第17話 数え方
「この前、ノートを集めるのに一冊ずつ数えて確認していた人がいたんだよね。わざわざ」
マヤちゃんが少しうんざりしたように言う。
「十冊ずつとかにすればいいのにな」
ナギトくんが答える。
「そう! じれったいなーって思ってさ!」
「マヤちゃんそういうの苦手だもんね」
「そうそう! いーってなる!」
そういってマヤちゃんは自分の腕を抱くようなしぐさをする。
ちょっとかわいい。
「その人の自由じゃない?」
アカリちゃんは興味なさそうに言う。
「絶対まとめた方が早いって!」
「じゃあ、実験してみましょうか?」
「え?」
そう言ってリサちゃんはにっこりとほほえんだ。
「そうですね。まず、同じ硬貨を四十枚ほど用意してくれませんか?」
みんなで出し合って十円玉を四十枚を集めた。十円玉って余りやすいよね。
「これでどうすんの、リサ?」
「まず、八枚ずつ集めます。いーち。にー。さーん……」
リサちゃんが数えながら十円玉を積み上げていく。数え方かわいいなあ。
「はーち。これで八枚です」
そう言って、手を離す。
「これに合わせて、あと四つ作れば四十枚だね。ほら、早い!」
「はい。これで、山が五つ出来ました。じゃあ、マヤさん、念のために一枚ずつ数えてみてください」
「それが面倒なんだってば。ひー、ふー、みー、よー……」
マヤちゃんは数え方が違う。へー。
「あれ?」
マヤちゃんが首をかしげる。
「どうした?」
「何度数えても五枚足りないんだよね」
「そんなこと無いだろ。二の四の
ナギトくんも数え方が違う。
「本当だな。確かに足りないな」
「そうなの?」
アカリちゃんも興味がわいてきたみたい。
「一、二、三、四、五……。足りないわね。ヒカリも数えてみて」
「うん。ちゅうちゅうたこかいな……」
「え! ちょっと待って! ヒカリちゃん、何それ!」
「え? 何かおかしい?」
「うん! 何その数え方! 初めて聞いた!」
「そうなの? ぼくの家ではこれだよ」
「知識としては知っていたが、聞いたのは初めてだ」
「ちょっと感動してる」
ナギトくんは物珍しそうにしているし、アカリちゃんはなぜか感動している。
「数え終わったけど、やっぱり五枚足りないね」
リサちゃんの方を見ると肩を震わせて笑っている。
「リサちゃん、そんなに変だった……?」
だとしたら、ちょっとショックだよ。
「い、いえ。みなさんがあまりにもきれいに引っかかってくれて、面白いんです」
「どういうこと?」
「だって、その五枚ここにあるんですよ」
そういってリサちゃんは握っていた手をひらいた。そこには十円玉が五枚あった。
「どういうこと? マジック?」
マヤちゃんがまたもや首をひねる。
「簡単ですよ。八枚目を乗せた後にその八枚目を手に隠すんです。これで実際には、ひと山七枚になるんです。そして山が五つですから、五枚消えるってわけです」
「全然気づかなかったー!」
「これでわかったでしょう? まとめて数える方法が絶対とは言えないんです。一枚一枚数えていたらこうはなりません。どんなことにも長所と短所はあるんです」
「なんだか落語みたいね」
「目から鱗だったよー! 決めつけるのはよくなかったねー」
マヤちゃんが感心している。
「わかってもらえてよかったです」
今日は色んな発見があったなー。
数え方もみんなバラバラだったし。
ちゅうちゅうたこかいなって変じゃないよね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます