誰も殺さない好奇心

小指に触れるステンレスが、ひんやりとして気持ち良い。

まあるい輪に入れた右の親指と中指に力を加える。

「人差し指は添えるだけね。」

ふいに、そんな台詞を思い出す。

誰が教えてくれたのか、はたまた記憶の産物なのか、今となってはわからないし、どうでもいい。


 ジャキ


途中で骨に引っ掛かって、それ以上は進まないけど、綺麗に切れた皮ふから深紅の血が滴る。

美味しくはないけど、不味くもない。変な味だ。

唇に付いた分を舐めとり、鋏を拭いて筆箱に仕舞う。

明日の美術の時間が待ち遠しい。

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