しにたいなあ (15分間でカクヨムバトル)
春嵐
01 ENDmarker.
「しにたいなあ」
彼女。
聞こえるか聞こえないかの、ほんのちいさな声。
聞き間違いだと思って、知らないふりをした。
彼女。向かい合った、机の向こう側。僕の作ったカレーを、もそもそと、ほおばっている。ほっぺたが、カレーでいっぱいになっているらしい。ハムスターみたい。
見た目も綺麗で。
モデルとかそういうのもやってて。
老若男女、誰からも好かれるキャラクターをしているのに。
彼女。カレーを飲み込んで。
何か言おうとして、それを封じ込めるように。また、僕の作ったカレーを、おくちいっぱいに、もぐもぐする。
彼女の次の言葉を。カレーをもぐもぐし終わるのを。
ゆっくりと。待つ。
多少じゃがいもに苦戦しているらしく、お水を飲んでいる。
「ふはあ」
喉のつまりが解消された彼女。
「しに、たい」
今度は。はっきりと。
聞こえた。
「しにたいよお」
彼女。涙が。
ぽろぽろとこぼれる。
「しにたい。しにたいよお」
それだけをちいさく呟き続ける彼女を。
どうしようもなく、見つめていた。
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