第4話 氷の女王
「あ!どうも!」
訓練場を出て行こうとした所で、銀髪の女生徒とすれ違う。
その瞬間、泰三が急に背筋を伸ばして腰を折り、大げさに挨拶する。
だがその女生徒は特にその行動を気に留める事も無く、軽く会釈だけして俺達の横を通り過ぎて行ってしまった。
「知り合いか?」
気になってその後ろ姿を追うと、泰三以外の人間も彼女に丁寧に挨拶しているのが見えた。
有名人なんだろうか?
「お前は知らないだろうけど、彼女は
「トップランカー?」
厨二臭い二つ名も気にはなったが、それ以上に俺が気になったのはトップランカーという言葉だった。
何らかのランキング付けがこの学園にはあると言う事なのだろか?
「校内戦闘ランキングがこの学園にはあるのさ」
「そんなのがあるのか?」
「ああ。色々な能力を伸ばして世界に貢献させるなんて謳っちゃいるが、要は戦闘要員を育成するのがこの学園の真の狙いだからな」
まあそれは俺も知っている。
確かアメリカのSWATなんかは、その多くがギフト持ちだそうだ。
だからこそ、髪を伸ばすと言う糞能力しかない俺はこの学園に来たくなかった訳だが。
「でだ。半年に1回校内戦が行われて、生徒はその結果でランキング付けされるって訳だ」
「へぇ」
戦闘ランキングか……この学園は政府直轄で謎な部分が多い。
その為、授業内容もあまり公開されていない訳だが、まさかそこまで極端なシステムを導入しているとは考えもしなかった。
「ま、安心しろよ。校内戦は強制じゃないから」
「そうなのか?」
「戦闘向きじゃない能力の奴も、この学園には居るからな」
言われてみればそりゃそうだ。
どういう戦闘方法かは知らないが、俺の能力で戦えとか言われても困るわ。
「んで、だ。さっきすれ違った氷部澪奈は、四天王って呼ばれるぐらい強いランカーなのさ」
「四天王ねぇ……」
二つ名と言い。
何というかこう……まあ高校生ぐらいだと仕方がないのかもしれないが。
俺は異世界での4年間の生活があるので、精神年齢は実質二十歳だ。
その為、高校生のノリには少々ついていけない部分がある。
「
清々しいまでに厨二臭い名前のオンパレードだ。
まあ別にいいけど。
「観戦できるのか?」
「ああ。下位は訓練場だけど、上位の対戦は大演武場って言われるデッカイ闘技場で試合するからな。後で案内してやるよ」
「頼む」
この後泰三に、学園内の施設を案内して貰いながら回る。
学園の主要施設は大きく分けて5つだ。
まずは本校舎。
ここでは年齢に合わせての授業が行われている。
ある程度簡略化されてはいるが、ギフトの座学以外にも一般的な学生が受ける様な授業も行われている様だ。
能力育成の学園で普通の授業?
そう思うかもしれないが、幾ら強力なギフトが使えても脳みそがパッパラパーじゃあれだからな。
後、色々な同好会や部活の部室も本校舎にある様だ。
二つ目は休憩エリア。
学食やカフェのある大きな中庭で、学生にとっての憩いの場になっている。
まあここは普通の学校と似た様な感じだ。
規模はかなり大きいけど。
三つ目は訓練エリアだ。
俺達がさっきまでいた場所である。
馬鹿でかい講堂の様な建物で、よく分からない謎のバリアで細かくエリアが区切られていた。
どうやら能力にだけ反応する防御フィールドらしく、発動させた能力が明後日の方向へと飛んで行っても大丈夫な作りになっているらしい。
更に訓練場の横には運動用のグラウンドが広がっており、放課後の一般的な部活等は此処で行われている。
4つ目は大演武場と呼ばれる場所だ。
天蓋付きの大きなドームの様な建物で、ここでランキング上位者は能力バトルを行なうらしい。
どんな戦いがあるのか少し興味はあるが、髪を伸ばすの能力の俺には無縁な場所だろう。
そして最後は俺達が寝泊まりする寮だ。
寮は男女10棟ずつに分かれており、最大1000人までのキャパを誇っている。
まあ現状は半分程度しか使われてはいないそうだが。
後、職員も基本的に寮で寝泊まりしている様だった。
以上がこのギフテッド学園の主要施設となる。
他にも細々としたものがたくさんあるのだが、其方はまあいいだろう。
俺にはあんまり関係なさそうだし。
「そういやさっき、なんで挨拶したんだ?そのアイス・クィーンとやらに。別に知り合いじゃないんだろ?」
泰三の挨拶は軽く流されていた。
幾ら強いからとはいえ、全然知らない奴に大げさな挨拶とか意味不明なんだが?
「いやー。俺さ、氷部澪奈の大ファンなんだよ。それでつい」
泰三は照れた様に頭を掻く。
どうやら只のミーハーだった様だ。
だが確かに、凄く綺麗な女性だった。
白い肌に透き通る様な銀髪。
切れ長の青い瞳にすっと通った鼻筋。
氷部澪奈という女子は、ぱっと見でも美少女だと言う事が分かる程に美しい顔立ちをしていた。
泰三が夢中になるのも分からなくはない。
とは言え――
「いくら憧れてるって言っても、相手はこっちの事知らないんだろ?いきなり知らない奴に挨拶されてもキモいだけだから、次からは止めとけよ」
「あ、やっぱそう思う?」
自分でも自覚していたらしい。
相変わらず女にはモテていなさそうでほっとする。
それでこそ同士だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます