから」


「ひゃい!?」


「くははっ! こいつは1本取られましたなっ! では、私は戻るとしましょう」


 そう言い、去っていく。


「カグラ」


「す、好きって言われたのだ……えっ? なんなのだ、この気持ち……?」


 仕方ないので、再び鞘で殴る。


「あいたっ!?」


「さあ、行くぞ。まだ試験は終わっていない」


「うぅー……アレス様はずるいのだぁ」


 今度は俺が前に出て、敵を斬り捨てる。


 ある程度すると、ゴブリンジェネラルが出てくる。

数年前には苦戦した相手だが……。


「ゴァァァ!」


「遅い」


 迫る爪を上段から斬り落とす。


「ゴァ!?」


「消えろ」


 すぐに切り返し、逆袈裟にて首を飛ばす。

 よし、刀身が以前よりあるから楽に斬れる。


「す、スマートなのだ」


「カグラと違って、俺には体力がないからね」


「えっと……褒められてる?」


「ああ、もちろんだ」


「なら良いのだっ!」


「フッ、可愛い奴」


「な、なんでなのだっ!?」


 カグラを前に行かせないように、敵に囲まれないように動き続ける。


「カグラちゃん! アレス様! 下がって!」


「ああ!」


「了解なのだっ!」


 俺たちが下がったタイミングで……。


「全てを飲み込め——タイダルウェーブ!」


 大津波に魔物たちがのまれていく……。

 それでも生き残った魔物は……。


「シッ!」


「ギャ!?」


「ブホッ!?」


 連続した突きにより、オルガが仕留めていく。

 それも、全て急所を突いて。

 これは……また腕が上がったな。


「拙者も!」


「待てって。いくら体力おばけでも、精度は下がってるはずだ。一度落ち着きなさい」


「むぅ……わかったのだ」


 周りを見てみると……。


「ロレンソ! 今すぐ魔法を撃て!」


 ザガンが槍を振り回して、魔物たちを倒している。

 だが、あれでは味方も近づけない。


「そんなにすぐには撃てませんよっ! それにザガン様に当たります!」


 魔法を撃つタイミングがわからず、オロオロしている。


「あぁー、めんど」


 アスナはそう言いつつ、短剣にて敵の喉元を貫いている。

 ……あいつ、本当は強いな。

 今までは手を抜いていた?

 あの家は代々諜報を担当していたはず……。

 やはり、そういう系なのか?


「ワァァー!?」


 エルバは必死に斧を振り回しているが……へっぴり腰故に、敵を仕留めきれていない。

 完全に、騎士達に助けられている。


「全然、チームワークが取れてないのだ」


「ああ、その通りだな。それぞれが勝手に動いている」


「むぅ……拙者も反省しなきゃ……」


「ああ、そうだな。だが、少しずつで良いさ。みんながいる」


「はいっ!」


 休憩を挟んで、俺たちは再び前に出る。


 そして……もうすぐたどり着くという時に、それは現れた。


「むっ! アレス様! お下がりください!」


 クロイス殿の声に、俺は素早く反応する。

次の瞬間、瘴気が形を変え、大きいシルエットが浮かび上がる。


「グゴァァァ——!!」


 そして……俺の目の前には、体長三メートルを超えるトロールが立ちふさがっていた。


 

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