第6話 鈴海島

「ねぇ! 冬也! 見えてきたよ!」


 結衣が俺を呼ぶ。

 船の上ではしゃぐ結衣。それを見て、


「ああ、立派だな」


 と、誰でも思いつくような感想を述べる。

 鈴海島りんかいとうは少し変わった形をしていた。

 鈴海島は自然の島と人工の島が合体してできた島だ。

 日本本土から離れているものの人工島側は都会でビルもいくつか並んでいる。

 個人的にはもう少し田舎な島だと思っていたため少し驚いた。

 自然島側、鈴海本島は山のように膨れ上がっていて、山の頂点は人工島側のビルを越える高さとなっている。

 船の上から見る景色と島に上陸した後に見る景色は違うだろうが、この状態でもう圧巻の景色だった。


「はしゃぎすぎじゃないか?」

「そりゃあ気分も上がるよ! 華のJKだよ!」


 黒いチェックのスカートを翻して答える。

 白いブレザー姿の結衣は正直可愛かった。

 鈴海学園の制服は女子はスカート、男子はズボンの色を紺か黒の二色から選ぶことができる。

 先程の結衣の姿で分かるだろうが、結衣は黒だ。

 ちなみに俺は紺。

 一応スカート、ズボン以外にも色が変わるところもある。

 まあ些細な物だけど。


「それはいいんだけど優子さんの事だしこの高校に入学したこともなんか裏があると思わないか?」

「うっ……、それは否定しない……」


 あの人は優しいけど何を企んでるか本当に分かんないからな……。


「まあ、それはその時に考えればいいんじゃない?」

「……。それもそうだな」


 考えるのをやめた。

 結衣の言う通りその時に考えればいいだろう。

 鈴海学園には優子さんの古くからの友人がいるみたいだし、いざとなったらその人を頼ろう。

 人を頼ることは悪いことじゃ無いし。


「冬也ー! もうすぐ着くってー!」

「分かった! 今向かう!」


 俺と結衣、二人分の荷物を持って結衣の元に向かう。

 といっても荷物はスーツケースひとつしか無い。

 優子さんが事前に鈴海学園に送ってくれていたらしい。

 軽くて助かる。


「早く行こっ!!」


 手を引っ張られる。

 どれだけ楽しみだったのだろうか、駆け足で船を降りる。

 俺の胸も高鳴っていた。


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