ブレイブ・スクール 勇者養成学校に通う幼馴染が無茶苦茶すぎる

仲仁へび(旧:離久)

第1章 僕の幼馴染達

第1話 ヨルン



 僕の名前はヨルン。十歳。

 商人の息子で、それなりに豊かな暮らしを送っている。


 暮らしている所は、湖が綺麗な町。家の規模は普通だ。

 といっても、商人の家系であるため、家の中で過ごす事はあまりない。

 売り物を詰めた馬車にのって、各地方を巡しながら商売しているからだ。


 年がら年中移動しているため、一か所にとどまる事がない生活をしているが、食べる物に困ったり、寝る所に困ったりした事は、今までに一度もない。


 財産の蓄えは十分にあったため、将来に対する不安もないだろう。


 僕の父親と母親は、今は普通の商人をやっているが、過去に一地方を収める領主を助けた事がある。

 その領主からそれなりの報酬をもらった事があるため、大金持ちではないものの、貯金は十分にあるのだ。


 僕がのっている馬車は、現在小さな村へと向かっている。

 その行先は、鬱蒼とした森の近くにあるカルル村。


 そこには、ひょんな事から知り合った二人の幼なじみがいるはずだ。


 一人は、お金持ちの金髪の少女。

 裕福な暮らしを送っている貴族令嬢だ。


 性格は真面目で、ちょっと天然。見た目が可愛いからモテるのだが、残念なことに天然な性格だから恋が実った人間はいない。アピールした野郎達は、皆涙目で玉砕して言っている。


「つきあってくれませんか!」

「いいわよ。それでどこにお散歩に行くの?」


 地でこれである。

 あわれな野郎共……。


 そんな幼馴染(お嬢様)の両親は、僕の両親のお得意様の一人で、お客様だ。

 顔を合わせたことが何度かある。


「いらっしゃいヨルン君、うちの娘の遊び相手になってあげてね」


 なんて言われて、よく屋敷でお嬢様の遊び相手をさせてもらっている。


 そして、もう一人の幼馴染は。鳶色髪の少年。

 ごく平凡な家庭で生まれ育った平民だ。


 性格は不真面目で、向こう見ずで馬鹿。

 よく考えずに行動することがあるから、痛い目にあっている事が多い。


 めずらしい蛇にちょっかいかけて「やべっ、かまれたー」とか言って走り回っているのを見たり、クマの子供の面倒みてたら「ちょ、たんまぁぁぁ!」とか言って親クマに追いかけられたなんて事がある。


 金髪の女の子に鳶色髪の男の子。


 僕のこの二人の幼馴染達、一見正反対な身分の二人だけど、お人よしな所が共通点だった。

 だから、困った人とか見ると放っておけないし、トラブルが起きると様子を見に行ってしまう。

 厄介事に首をつっこむとこは文句なしに似ているのだった。


「ヨルン、そろそろ村につくぞ」


 御者台で馬を操っている父親から声をかけられた。

 僕は「はい」と返事をして、馬車から荷物をおろす準備をする。

 僕はまだ子供だけど、両親が商売をする時は、その手伝いをしている。

 だから、村や町に到着する前に荷物の準備をしなければならないのだ。


「ヨルン、お仕事が終わったらお友達と遊んでいらっしゃいな」


 父の隣に座っているだろう母からも声がかかった。


 僕は憮然とした声でそれに応じた。


「友達なんかじゃありません」


 あの馬鹿とお嬢様は幼馴染だけど、それだけ。

 顔を知っている他人。

 つまりただの知り合いだ。

 

 たいして親しいわけでも、仲良しなわけでもないのだ。


 だって、友達だって認めたら色々面倒だし……。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る