第8話 何しても可愛い

「お、おおおおお男ってどういうこと!?」

「どういうことって言われてもなぁ。性別は変えられないし」


 えへへと笑う恵音。

訳が分からない……。


「あかりさん! ホントなの!?」

「私も呼び捨てでいいよ」

「そこじゃなくて! あんな可愛い子が男の子なの!?」

「私も最初はびっくりしたよ……」


 どこか遠くを見る目で話すあかり。

 これが現実だよと口調で訴えてきた。

 当の恵音は、


「か、可愛いなんて……」


 と顔を赤らめている。


「と、とにかく! 今は離れて!」

「そうだよ恵。目立っちゃうでしょ」


 私たち以外は恵音のことを女の子だと思っているだろう。

 冬也に向けられた視線が怖い。

 特に男子。


「分かった。離れるよ……」


 恵音は冬也から離れ、そのまま隣に移動した。

 早めに動いてくれて助かる。


「冬也? 後でゆっくりこの話は聞くからね」

「……お、怒っていらっしゃいます?」

「別にぃ」


 謎の苛立ちを感じていたとき、ふと気付いたことがあった。


「恵音。あなたなんで女子の制服着てるの?」


 恵音の来ている服は女子の制服。冬也と同じ紺色だ。

 スカートの先の足は細くて長い。

 背が低いくせにスタイルもいいようだ。

 男の癖に……。


「それはね……秘密〜」


 人差し指を立てた右手を口元に押し当ててウインク。

 いちいち可愛い。


「私も知らないんだよね」


 隣のあかりが声を上げる。

 秘密か、気になるなぁ。


「おい、そろそろ行かないか?」


 今まで空気だった冬也が言う。


「あ、居たんだ」

「居たんだ、じゃねえよ。最初からずっと一緒にいたわ」


 スルーしながら周りを見渡す。

 少し人も増えてきた。

 一応学校の敷地内だとしてもここで立ち止まるのは良くないだろう。


「それじゃあ行こうか。とりあえず入学式だね」

「うん」

「レッツゴー」

「はぁ」


 三者三様の返答を受けた。


==================================


ハートマークの応援ボタンをポチってくれると喜びます

フォローしてくれたらもっと喜びます

レビューしてくれたらとても喜びます

よければ次の話もどうぞ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る