クズで優柔不断な主人公(俺)がラブコメしてしまったのだが。

棚狭 杏丞

失敗ープロローグー

 ≪好きです。付き合ってください≫


 ≪え?どうしたの?≫

 この時の俺は、はっきり言ってクズだ。

 深夜テンションとやらにまんまとやられてしまうのだから。

 ≪僕と、付き合ってほしい。≫


 ≪冗談でしょ?笑笑≫

 この時の俺は、はっきり言ってクズだ。

 SNSで遊びで告白してしまうのだから。

 しょうがないじゃないか。俺には、希望なんかないって。

 どうせすぐ断られるって。自信なんか、あるわけがない。

 ここでイエスと言っていればこうならずに済むのかもしれない。

 玉砕するつもりだった。すぐ断られると思っていた。

 なのに…

 ≪———え?ホントだよ?≫

 ≪本当にどうしたの?≫

 最後に「ドッキリでした」って言おう。そう、思った。

 ≪———え?ホントだよ?≫

 よし、次で明かそう。そうして、眠りに就———————

 ≪———すごく嬉しい。ありがとう。≫

 やってしまった。そう思うしか、無かった。

 中学2年生最後の日、3学期修了式の日の深夜0時。

 自室でただ、胸をドキドキさせているばかりだった。

 俺、綾沢緋人(あやさわひのと)に彼女ができた。彼女、沖宮穂雁(おきみやほかり)はなんだかんだでいつも近くにいた。席や委員会、合唱コンクールでは俺が伴奏者で、彼女は指揮者だった。そうしているうちに段々と意識するようになっていた。彼女といると、なぜだか心が明るくなり、その時間すべてが楽しかった。そのため、その気持ちに偽り

はなかった。本当に好きだった。だから先立ってしまったのだろう。心の準備もできていないのに。

 そうして俺は、一日を終えた。一睡もできずに。



           ☆



 そして、春休み一日目を迎えた。一秒も寝ていないので、まだ高揚している。

 ———と、ラインの着信だ。

  ≪ おはよう☆、明日から遠征だから、しばらく話せないのかも…≫

 なんだろう。この違和感。

 俺は、中学生の青春らしい悶々とした空気に駆られていたが、同時にとある感情にも駆られた。


 『元に、戻りたい』


 そうして俺は、女子が聞いたら数多のブーイングを喰らいそうなセリフを、ラインに放った。


  ≪元の関係に戻らない?≫


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