第2話一時間目・国語

一時間目が始まった。チラッと横を見る。キミの机には、筆箱しか出ていない。うつむいて、気まずそうにしている。

「…今日はこのページを音読してもらいましょう。じゃあ…この列の人、順番にお願いします。」

先生が窓際から二番目の列を指差した。その列の一番後ろはキミ。前の席から順に、段落ごとに音読が始まった。キミは、さっきよりもさらに頭を下げてしまう。

「今、このへん。」

小声で言いながら、僕は教科書をキミに渡した。

「……ありがとう。」

眉をハの字にして、キミは小さくつぶやいた。キミの順番が来ると、なんとか読みきった。こっちまで、ハラハラする。

分からない。今まで、この逆は何度かあった。キミは頼もしい子だと思っていたのに。

気になってしまう。


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