第24話 リーヴァダンジョン内部

 入り口の兵士に許可され、薄暗い道を進んでダンジョンの内部に足を踏み入れた。フレデリカさんが先頭に立ち、シモーネさんが最後尾を守りつつ奥に向かって進む。周囲の薄暗さに眼が慣れてきた頃、大きな部屋に出た。


「ここからモンスターが襲ってくる。2人とも注意しろよな」

「わかった」


 大剣を構えながら、周囲への警戒を続けるフレデリカさんの忠告。僕も手に持った杖を握る。久しぶりに、モンスターとの戦闘だ。気合を入れていく。


「なんだか今日は、随分と気合が入ってるわね」

「はぁ? いつも、こんな感じだが」

「喧嘩は止めて、先に進もう」

「そうだぞ!」

「うん。わかったわ」


 言い争いを始めようとする2人を止める。魔力を集中させて周囲の気配を読むが、近くにモンスターはいないようだ。先に進もうと提案すると、2人は同意した。




 ダンジョン内部には、魔力の効果で光っているライトのようなモノが各所にある。まるで、誰かが考えて設置したかのような配置。それのおかげで内部が照らされて、明るく見える。ダンジョンの中で、よく見る景色。


 しかし、明るさが少し弱いために薄暗くなっている箇所もあった。油断は禁物だ。その暗闇から、モンスターが飛び出してくる危険も想定しておく必要がある。


 もっと奥の方を見通したいと思った場合には、松明などの照明道具をダンジョンに持ち込めば良いのだが、毎回明かりを使うとなると費用が馬鹿にならないし、余計な手荷物にもなってしまう。


 魔法使いなら、明かりを発生させる魔法を使えば照明道具は要らなくなる。だが、魔法を使うということは常に魔力を消費し続けるということ。魔法を使い続けている時に、モンスターの奇襲を受けると別の魔法を使って対応することが出来ないというデメリットが大きい。咄嗟の戦闘に対応するのが難しくなる。魔力も可能な限り温存しておきたい。


 緊急時以外には魔法の使用を控えるのが、一般的なダンジョン内での立ち回りだ。最終的な解決方法として、少し薄暗い場所でも必死に目を凝らしてダンジョンを進むというのが冒険者の定番となっている。かなり原始的な方法だけど、そうやって他の冒険者もダンジョンを攻略しているらしい。


 まぁ、危険を感じたら魔法を使って周囲を明るくするか、空間魔法ですぐに松明を取り出せば良い。今はまだ照明を用意する必要は無いから、そのまま先に進む。


 いくつか大きな部屋を通り抜けて、長い通路を進んで行く。


「階段があった」

「ナイス、エリオット! そっちか」

「周囲にモンスターの気配は、無いわね」


 突き当りの部屋に階段があるのが見えた。階段までたどり着くと、周囲を警戒してモンスターが近くに居ないことを即座に確認する。すぐ階段を降りていく。ここまで何事もなく無事に、モンスターと遭遇することなく来てしまった。早くモンスターと戦って、ドロップ品を手に入れたい。それを換金して、お金にする。




 僕たちが階段を降りた先には、3方向に分かれた道があった。


 3方向とも広い道で、剣を振ったり魔法を放ったりするのに問題は無さそうな広さがある。どの道を進むべきなのか。


「いつもの勘で、どの道を進むのか決める」

「そんな方法で、大丈夫なのかなぁ……」

「間違ってたなら、来た道を戻ればいい」


 クロッコ姉妹は、いつも勘に頼って進むべき道を選んでいたらしい。運でルートを決めるなんて、かなり非効率な方法だと思う。ちょっと不安になった。


 僕はフレデリカさんの勘ではなく、魔法を駆使して進むべき道を探ることにした。


「魔力の消費は、大丈夫なのか? 戦闘をするつもりなら、なるべく温存したほうが良いかもしれないぞ? 自衛のために、多少は魔力を残しておく必要があるだろ?」

「コレぐらいの量の魔力なら、いくら使っても大丈夫なぐらい鍛えているんですよ。ソレに、本当に無理そうなら相談して頼らせてもらいます」

「分かった。じゃあ、ルートを決めるのは、エリオットに任せる」

「はい。任せて下さい」


 フレデリカさんは魔法使いとパーティを組んだ経験から、なるべく魔力を節約したほうが良いだろうと僕に忠告してくれた。けれども、実際には探索の魔法では魔力の消費は少ないので、使い続けても大丈夫だと僕は判断する。


 魔法を使って、今いる階層について調べる。頭の中に地図を作った。それほど広い階層ではないようで、魔法を駆使して見つけた最短ルートを僕たちは進む。


 しかし、モンスターと出会わない。ダンジョン内も、モンスターが増加していると聞いたはずなんだけどなぁ。

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