#6 兎に角(とにかく)
次の日、俺はオレ君と公園のベンチでしゃべっていた。
「俺はシーラカンス。シーラって呼んでくれ。そっちは?」
「ノ、ノココって言います……ノココって呼んでください」
オレ君の名前は「シーラカンス」というらしい。
ウブなのかフレンドになろうとは誘って来なかった。ので、偽名を使っておいた。ノココちゃんでーす。いぇい
恋愛には奥手なのかな? かわいげのある奴はモテるぞ良かったなリア充死ね。
素直に俺がリア充の祝福をするとでも? 呪詛吐き散らかしてやるよ覚悟しておけ! カーッ、ペッ!
チッ、自然な流れでハニカミなんてしやがって。クソ!
ま、いいさ。せいぜいネカマである俺に
「あんまり詮索は避けたいんだけど、ノココさんって初心者だよね?」
「はい……すいません」
「謝らないで。さっきのはノココさんに非は無いよ。それよりも、レベル上げとかで困ってない?」
オレ君改め深海魚君には俺がゲーム初心者に見えたのか、こちらから聞くまでもなくギョギョギョな情報をくれた。
気が利く男はモテるよヒューヒュー。主にネカマと女尊男卑アネキにはね。大体なんですかその気を使える男アピは。本当に気を使えてるから余計ムカつくよハッキリ言って死ね!
でもまあ、死ねは良くないよね。もう少しオブラートに包んで言おうか。地獄に落ちろ!くだばれ!
話を戻そう。その情報とは狩場だ。ある程度弱く経験値もまあまあという魔物の生息域を助言してくれた。やっぱり持つべきモノはカモ背負ったネギだよね!
「い、色々教えていただいて、ありがとうございますっ!」
「うん、またね」
てなワケで早速よさげな狩場、ニーシャルナ森林へ向かおう! 善は急げだスタコラサッサ
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
到着。うっそうと青々しく生える木々は、正しく森林の名に恥じないと言っても過言ではないだろう。
ここに住む魔物は〈
モフモフの見た目に反して性格は
俺は森で周りに他の一角兎がいない事を確認し、ボッチウサギへと忍び寄る。ウサギちゃんは独りだとさみちくて死んじゃいまちゅからね〜。
俺が【契約】を使うと、一角兎はこちらを振り向く。
この為の【契約】だ。魔物を配下にする。いかにも魔王っぽいだろう。ほーら、ウサちゃんおいで〜。
俺の気持ちが伝わったのか、ウサギさんは嬉しそうに跳ねながらこちらへ向かってくる。胸の中へ飛び込んで来たウサギさんを精一杯受け止め、俺は微笑する。
ウサギさんは俺に顔をスリスリして、そのモフモフを押し付けてくる。
ウサギさんの角が喉元や肺胞を蹂躙し、俺は口から鉄錆色の液体を吐露しながらその場に倒れた。
〖支配状態下にありません〗というアナウンスを横目で見ながら、俺は息を引き取った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
〖プレイヤーネーム:”バンブー”が死亡しました。〗
〖蘇生可能時間の超過を確認。〗
〖30秒後に復活します。〗
〖デスペナルティ-1:6時間のステータス半減〗
〖デスペナルティ-2:6時間の経験値獲得無効〗
〖ビギナープロトコル:初ログインより72時間の間、デスペナルティの破棄〗
〖素体再生─Now Loading…〗
目が覚めるとそこは見た事のある天井だった。
なんでやねん! 聞いてないぞ支配状態とか! やっぱクソゲーだわ。
なんだあの殺意の高い兎は。完全に仲間になったものだと思って油断したよチクショウ!
しかし、こんな時のために空けておきましたとさスキル枠。支配で検索したすぐに出てきた【支配】ちゃん。
というわけで、俺は森に向かった。そこに向かうまでは幾多もの困難が立ちはだかった。
からんでくるチンピラを【疾走】でかわし、さっき襲った四人組にすれ違ってビビり、四人組を避けようと遠回りをした若干道に迷いかけた。
そうしてようやっとニーシャルナ森林へと着いた。無駄に広いし複雑な道しやがって。やはり都市ニーシャルナは潰すべきだな。俺が道を迷うことのない更地にしてやる。
そんなこんなでその為に第一歩として、ウサギさんよ。君には我が支配下へと下る権利をやろう。
今度の俺は一味違うぞ! 【支配】!【契約】!行けっ! テイマーボールっ!
「ウサちゃんゲットだぜ!」
「ピョン」
俺はお約束のセリフを叫びながら、昇天した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
〖プレイヤーネーム:”バンブー”が死亡しました。〗
〖蘇生可能時間の超過を確認。〗
〖30秒後に復活します。〗
〖デスペナルティ-1:6時間のステータス半減〗
〖デスペナルティ-2:6時間の経験値獲得無効〗
〖ビギナープロトコル:初ログインより72時間の間、デスペナルティの破棄〗
〖素体再生─Now Loading…〗
Why?? What?! FaQ!!
何故だ、何なんだ、氏ね!!!
俺の作戦は完璧だったはず。くそぉ……なーにが〖魅了状態下にありません〗だとぉ? どんだけテイマーに厳しいんだこのクソゲーはよォ!
いやまてバンブー。落ち着けバンブー。俺はまだやり直せる。そう、スキルポイントは12ポイントもある。ちなみにスキルポイントはレベル上がる度に3ポイント貰える。
俺は気持ちを落ち着かせると、3ポイント消費で【魅了】のスキルを習得した。
しかし、森までの道は更に過酷を極めた。
騎士団に呼び止められてヒヤヒヤし、なんだチンピラの事かと安心した瞬間さっきのPKについて知らないか
なんで一緒にいやがるんだよ馬鹿野郎。まあ十中八九俺のせいなんだけどなチクショウ。
聞いてませんよ、そんな指名手配犯みたいな事されるなんて。なんか最初にキルした神官が異邦人の軍隊引き連れてたし。なんで神官が大軍率いてるんだよおかしいだろ。アレなの? 隣人を愛せよ、と神は言ったとかで隣にいる人を片っ端から仲間にしたの?
ちょっとした出来心だったんだ、信じてくれよ!
まぁ、謝る気は無いんだけど。バレたら逃げるが勝ち。勝てばよかろうなのだ。
そんなこんなで三度やってきたぜウサ公。ここであったが百年目。
「【魅了】【支配】【契約】ッ!」
ウサ公の体からハートのエフェクトが舞い、目がグルグル模様になって、変な紋章が一瞬身体中に光った。
〖〈
〖名前を入力して下さい。[____]〗
「ピャァァァァァァッッッ!!!」
喜びのあまり、俺は叫んだ。それはまるで鷹の如く、甲高い鳴き声だった。
おや? 契約したての従魔のはずが、ログがやけに長い。
そう。こいつだったのだ。俺を二回も
俺は再び叫んだ。
という訳で名前を付けよう。今日からお前は
「……ピョン」
するとムホンはキッ、と
買っておいた人参をムホンにチラつかせながら次の事を考える。
斯くして俺は、次なる作戦への第一歩を踏み出したのだった。
>to be continued… ⌬
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます