第4話校門で一悶着

 さて、校門をくぐったはいいが……結構広いな。


 まず、かなりの規模の広場がある。

 そして建物が、いくつか建っている。

 敷地面積は確か200,000坪ぐらい……東京ドーム13か14個分くらいか?


 まあ、当然といえば当然の話か……。

 まず、ファンタジーの世界だから魔法がある。

 つまり、訓練するにも広さが必要だ。


 この学校には皆が入りたがるらしい。

 それもそのはず……権力者、有力者の子弟が多いからな。

 さらには、俺みたいな皇族まで通っているしな。

 出世や成り上がりを目指す人にとっては、ここを選ばない理由がない。


 ただ入学金が高く、ある程度優秀でないと入学出来ない。

 年齢は8~12歳までいる。

 1学年が約800だから、大体3200人ってところか。

 それ以降は、専門職に弟子入りしたり、軍学校に入ったり、冒険者になったりする。

 そして、15歳で成人と見なされる。


 原則としてお付きの方はつけられない。

 これは自立を促すためだ。

 たまにメイドや執事を連れてくる馬鹿もいるが……。

 いくら学校のルールが形骸化したとはいえ、校則違反ということで追い返される。


 だが、そのために弊害も起きた。

 子供達が、自分の派閥を作りだしたのだ。

 執事やメイドが連れてこれないなら、自分より下の者を代わりにすればいいと……。

 それも校則違反というか、初代か定めたものなのだが……最早、意味をなしてない。


「さて、どこに行けばいいんだろう?……まずは、クラス分けの掲示板があるはずだから……」


 俺は入り口付近にある、大きな掲示板を見る。


「僕は……Sクラスか。うん、とりあえず良かったかな」


 クラスはS,A,B,C,D,E,Fの七クラスのようだ。

 そのうちSクラスは8人しか入れないので、中々狭き門だ。

 俺は確認をし、その場を離れる。


 すると、何やら騒がしい。


「おい!貴様!平民の分際で、侯爵家次男ザガン様の通行の邪魔をするとは何事だ!」


「ご、ごめんなさい!ちょっと余所見してて……」


「ふん!これだから平民など入学させてはいけないのだ!」


 2人はその後も、女の子に罵声を浴びせている。


 はぁ……本当に、テンプレのような貴族の態度だな。

 しかも、口調も子供らしくない……親の真似をしているのだろうな。

 子を見れば、親がわかるってね。


 ……あまり、権力は振りかざしたくないんだけどな……仕方ないか。

 酷くなる前に、止めた方がいいしね。


「ねえねえ、そこのお2人さん」


「ん?なんだ、貴様は?」


 まあ、俺の顔なんか知るわけないよな……あまり、貴族の集まりとかには出てないしね。


「何も通行の邪魔をしただけで、そこまで言うことはないんじゃないかな?」


 周りの人が、騒つく。

 おそらく、侯爵家出身に意見を言ったからだろう。


「貴様!この方を誰だと……!」


「まあまあ、いいさ。おい、貴様。カッコつけたいのか知らんが、相手を間違えたな。こいつは、この俺の邪魔をしたんだぞ?土下座くらいはしないとな」


 そう言い、ニヤニヤしている……クズめ。

 もう、穏便に済ませるのは止めるか。


「……ここでは、貴族も平民も平等なはずだけど?」


「ハハハ!こいつ、馬鹿ですよ!」


「全くだ!そんな建前、誰も守るわけがないだろう!父上もおっしゃってたぞ?」


「はぁ……おい、クズ。権力をふりかざして横暴に振る舞うということは、更なる権力に横暴な振る舞いをされても、文句は言えないよね?」


「ク、クズ!?この俺が……!」


「な、なんて無礼な!!」


「はい、君。大丈夫?立てる?」


 その子は、蒼い髪色をしていた。

 瞳も透き通るような蒼。

 とても、可愛らしいタイプの女の子だった。


「は、はい!立てます!あ、ありがとうございます!で、でも……」


「僕は大丈夫。さあ、下がってて」


 女の子は、僕を気遣うような視線を向ける。

 うん、助けて良かった……この子は良い子だ。


「おい、貴様……!覚悟は出来てるんだろうな!?」


「なんの覚悟?僕は、至極当然のことしか言っていないけど?むしろ、謝るべきは君のほうだと思うけど?」


「こ、この……!」


 所詮は親の真似事か……言われたことがないことには、対応できない。


「ちょっと!!なんの騒ぎ!?」


 あっ——この声は……。


「こ、これはヒルダ皇女殿下。こいつらが、俺達に無礼を働きまして……」


「ここでは、貴族の権利を行使してはいけないのよ?そんなことも知らないの?」


「こ、これは最高権力者の皇族の方がいう台詞では……」


 この方は、やはり稀有な存在だ。

 これを素で言えることの、なんと素晴らしいことか。

 ただ、1つ困ったことが……。


「そういうのは、いいから。ほら、貴方達。もう平気……アレスじゃない!?」


 俺は……思いきり抱きつかれる!


「ヒルダ姉様!痛いですから!ちょっと、離れてください!」


「嫌よ!アレスの匂いを嗅ぐのよ!それと、可愛くお姉ちゃんと呼ばなきゃ嫌!」


「いや、嫌と言われても……」


「むぅー!!」


「はいはい、わかりましたよ。ヒルダ姉さん」


「まあ、さん付けだけど……許してあげる!」


 困っているのはこれだ……嬉しいのだが、愛情表現が激しすぎるのだ。


「ア、アレス?姉さん?」


「アンタ、知らないで喧嘩売ったの?第3皇子のアレスよ。私の、唯一の可愛い弟よ!」


 周りから声が上がる。


「お、皇子だって!?」 「でも、平民を庇ったよ!?」「それに取り巻きがいない?」


 ザガンという奴は、青ざめている……まあ、それもそうだろう。

 権力をふりかざしていたら、更なる権力が現れたのだから。


「こ、これは人が悪い。アレス皇子殿下でしたか。大変失礼しました!」


「し、失礼しました!」


「謝る相手が違うんじゃない?それと、あまり横暴な態度はいただけないな。これからは、気をつけてね?」


「わ、私は大丈夫です!」


「そう?良かったね、この子が良い子で」


「はいはい!入学式始まるわよ!皆、早く行きなさい!」


「く!行くぞ!」


「は、はい!」


 2人と、周りの人達が慌ただしく動きだす。


「こら、アレス。腹がたつのはわかるけど、あまり挑発してはダメよ?」


「……そうですね。少し大人げなかったですね。気をつけます」


「ふふ、アレスは優しく素直な良い子。あの可愛くもなく、生意気な弟とはえらい違いだわ」


「あ!あの!」


「ああ、ごめんね。助けたつもりが、騒ぎを大きくしてしまったね」


「い、いえ!嬉しかったです!こんな方がいるとわかって!ありがとうございました!」


 そう言い、女の子は走っていった。


「ほら!アレスも遅刻するわよ!模範になるべき皇族が遅刻とか、笑えないわ!」


「そうですね!では、行ってきます!」


 俺は人波についていき、会場に入る。


 そしてSと書かれた旗に従って……席に着くが。


 そこには……先程の女の子と、男達がいた。


 マジか……同じクラスか。

 問題が、起こる気しかしないな……。


 そして、すぐに学校長が出てきて話し始めた。


 どこの世界でも、校長の話は退屈なんだな……。


 俺は校長の話を聞き流しながら、過去のことを思い出していた……。




































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