王家の血筋の令嬢は路上で孤児のように倒れる

青空一夏

第1話 雪の日に路上で倒れた痩せぎすな少女

「お前は本当になにをやらせても愚図ね!」


「お姉様って、本当に料理が下手よね!それに、なんでそんなに痩せぎすなの?」


「そうだよ!お前はみっともない子だよ!痩せぎすで、手足ばかり長くてさ。それにお前の父親ときたら甲斐性なしのろくでなしだわ。死んでも、ろくに遺産もなかったから、もう家にはお金がないわ。そうだ。お前、外で働きなさいよ!」


この言葉は、継母と義理の妹が言ったのではない。実の母親と妹が言った言葉よ。痩せぎすなのは仕方ない。お父様が事故で亡くなってから、私は彼女らが食べ残したものしか食べてはいけないことになったから。


二人は私が作った料理を文句を言いながら食べていた。まずい、最悪などという割には、きっちり食べきっていたから私のぶんは今日もなかった。


お父様はとても美しくて見栄えが良かった。でも、確かに商才は、あまりなかったのかもしれない。でも、それなりに生活できていたし、少なくとも5年は普通に生きていけるお金を残してくれたはずなのに‥‥なぜ半年で、すっからかんになるのかわからない。



私は寒い冬の日に雪のなかを放り出されて、働き先を探す。紹介状もないし、まだ15歳の私が働くところなんて‥‥ない‥‥


重たい鉛色の空を見上げると白い雪が、ふわりふわりと落ちてくるの。綺麗。でも、雪は綺麗なだけじゃないのよ。寒くて冷たくて‥‥私はこの世で一人ぼっちな気がした。お、お父様、なぜ?なぜ死んでしまったの?マドレーヌも死にたい‥‥





金銀の装飾が施された馬車は貴族様の馬車だ。私は、その馬車が角から飛び出てきたのにも気がつかずにいた。朝から水と堅いパンの端っこしか、かじっていない私は路上に倒れた。引かれるって思った。その時に、私は思いっきり願った。


――お願い、神様。私に温かい家族をください。もう、こんな寒い冬の日に空腹で外をうろつかなくていいように。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る