第24話時は流れ……

 入学してから、大分時間が過ぎた。


俺も9歳になり、少しずつ身長や体重も成長してきた。


 稽古に励んだり、友達と遊んだり。


 クロスとも遊んだり、模擬戦なんかもしたな。


 あいつってば、火も吐けるし。




 そんな日々を過ごし…… 今日は、いよいよ初めての定期テストを迎えた。


 ちなみに……相変わらず、クラスの仲は良くない。


 四対四で、完全に分かれている。


 まあ、俺も話しかけるのは諦めた。


 もはや、洗脳に近いので無理だろう。


 後は……上手く付き合って行くしかあるまい。


 もちろん……舐められるわけにはいかないけどな。





「さて!皆さん!今日は試験ですよー!まずは、午前中は筆記試験です!きちんと勉強はしてきましたかー?」


 それぞれが返事をする。


「はい!いいお返事です!では、早速始めましょう!」


 プリントが配られて、試験開始となる。




 はっきり言おう……簡単すぎると。

 いや、本来なら小学生くらいだからこんなものか。

 魔法は何属性あるかとか、女神の名前とか、国の名前とか……。

 まあ、そういった基本的な類のものばかりだった。

 ……まあ、大事なのは実技だから良いのか……。



 時間が余ったので、考え事をしてみる。


(もうすぐ、妹が生まれるな……)


(キュイー!)


(おっ、起きたのか。なんだ?お前も会いたいか?)


(キュイキュイ!)


(よし、なら会わせてあげような)


(キュイ!)


 そうなのだ。

 もうすぐ、生まれる予定なのである。

 大事にしたいと思う……結衣、お前はもう大人になったのかな?

 時間の流れがわからないから、なんとも言えないけど……。

 きっと、素敵な女性に成長したんだろうな……。

 結衣には素敵な男性と出会い、幸せになってもらいたいものだ……。




 テストが終わり、昼食を食べ終わった後、実技の試験となる。


「ククク……来たぞ!この日が!」


「ザガンか……よりによって——君が相手か」


 抽選により、一対一の模擬戦が実技の試験となる。

 勝ち負けも大事だが、その戦い方がポイントとなる。

 正直言って、こいつがセレナと当たらなくて良かった……。


「いよいよだ……出来損ないとはいえ、流石に皇族に喧嘩を売るわけにはいかないからな……!これなら、遠慮なく叩き潰せるぜ……!」


 やれやれ……ゲルマ王妃に何か言われたかな?

 ザガンの実家は、第一王妃の出身だからなぁ……。

 第一王妃は、四つある侯爵家の持ち回り制らしい。

 そして第二王妃は、八つある伯爵家の持ち回りということだ。

 だから、母上はあんな目にあうんだろうな……。

 だからといって、許されることではない……!


「それは——こちらのセリフかな。結局……君には、セレナに謝ってもらってないからね。それに、態度も良くない。その傲慢さ——叩き潰す」


「っ——!言いやがったな!!槍なら負けるわけがない!」


 そう、今回は自分の得意武器で良い。

 それも含めての試験だ。

 武器の相性をどう覆すとか、対処したりするのか。


「そうだね……一般的に、槍のが強いとされているからね。でも……だからといって、負けるわけにはいかないよ」


 ザガンが槍を構え、俺も剣を構える。


 クラスのみんなが見守る仲、先生がタイミングよく声を上げる。


「さて!良いですかね……では——始め!!」


「オラァ!」


 俺が間合いを詰めるまえに、連続して突きを放ってくる……!


「まあ、そうなるよね……でも……!」


「な、なに!?避けながら間合いを詰めるだとぅ!?」


 ……カイゼルのおかげだ。

 カイゼルは槍が主流のこの国にて、剣の腕1本で近衛騎士団長になった男。

 槍との戦い方は熟知していた。

 俺は、それを叩き込まれた。

 槍とは突いた後……引かなくてはならない。

 その隙に間合いを詰めろと……安易に魔法に頼らずに、剣士の間合いに持っていけと。


「さて……まあ、そんなに甘くないよね」


 ザガンは退がることで、再び間合いを取る。


「ククク……こうすれば、永遠に近づけないだろ!ソラァ!」


 足捌きのみの、最小限の動きで躱していく……。

 さて……間合いを一瞬で詰めるにはスピードが足りない。

 ザガンの槍の腕は、子供とは思えないスピードとはパワーがある……。

 ……ならば、それを利用するとしよう。


「……今っ!」


「なっ——!?」


 次の瞬間——俺は、ザガンの首に剣を突きつけていた……。


「そこまでです!アレス君の勝ちです!」


「おいっ!?先生!俺はまだっ!」


「首に剣を突きつけられているのにですか?真剣だったら——死んでますよ?」


「くっ!な、なにをしやがった!?」


「君の力を利用したまでさ」


 ザガンが槍を突き、引く直前に……俺は槍の柄を掴んだ。

 そしてザガンの引く力に逆らわずに、そのまま間合いを詰めたというわけだ。


「な、なんて奴だっ……!クソッ!!」


「ザガン、君の槍が強力だったからこそだよ」


「……それはどうも……チッ!」


 あらあら……戦ったら仲良くなれるのは、やっぱり漫画の中だけか。


 その後も、実技の試験は続いていく。

 オルガは巧みな槍さばきで、斧を使うエルバに危なげなく勝利した。

 セレナは善戦するも、子爵家のアスナに負けた。



 カグラは、伯爵家のロレンソに——圧勝した。


「カハッ!」


「終わりか?」


「つ、強い……!この短期間になにが……」


 最近の、カグラの上達ぶりには眼を見張るものがある。

 一皮向けたというか、覚悟が決まったというか……。

 芯がしっかりし、目指すべきものが見えた感じだな。


 戦いを終えたカグラは、俺に駆け寄ってくる。


「アレス様!拙者の戦いはどうでしたか!?」


 こういうところは、相変わらずだけどね。

 その姿は、まるで尻尾でも付いているかのようだ。


「凄かったね、カグラ。ますます強くなっていて、僕も負けられないね」


「ありがとうございます!拙者、強くなってアレス様を守ってみせますから!」


「おいおい、僕はそんなに頼りないかな?」


「そ、そんなことありませぬ!ただ……あ、アレス様が、その……」


 いけない、いけない……可愛いから、ついからかいたくなっちゃうんだよなぁ。


「わかってるよ。僕もカグラが大事だから、強くならなきゃだな。一緒にね?」


「は——はいっ!!」


 こうして前期の試験は終わった。


 そして……いよいよ、あの日を迎えることとなる。





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