煙草
特に理由なんてない。ただなんとなく。だけど強いて言えば少し寂しかったから、かもしれない。
友達と映画を観た。好きな俳優さんが煙草を吸っていた。その姿が私の目にはなんだか酷く儚く映ったのだ。
彼と静かに昇る煙が忘れられない。
そういえば私の祖父は重度のヘビースモーカーだった。小さい頃は祖父の口から輪っかになって空に昇る煙がとても好きだった。
ゆらゆらと何もない空中に伸びる煙が、今は私の指先から、口から出ている。
なんだか大人になるのを自分で急かしたみたいだ。
指先からは確かに祖父からした香りがするけれど、私の口から出た輪は可哀想なくらい歪で、とても輪っかとは言えなかった。
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