第44話 ダンジョンの最下層
「かなり降りてきたと思うが、最下層はまだなのか?」
「どうでしょう。遠いのか、近くまで来ているのか。ダンジョンの最下層には神殿があるので、辿り着けたならすぐに分かると思うんですけどね」
遭遇したモンスターを処理しながらフレデリカさんは、目的地はまだかと言った。かなり疲れた様子で、彼女は口を開く。仕方がない。だって、潜り始めてから3日が経っていたのだから。何度か休憩を取りつつ、歩みは止めなかった。
最下層に到着すれば、ひと目見てすぐに分かるような建物がある。僕らは、そこを目指して進んできた。
伝説級のモンスターであるドラゴンが居た階層から数えると、20層以上は降りてきたと思う。奴が居た場所も、おそらく下の方だったはず。僕らは、かなりの階層を降りてきた。それでも、最下層には辿り着けていない。
僕の記憶だと、そんなに深いダンジョンは王都の近くには存在しなかったはずだ。記憶違いだろうか。
フレデリカさんとシモーネさんの2人にも聞いてみた。どうやら、王都近くにあるダンジョンの中で28層以上の深さがある地下ダンジョンに潜ったという話を、他の冒険者からは聞いたことがないという。リーヴァダンジョンも、20階が最下層だと言われているらしい。
おそらく、ここはリーヴァダンジョンではないという事が判明した。僕らは、別のダンジョンに潜っているらしい。どこのダンジョンなのか、未だに分かっていない。もしかすると、ここはダンジョンではないのかも。倒したモンスターの死体は、光の粒子になって消えていった。だけど、人間の遺体が残っているのを僕は目撃した。
あれは、一体何だったのか。
しかし、ここまで降りてきてしまった僕らは、もう後戻りが出来そうにない。先に進むしか、希望は残っていなかった。
食料と水は、僕が空間魔法で収納していた物が残っていた。なので、餓死の心配は無い。
戦いもスムーズだった。2人が成長してくれたおかげで、失敗をしなければ下層の凶暴なモンスターにも負けそうにないほど、フレデリカさんたちは強くなっていた。
なのに、絶望感が広がっていく。いつまで経っても、目的地に辿り着けないから。
まだ誰も、諦めてはいない。けれど、徐々に否定的な感情が湧いてくるような気がしていた。早く最下層まで辿り着かないと。焦りそうになる気持ちを落ち着かせて、僕は2人に言った。
「もうすぐ、最下層に辿り着ける。そんな気がします」
「うん、そうだな。エリオットを信じるよ」
「頑張るわ。生き残るために」
励まし合って、前に進む。そんな状況で階段を降りてみると、今までとは明らかに雰囲気の違った場所に出てきた。
そこには、神秘的で崇高な雰囲気の漂う建造物があった。
「ここは?」
「良かった! ようやく、最下層に辿り着きましたよ!」
見覚えのある建物を発見して僕は、ほっと一息ついた。なんとか、目的地には辿り着けた。これで、地上へ戻れる可能性がグッと高まる。
本当に良かった、と僕は思った。
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