第15話 体重

「あーもう! イライラする!」


 マヤちゃんが荒々しく部室のドアを開ける。


「どうしたの?」

「聞いてよ! 昼休みに男子が好きなタイプの話をしてたの。あんな顔がいいとかこんな性格がいいとか。でも、話が進むと逆にこんなのは嫌だ、みたいな話になって。それで『体重が50kgあるのは嫌だなー』とか言ってたの!」

「それがどうかしたの?」

「どうもこうもないよ! ヒカリちゃん!」

「そうです! そうです!」


 リサちゃんもしきりに頷いている。


「え? どういうこと?」

「あのね、ヒカリちゃんは体重軽いだろうから、わかんないかもしれないけど、女子って太ってなくても50㎏くらいあるんだよ」


 えー! そうなの!?


「ナギトくん、知ってた?」

「まあ、それくらいはあるだろうな。40kg台なんてのはモデルとかだろ」

「私、40kg台」


 アカリちゃんが、フフンといった表情をする。


「アカリはちっさいからでしょー」

「ちっさい……」


 アカリちゃんがすねちゃった。


「マヤさん、体重を聞いてもいいですか?」

「恥ずかしいから向こうで」


 そう言って二人は部室のすみへ行ってお互いに耳打ちしていた。


「私のほうが重かった……」


 マヤちゃんはがっくりと肩を落としていた。


「背はあんまり変わらないのにねー」


 マヤちゃんのほうがリサちゃんよりちょっと高いくらい。


「なんででしょう?」


 リサちゃんも首をかしげる。


「マヤ、お前よく運動してるよな」

「うん、体動かすの好きだし」

「もしかして筋肉量の差じゃないか?」

「筋肉?」

「そう。同じ体積だと脂肪より筋肉のほうが重いらしい」

「へー。じゃあ、別に太っているってわけじゃないんだ」


 マヤちゃんはホッとする。


「だいたい女子には胸があるんだからさ。それも考慮して欲しいよね。体重軽いほうが良くて胸は大きいほうが良いなんて勝手だよねー」

「マヤさん、ヒカリさんやナギトさんもいるんですよ」


 リサちゃんが慌てる。


「そうだった。ごめん、つい。っていうか二人とも顔赤いよ。ウブだねー」


 思わず顔を伏せる。


「私無いんだけど」


 アカリちゃんが低い声で言う。


「ごめんってば」

「需要はありますよ」

「どうだか」


 怖かった……。というかアカリちゃん気にしてたんだ。

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