第26話 魔法の威力

「さっきの魔法は、凄かったな。だけど、魔力は大丈夫なのか?」

「今の魔法は、接近してくるモンスターの足を止めようと思って撃ったものなので。実は、そんなに魔力を込めずに放ちました。だから魔力は、消費してないんですよ」

「まだまだ余裕、ってことなの?」

「はい。まだ全然、魔力は十分。戦えますよ」


 先ほど放った炎の魔法”ファイヤアロー”は、モンスターを怯ませるぐらいの効果を想定して放ったものだった。身体に当てることが出来たのは、偶然。


 目前に着弾させて動きを止められたら良いな、ぐらいの考えで撃ったもので僅かな魔力しか込めていなかった。今の魔法でアーリーウルフを倒すつもりは全く無くて、倒してしまったのは僕も想定外の事だった。


 アーリーウルフって、こんなに弱かったか? と思うぐらい。おそらく久しぶりのダンジョン探索で魔力のコントロールをミスってしまったのかな。敵は倒せたけど、無駄な力が入っているということ。それだと逆に、魔力をコントロール出来ていないということ。反省しなければならない部分だった。


「いやいや! 牽制とは言ってもアーリーウルフを一撃で倒せるなんて、強力な魔法じゃないか」


 フレデリカさんは僕を賞賛してくれる。目を輝かせて、本心から褒めてくれているのが分かった。


 彼女の反応は、かなり嬉しかった。最近は、どんなに魔法を扱う技術を磨いても、褒めてくれるような人は身近に居なかったからなぁ。


「そうね。今まで私たちがパーティーを組んできた魔法使いたちと比べると、威力は段違いだわ。あの距離とスピードで的確に当てて、ダメージを与えられた。破壊力も十分にあるんだから、誇るべき力よ」

「当たったのは、本当に偶然ですよ。たまたま、うまい具合に噛み合っただけです」


 シモーネさんも追随して、僕の魔法技術を賞賛してくれた。その後に、彼女たちがパーティーを組んだという魔法使いについて愚痴を聞かされた。


 どうやら、クロッコ姉妹が以前にパーティーを組んだという魔法使いたちは非常に魔力が非常に少なかったそう。例えば、魔法を十発ほど撃てば魔力を使い果たして、バテていたらしい。流石に、それは魔力が少なすぎると思った。魔法を扱える才能があるのなら、魔力を増やす努力をすれば良いのにな。勿体ない。


 だけど、魔法の威力は十分に有ったそうだ。シモーネさんが戦いの最中に、上手く指示を出して、遠距離からの魔法攻撃でモンスターにとどめを刺していく。そういう感じで、魔法使いたちには活躍してもらったそうだ。


 過去にそんな経験があったから、僕の魔力不足も心配になったらしい。まぁ僕は、日頃から鍛えているので魔力の心配はいらない。でも、念の為に注意はしておこう。久しぶりのダンジョン探索だったから。




 最初の戦闘は、あっけなく終わってしまった。


 その後、僕たちはどんどんダンジョンの奥に進んでいった。今僕たちが居る階層のモンスターはどうやら、魔法に対する耐性が無いようだった。どんなに魔力を絞って放つ魔法でも、当てると一撃で倒せてしまうぐらいに弱い。


 これでは、クロッコ姉妹の力量を確認する前にモンスターを倒しきってしまう。


 僕は魔力をほとんど使っていないので、モンスターとの戦闘が終わってダンジョン内部を突き進んでいる合間に、使った分の魔力が自然回復してしまう。そのぐらい、モンスターを倒すのに使っている魔法は消費が少ない。まだまだ何発でも放つ余裕がある。


 流石に、1階層に出現するモンスターとの戦いでは歯ごたえがない。僕たち3人の意見が一致して、さらに奥へ進むことにした。2層、3層と最短のルートで進んだ。さらに下層へ、僕らはダンジョンの奥に向かって突き進んでいく。

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